アサリ

Scientific Name / Ruditapes philippinarum(Adams and Reeve,1850)

アサリの形態写真

殻幅4cm前後になる。貝殻は楕円形布目状の筋がある。模様のあるなしがあり、模様は多様。写真は千葉県木更津産でブルーが混ざり模様が多彩。[東京湾のものは青い固体が混ざる]
アサリの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
殻幅4cm前後になる。貝殻は楕円形布目状の筋がある。模様のあるなしがあり、模様は多様。写真は千葉県木更津産でブルーが混ざり模様が多彩。[東京湾のものは青い固体が混ざる]殻幅4cm前後になる。貝殻は楕円形布目状の筋がある。模様のあるなしがあり、模様は多様。[北海道産で模様がない]殻幅4cm前後になる。貝殻は楕円形布目状の筋がある。模様のあるなしがあり、模様は多様。[熊本産として買ったものだが、たぶん中国産]殻幅4cm前後になる。貝殻は楕円形布目状の筋がある。模様のあるなしがあり、模様は多様。[浜名湖産]
    • 魚貝の物知り度


      知らなきゃ恥
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★★
      非常に重要
    • 味の評価度

      ★★★★★
      究極の美味

    分類

    軟体動物門二枚貝綱マルスダレガイ目マルスダレガイ科アサリ属

    外国名

    学名

    Ruditapes philippinarum(Adams and Reeve,1850)

    漢字・学名由来

    漢字 浅利、浅蜊、蛤仔。
    由来・語源 『目八譜』(武蔵石寿著、服部雪斎ほか画 弘化2年[1845])から。
    ■ 「漁る」から「あさり」に転訛したものと思われる。その昔、海辺に行くと手軽に漁り取ることができたため。
    ■ 浅い場所にいるので。浅貝の意味。
    ■ 浅いと、「さり」は砂利で砂のこと。
    目八譜
    1843(天保14)、武蔵石寿(武蔵孫左衛門)が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。
    武蔵石寿
    武蔵石寿(むさし・せきじゅ 玩珂停、明和3-万延元年 1766-1861)。石寿は号、本名は武蔵孫左衛門。450石取りの旗本。赭鞭会。本草学、貝類。西洋の新しい分類学も取り入れようとしていた。『目八譜』(掲載1064種)、『甲介群分品彙』(掲載605種)、『介殻稀品撰』など。現在使われている標準和名の多くがここから来ている。

    地方名・市場名

    イソモ
    場所広島県江田島市大柿町 参考『大柿町の海辺の生き物 町制45周年記念誌』(監修/久家光雄 編集/大柿町海辺の生き物調査団) 
    コガイ
    場所広島県江田島市大柿町・呉・柳井 参考『大柿町の海辺の生き物 町制45周年記念誌』(監修/久家光雄 編集/大柿町海辺の生き物調査団)、文献 

    生息域

    海水生。
    北海道から九州。
    朝鮮半島、中国大陸沿岸インドシナ半島。
    最近ではマガキの種苗に混ざってハワイ、ヨーロッパ、北アメリカにもいる。

    生態

    湾内の干潟、砂地などに棲息。
    砂に潜り、水管を伸ばして海中の植物プランクトンや浮遊有機質を漉しとって食べている。
    性転換する。
    関東以南での産卵は春と秋の2回。東北では1回〜2回。北海道では夏に1回。
    産卵した卵は孵化してベリジャー幼生というプランクトン期を経て稚貝(小さな個体)に変態し、砂にもぐり込む。

    基本情報

    小型種で、内湾に多産したもので、家庭料理になくてはならないものだった。
    今や国産は少なく多くが輸入されたもの。
    古くから食用貝として重要で、日常的な存在だが、国内産は非常に厳しい状況にある。
    流通の場でもアサリのない日はないが、畜養されたもの輸入ものがほとんどだ。

    水産基本情報

    市場での評価 国産よりも中国産などの方が市場ではよく見かける。国産はカイヤドリウミグモの発生などにより不安定。値段は高くもなく安くもなくで安定。
    漁法 じょれん曳、腰巻き曳き
    主な産地 愛知県、熊本県、福岡県、三重県、静岡県

    選び方

    生きのいいものは海水中で盛んに水管をのばす。貝殻の扁平なもの。アサリは順調にいい環境で育つと比較的平たく大きくなる。悪条件だとダルマ型、ようするに丸みがあり、膨らみが強くなると言われています。

    味わい

    旬は春から夏
    年間を通してあまり味は変わらないが寒い時期は痩せている。
    貝殻は薄く軟体が大きい。クセがなく、苦みや渋みがほとんどない。熱を通しても硬くならない。非常に旨みが強い。


    貝殻の色素 貝殻の文様は熱を通すと、黒と青が茶に変色してしまう。

    栄養

    タウリンが多く、血中コレステロールの定価、貧血予防、肝機能低下の予防に効果がある。貧血を予防する鉄分、銅、ビタミン12が多く。骨粗鬆症を防ぐカルシウム、味覚障害を予防する亜鉛なども豊富。

    危険性など

    麻痺性の貝毒を持つことがある。季節や場所によって貝毒、サキシトキシンなどが出現するので、採取するときには情報が重要となる。死亡例もあるので要注意だ。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アサリの料理法・調理法・食べ方/汁(みそ汁、潮汁、鍋)、揚げる(フライ、天ぷら)、蒸し煮(ワイン蒸し、酒蒸し)、煮る(煮つけ、佃煮)、ソテー(野菜炒め、オムレツ)、パスタ(ボンゴレ)、焼く(焼きアサリ)、ご飯(炊き込みご飯、ぶっかけ、混ぜご飯、チャーハン)

    アサリのみそ汁 定番のみそ汁。貝はザルなどに入れて流水をかけながらざくざくと洗う。これを水から煮出してみそをとく。熱湯に入れてもいいが身はおいしいがいいだしは出ない。これを飯にかけて客に提供する店が深川などにあったというが、これも美味。写真では八丁みそを使ったが、みそはお好みで。

    アサリの湯豆腐 大振りのものがいい。ザルなどにいれて流水でざくざくと洗う。水分をよく切り、昆布だしが煮立った中で豆腐を煮ながら食べる。その湯豆腐とともに煮ながら食べる。アサリのうま味が煮汁に出て、非常にうま味豊かになる。食べ飽きぬ。
    アサリのチゲ アサリはザルなどに入れて流水でザクザク洗う。水分をよく切っておく。煮干しだし、もしくはカツオ節出しにコチュジャンなどで味つけする。この出しの中でキムチ、野菜、豆腐などと一緒にアサリを煮ながら食べる。
    アサリのワイン蒸 基本的な料理のひとつ。アサリはザルなどにいれてざくざくとていねいに洗う。鍋にアサリを入れて火をつけてワインを加えて貝殻が開くまで加熱する。オリーブオイル、もしくはバターを加えるとより美味に。

    アサリと白菜の煮物 春に出る奥手の小型の白菜と、ふっくらと身がふくらんだ旬のアサリのむき身を炊き合わせたもの。味つけはあくまでも淡く、アサリ自体のうま味、塩気を生かして料る。
    1 アサリのむき身は塩水でさっと洗う。殻つきの場合は酒蒸しにして汁をこして別に取り置き、殻から身を外す。
    2 白菜は食べよい大きさに刻む。
    3 昆布だしをわかし、みりん、酒、塩、しょうゆで控えめに味つけする。
    3 白菜とアサリの蒸したときの汁を加え、白菜に少し火が通ったらアサリを加えて、一煮立ち。
    4 汁の味加減を見て、しょうゆ、塩で調え、また一煮立ち。火を止める。
    5 小一時間鍋止めして皿などに盛る。天盛りは季節のもの。ここでは山椒の木の芽を使った。


    アサリの佃煮 剥き身を使うか、自分で剥く。ざっと塩水で洗い、残っている貝殻などを流す。水分をよくきり、酒・砂糖・醤油でさっと煮詰まる直前まで煮る。好みでしょうが、山椒の実などを加える。1週間くらい食べ繋げる。
    アサリとヒジキの炒め煮 ヒジキは戻しておく。鍋に油を入れてヒジキを炒める。アサリ剥き身を加えて酒・砂糖・醤油で味つけする。油揚げの代わりにアサリだけど、魚介類の生臭みがなく、うま味豊かなおかずになる。
    アサリの野菜炒め 野菜はなんでもいいので集めて置く。ここで使ったのはニラ、もやし、にんじん、キャベツを適当に切っておいた。鍋に多めの太白ごま油を入れてにんにくとしょうがで香りづけ、野菜とアサリの剥き身を同時に炒めて塩コショウなど最低限の調味料で味つけしたもの。
    アサリのオムレツ アサリは剥き身を使う。卵は牛乳を加えて溶き、塩コショウ。フライパンを熱し、多めの油を入れて卵とアサリを同時に入れて火を通していく。柔らかいままなんとかまとまったら出来上がり。スプーンで食べる。
    アサリのボンゴレ(アサリのパスタ) スパゲッティはゆで始める。鍋にオリーブオイルを入れてにんにくで香りづけする。ここにアサリを加えて火を通す。塩コショウは必須ではない。鷹の爪でも青い唐辛子でもいい。茹で上がったスパゲティを加えて和える。
    焼きアサリ 大振りの北海道産アサリを単純に炭火で焼きながら食べる。アサリは水洗いして片貝にする。これを炭火で焼きながら食べる。ここでは醤油・酒で味つけしたが、そのまま食べても十分においしい。
    アサリの炊き込みご飯(深川飯) 深川飯というのがあって、汁にしてぶっかける、卵とじにする、炊き込みご飯だなどいろいろ解釈がある。画像は炊き込みご飯。米の水加減をし、アサリの剥き身、油揚げ・ゴボウのささがき・にんじん(必須ではない)を入れて塩・少量の醤油・酒を加えて炊き上げる。
    アサリのチャーハン 剥き身を使った。冷凍ものは半解凍でいい。鍋に油を入れて溶き卵を入れてご飯とアサリを入れて炒める。ネギを加えて塩コショウする。アサリのおいしさがご飯に移り、非常に味わい深い。

    関連コラム(料理法・レシピ)

    記事のサムネイル写真桃屋の「きざみにんにく」でアサリ、ハマグリ
    教わったらすぐ試してみるタイプなので、FBで藤林久仁子さんに教わった、桃屋の「きざみにんにく」をさっそく買って来た。 桃屋はやたら懐かしい三木のり平の江戸紫が思・・・ 続きを開く

    好んで食べる地域・名物料理

    アサリのかき揚げ 『いわしの頭』(中村武志 新潮社 1955)
    あさりご飯 アサリをしょうゆ、砂糖の味つけで炊き込みご飯にしたもの。[千葉県君津市]

    深川というのは東京都江東区の深川八幡宮あたり。隅田川の東、深川には遊廓や有名な神社お寺があり、「深川八景」といわれ名所であった。その深川を冠した名物が深川飯である。
    本来は江戸時代に漁師や庶民が安価な食べ物として親しまれていた貝の剥き身をつかった、みそ仕立てのぶっかけ飯があって、それを「深川飯」と呼んだのは後のこと。明治後期には安食堂のメニューとしても定着していたようだ。みそで煮込んだもの、みそ汁をご飯にかけたものと、炊き込みご飯がある。
    『たべもの語源辞典』(清水桂一 東京堂出版)/『聞き書き 東京の食事』(農文協)他を参考としました
    あさりのフライ 千葉県木更津など産地でよく食べられている。アサリを剥き身にして串にさす、小麦粉をまぶして衣(小麦粉・卵・水。溶き卵でもいい)をからめ、パン粉をつける。パン粉をつけるとき平らになるように押さえながらつけるといい。これを高温で短時間揚げる。

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真【さかな飯】江戸の深川飯
    深川というのは東京都江東区の深川八幡宮あたり。隅田川の東、深川には遊廓や有名な神社お寺があり、「深川八景」といわれる名所であった。その深川を冠した名物が「深川・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    冷凍あさり ブランチング処理したもの。ブランチング処理は短時間90度以上加熱し、急速に冷凍したもの。最大氷結晶生成温度帯(0度〜−5度)を短時間で通過して−20度前後にして凍結させたもの
    アサリの目刺し(素干し) 千葉県木更津市などで作られているもの。アサリの水管に串を差して干したもので「素干し」ともいう。[千葉県内房]
    串あさり 愛知県三河地方で作られている干もの「串あさり」。これを軽くあぶったり、揚げたりして食べる。
    浅蜊の佃煮(アサリの佃煮) 東京は江戸時代から作られていた「佃煮」。今でも東京の佃煮屋さんの多くが作っている。写真は私好みのしょうゆ辛いもの。[小松屋 東京都台東区柳橋]
    焼きあさり 千葉県船橋名物「焼きあさり」。船橋ではハマグリなども含めて二枚貝のむき身を焼く。[杉岩商店 千葉県船橋市宮本]
    ボイルアサリ(身アサリ) ゆでて取り出した身のこと。滋賀県、京都府ではこう呼ぶ。
    浅蜊の缶詰 アサリのむき身を缶詰にして加熱したもの。ほとんどが中国産。
    アサリの塩辛(바지락양념젓갈류)

    関連コラム(加工品)

    記事のサムネイル写真東京都台東区北上野『湯蓋』の佃煮
    多くの文学作品に出てくるのが東京都内、千葉県西部の佃煮である。山本周五郎の『青べか物語』などをみても、庶民にとっての基本的な菜(副菜)だったことがわかる。 東京・・・ 続きを開く

    釣り情報

    カワハギ釣りのエサ。

    歴史・ことわざ・雑学など

    貝殻の模様 アサリの外套膜に貝殻を作る細胞と、色素を吐き出す細胞があります。この色素を吐き出す細胞がいろんな模様を作り出すのですが、このシステムは不明だそうです。また比較的泥質の東京湾湾奥、船橋のアサリなどはとったばかりのときには真っ黒です。
    ■ ひな祭りの膳/「あさりご飯につぼのみそ汁と、おかいこ切り干し、里芋、にんじん、ちくわ、油揚げの入った煮しめ、それにうるめいわしの開きとあさり(干もの)の串ざしなどを並べる」[恵那平野]『聞き書 岐阜の食事』
    ■ 「おひなさまには、ちらしずし、わけぎとつぼ(たにし)の味噌あえ、白酒、菱餅……あさりの身の串刺し(アサリを串に刺し干したもの)、はまぐりの吸いもの」[名古屋市紙漉町(西区)『聞き書 愛知の食事』]
    ■ 「昼になると、私は、国鉄本庁直営の食堂から、お菜を買ってくる。直営だけあって至極安い。たとえば、アジの天ぷら九円、アサリのかきあげ十円、ロールキャベツ十四円、シュウマイ十五円、カキフライ十七円、いちばん高いものでハンバーグステーキの二十八円なのだ」『いわしの頭』(中村武志 新潮社 1955)


    むき身殻汁(むきみからじる) 『東海道中膝栗毛』に弥次さんが家に帰り着いて女房に「時に飯にしよう、なんぞ菜はないか」というのに「さつきのむき身殻汁さ」と答える。
    貝のむき身に豆腐の殻(おから)で汁にしたもの。おからの汁というとみそ仕立てであると思われる。
    作り方はだしを使わず、湯にアサリのむき身をたっぷり入れ、おからを入れて煮る。おからが煮えたらみそを溶き入れて、ねぎなどを加えて出来上がりだ。
    濃厚なアサリのうま味に、おからのもっさりとしたふくらみのある舌触りがあって、なかなか滋味豊かな汁となる。
    [『東海道中膝栗毛』(十返舎一九 麻生磯次校注 岩波文庫 享和二年〜文化十四年[1802〜1814])]

    参考文献・協力

    『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『水産無脊椎動物Ⅱ 有用・有害種各論』(奥谷喬 恒星社厚生閣)
  • 主食材として「アサリ」を使用したレシピ一覧

関連コンテンツ