第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
八十四巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
どこまで続けられるか未知数ですが、毎日一かんずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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刀剣/ハガツオ 2006年10月6日 416
 今回はハガツオを2かん続ける。種としては同じものだが、ネタとすると2種となる。さて個人的にはサバ科のカツオやソウダガツオのたぐいが大好きなのだ。例えばスマ、そしてハガツオ。海辺の寿司屋などに行ってハガツオを見つけると踊り出したくなる。そう言えば昔、本当に踊り出した、あまりにハガツオの刺身がうまくて。そして今回のハガツオは沼津魚市場にあがったもの。鮮度がいいので生で握ったもの。鮮度が落ちやすいので、関東などでは表面に焼き目を入れて握りにする。場所は沼津の名店「双葉寿司」、奥の本日のおすすめにハガツオを見つけたときにはうれしかった。そしてイのいちばんにお願いする。その身はとろっと脂に甘味がある。そのくせその脂は口に入れた瞬間で消えて、そこにサバ科の魚特有の酸味のある旨味が浮かんでくる。ほどよい握り加減のすし飯がほろりと崩れて絶品である。感激していると沼津魚の達人である菊地利雄さんが「沼津じゃハガツオは刀剣って言うのです」と教えてくれる。人間ポンプが険を飲んだような顔つきをしてみる。誰もわかってくれなかった。
●市場魚貝類図鑑 ハガツオのページへ!
●静岡県沼津市 沼津魚市場そば「双葉寿司」
歯鰹/ハガツオ 2006年10月6日 417
 関東にあってハガツオというのは、まことに人気のない魚である。八王子の老舗魚屋のご主人などは「甘辛く煮付けるだろ。これがご飯に合うんだよ」と教えてくれるが「刺身もうまいんですよ」というと「バカ言うんじゃないとうさん(八王子でのハガツオの呼び名)は煮付け魚って決まっているの」と取り合ってくれない。そして昨日沼津で頂いてきたハガツオが目の前にある。たかさんと「生じゃだめだろう」と思案中なのだ。「昔はカツオはよく皮目を焼いて握ったの。土佐のタタキってわけじゃなくてね」。『たべもの東海道」(鈴木晋一)にも江戸時代には皮目をあぶって造るのを普通に「刺身」と呼んでいた、とある。そしてガスであぶりながら「おれはあんまりこれ好きじゃないんだよな。焼き魚みたいな臭いがある」。そして食べても「やっぱり生がいいな。鮮度のいいやつを普通に握ったヤツ」。これとは反対にボクは焼き目をいれたものが大好きである。秋の脂ののったハガツオ。身がとろんとしているのだけれど皮目が香ばしい。皮自体にも旨味を感じるのだ。そしてすし飯がくるのだけど絶妙だ!。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
漬物寿司 2006年10月6日 別巻
 寿司職人渡辺隆之さんの握る寿司はいたって庶民的なものである。これは江戸前握りの世界を懐痛めることなく楽しんでもらおうとしているためなのである。そして、ときに握りネタの取り合わせというのか白身、赤身、イカタコ、貝などのバランスについて話し込むことがある。関東では白身と言えばヒラメは当たり前だがカンパチやヒラマサなども含めることがある。「これはおかしいよな」と言うのが今朝の会話の内容なのだ。「そんでね。こんなものもありかな、って考えてみたんだけど」と出てきたのが「漬物寿司」なのだ。市場の漬物屋に相談してすし飯との相性を試しながら最後に残ったのがミニ大根(ラデッシュの仲間)とナスの辛子漬け。「これがあると握りの味わいに変化が生まれて楽しいだろ」。と言うよりはこの「漬物寿司」がうまいのである。ひょっとしてこれだけで一人前もあり得る。特に絶品なのがナスの辛子漬け。京都などで漬物を握っているのを見て敬遠していたのが、まったくの「食わず嫌い」であったと改めて思う。また朝飯の「豪海投げ込み丼」に漬物寿司を加えるのもいいかも。外に出ると土砂降りの雨で湿度100パーセント。でも口中は漬物寿司で締めて爽やかなのだ。
●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
底金頭/ソコカナガシラ 2006年10月7日 418
 カナガシラの仲間は種類が多く、なかなか同定が大変である。それで水揚げされても十把一絡げで取り引きされている。そのためにやや大型になるカナガシラ以外はまるで雑魚なのだ。その細かく棘ばっているのを『市場寿司 たか』へ持ち込む。「これはどこでとれたんだろうね」、細かいものを丁寧にネタにしていくのをたかさんは決していとわない。むしろ好きらしいのだ。体長15センチくらい、ウロコでザラザラした皮を引くと血合いは薄く、また身の色合いも淡く紅色である。「片身1かん。オレは寿司ネタとしてはいちばんいいサイズだと思うな」。4〜5本あったのをあっという間にネタに仕立てて、ささーっと2かん。これがいい味なんである。白身で旨味は微かだな、と思っていたら後からジワリとくる。これは旨味というか脂の持つ甘味かも知れない。そして身の適度な「シコッと感」。「小魚のよさってのは、これだな」。と結局並んだ握りが10かん。「たかさん、お客には出してあげないの」、「あ、そうだ。忘れてた」。ちなみに寿司図鑑のネタで余ったものは格安でお客に提供しておりまするで「おじゃるよ」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
磯つぶ/エゾバイ 2006年10月8日 419
 フレンチのシェフが慌てている。いつもあるはずの「磯つぶ」が、ない、のである。普通、このエゾバイ科の小型の巻き貝は煮付け・酒蒸しになることが99.9パーセント決まっている。どうやってフランス料理に使うんだろうと疑問に思っていたので別の店で磯つぶを確保してあげながら聞いてみた。「うちの店の魚貝類のソースの中心にあるのが磯つぶなんです。これがないとソースができない」。確かにエゾバイの旨味の濃度は高く濃厚なワタの旨味甘味、そして身にも旨味があって比類がない。これをジュにして取り出すわけだ。それで思いついて八王子魚市場内「源七」のあんちゃん(貝を煮させたら名人)のを分けてもらって、たかさんに握ってもらう。「このつぶうまいね。軟らかく煮えてるし、甘味がある。でも寿司には硬すぎるな」。たかさんの言葉を返すようではあるが、「でも端的にうまいじゃない。煮貝(アワビ)だってすし飯には硬めだけど、それはそれで一品として通っているでしょ」。でもやっぱり酒の肴にした方がいいのかな。あまった磯つぶの身を取り出しながら思い悩むのだ。
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●エゾバイを煮あげたのは八王子魚市場内「源七」あんちゃん  八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
しぶだい/クロホシフエダイ 2006年10月9日 420
 海の中は明らかに温暖化が進んでいる。これは別に海の中を調査しなくても市場に入荷してくる魚を見ているだけではっきり見て取れるのだ。そのひとつの現れだと思うのがフエダイ科の魚にである。フエダイ科の魚はどれも味が良く熱帯にあっては代表的な食用魚でもある。それが毎日のように鹿児島、大分、和歌山などから入荷してくる。そしてなかでも美味であり、しかも大きくなるので確実に将来高級魚の仲間入りをしそうなのがクロホシフエダイなのである。でもまだ安い、それで2キロ弱を見つけて握りに仕立てる。初めて見る魚でも美しい魚体なのでたかさんも速やかにネタの切り付けを終えて、4〜5かん握って食べてみる。「うまいね。血合いの色合いもいいし、キロいくらだった」。これは新たな寿司ネタとして「使える」という評価である。味わいはクセがなく、その割に旨味がある。分厚く切っても硬くないのも寿司ネタとしての条件を満たしている。寿司屋にとって新ネタとしてクロホシフエダイは「買い」である。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」



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