寿司図鑑 千 目次へ!
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箱海老/ハコエビ 2008年2月27日 547
「これプラモデルじゃないの?」。たかさん、巨大なハコエビを持っての感想がこれ。確かにこの奇妙な、どこか昆虫を思わせる作りから、そんな思いが湧いてくるのも当然かも。このエビを150年ほど前に日本に来て初めて見たシーボルトもそう感じただろう。彼は日本からたくさんの甲殻類(エビやカニの仲間)を持って帰っているのだけど、ハコエビは専門家でもないシーボルト自身が世界に新種として記載している。たかさんが身を取り出すと、なかなか美しい薄皮があって、これを生かすために厚切りにして5かんほどの握りに仕立てる。ハコエビはなんども食べているのだけど、やはりエビとしては味わいに劣る。旨味が薄いように思えるのだ。ところが、たかさんは「あっさりしてるんじゃない。イセエビと比べると落ちるけど、うまいと思うな。甘味もあるしね」。そしてつけ加えるに「あなたは、油っこいのとか、塩味がきついのが好きだろ、だからこのエビのよさがわからいんだよ」。そんなことはない。
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萩の角寿司 別巻 2008年3月20日
島根県浜田と山口県萩で出合ったすしが似通っていて、印象的だった。ともに呼び名は「角ずし」というもので甘い。「角ずし」とは、すしの範疇では押し寿司にあたるもの。山陰山陽では岩国などに同じようなものが存在する。画像は萩のうどん屋「どんどん」で食べたもの。上にだけ具が張り付いていて、干瓢(かんぴょう)、シイタケと緑色のフワフワしたものが見える。海藻のようでもあるし、着色したでんぶにも思える。とにかく寿司飯とともに総て精進ものということになる。これを『聞き書き 山口の食事』(農文協)でみるとアナゴなども乗る豪華なもので八幡様の祭礼に作るとある。
『どんどん』には『道の駅萩しーまーと』の篠原さんに連れて行っていただいた感謝いたします。
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小紋羽太/コモンハタ 2008年3月20日 548
最近、ハタに関してたかさんの反応が鈍い。いろんなハタを握ってきたのだけど、「うまいのはうまいよ、さすがに高いだけのことはある。だけどまたかよ、って言いたくなるね。どれも特徴がない。見た目も味もね」。こう言われると身も蓋もない。例えば江戸前握りの代表的ネタである、こはだ(コノシロ)は寿司にするからうまいのであって、他には使いようがない。だから握りにして出色のネタとなる。コモンハタを下ろしているそばから「半身は鍋物にするから持って帰るね」というボクの一言も気にくわないらしい。当然のごとく非常にうまい一かんを食べ、二かん目もうまいし、キリがないなー、うまいうまいで。ハタは上品であるのに旨味がちゃんと感じられる。「仕方ない、たかさん、今晩はコモンハタの鍋でも食べてよ」。築地場外の長崎県漁連で買い求めた飛びきりのコモンハタだから、さぞやうまいだろうよ。
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婆の手/エゾキンチャクガイ 2008年3月21日 549
節くれ立った皺だらけの手を思わせる貝殻の文様、だから「婆の手」なのか? もしくは炊事に追われて荒れた手をしているので「母の手」なのか? 北海道でのエゾキンチャクガイの呼び名は二通りに分かれるらしい。そんな話をしながら、たかさんが握りを出してくれるのを待つ。北海道根室産だというのを持ち込んで、まだ数分しか経っていない。「めずらしい貝だね。初めて見たよ」と二かん。「そうかな、ときどき入荷してくるんだけどね」。「貝柱はホタテそっくりだね。甘味はそれほどでもないけど、旨味を感じるよね。ホタテばっかりじゃつまらないから、これもいいね」。たかさんの言う如く、甘味はホタテには劣るものの旨味も食感もあり、素直にうまい貝である。「お姉ちゃんの手みたい」だね。
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肩星鰯/カタボシイワシ 2008年3月22日 550
地球は間違いなく熱くなっている。魚貝類を見ていて、それに気がつかない人はおかしいほどに、とれる魚が代わってきている。そのもっとも顕著に変化を見て取れるのが鹿児島県ではないだろうか? ここは熱帯、亜熱帯、そして温帯の魚が入り交じってとれるところだが、近年熱帯・亜熱帯の魚がまとまってあがるようになってきているのだ。カタボシイワシは熱帯固有種というほどではないが、沖縄などに多く、九州、四国などでは少ないもの。それが鹿児島県南さつま市笠沙ではときにまとまって揚がるという。これを、現地のわかしおさんに送っていただき、たかさんに握りに仕立ててもらう。「やっぱり血合いが気になるね。味が重く感じる。見た目ほどは生臭くないけど、爽やかじゃないね」と、たかさん。「ボクは好きですけどね」と反論するがやはり「もう一かん食べたい」とは思わない。
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