第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
五十八巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
どこまで続けられるか未知数ですが、毎日一かんずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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えがに真子/トゲノコギリガザミ 2006年1月11日 286
 土佐の高知から冬の至味が届いた。「えがに」のメスである。「えがに」は高知の名物、正体はトゲノコギリガザミ、浜名湖から南に棲息するのだが、「土佐のえがにが最高じゃきんに」とカニ漁師である永野廣さんから聞かされて毎年実際に食べるに「こりゃ、土佐のえがにはたまらんけん」と答えるのだ。そのうまいカニのまたまたいちばんうまいのが内子である。まだ未熟でふんどしの奥に隠された半熟の黄味のような内子。これがうまいというか、微かに感じられる渋みがなぜなんだろう、どんどん前面に甘味旨味を引き上げてくれるのだ。これを食べた、たかさんの顔が引きつっている。これは明らかにうまいがために我を忘れているのだ。そんなたかさんをひっぱたいて握りにしたのが、またまた顔が引きつるほどにうまい。「感想を言ってよ」とたかさんに言うと、驚いたことに頬を伝うものがキラリ。ふたりで泣いたのであった。
●高知市 『土佐の廣丸』から
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
鷹羽鯛/タカノハダイ 2006年1月12日 287
 皮を引くと下から脂の皮膜に覆われた真っ白な身が出てきた。寿司職人の渡辺隆之さんがちょっと臭いを嗅ぐ。「大丈夫だな」という顔つきをして切りつける。「冬だから絶対にうまいに決まっている」と言っても過去に臭くてだめだっただけにタカノハダイを警戒しているのだ。「今年の夏のは臭かったね」と顔をしかめて、そして出てきたのがきれいな2かん。そして味わいも美しい。白身で旨味に欠けるなと思っていたら脂から甘味が滲み出してきた。そしてすし飯が来て、飲み込むときに微かに旨味が感じられる。磯魚で夏にはときに耐えられないほど臭いのがある。それが冬には洗われるように臭みが消えるのだ。「トビかと思ったら鷹のはだい」てか。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
飯蛸/イイダコ 2006年1月13日 288
 寒くなってくると飯をいっぱい頭(?)にため込んでうまくなるのがイイダコである。走りの1月中旬くらいまではオスメス混じりで大ざっぱな形で市場に来るのだが、これから先はオスメス別になって入荷してくる。当然、高いのはメス。オスは「捨て値」でしかない。「イイダコは握ったことがないよ」という、たかさんと考えて煮つけることにする。煮つけたイイダコは絶品なのである。「これならイケルだろう」と思った握りが今ひとつなのだ。煮つけたイイダコは軟らかく旨味もある。そして何より「飯」がうまい。それなのにすし飯と合わないのだ。イイダコの弾力がすし飯と混ざり合わない、イイダコだけの味わいで終始してまとまりがないのだ。もっとイイダコを軟らかく煮上げるべきかも知れない。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
ヨシノゴチ 2006年1月14日 289
 探していた魚に合えるとうれしいものだ。喜び勇んで『市場寿司 たか』に駆け込む。感激した、息咳き込んで暖かい店内で見せても、たかさんはな〜んだ、「コチじゃねえか」という顔つき。それはそうだろう誰が見たってコチなんだから。じっくり見るてえと、違うんだな。「ほらね。模様も違うし、顔もちょっと違うでしょ」なんて説明しながらどんどんヨシノゴチは三枚になり皮を引かれて、そしてネタの切り付け。目の前のなんかんかの寿司。味見に、たかさんが1つ放り込んで「やっぱりコチだね」だって。活けでも、活けじめでもなく、下氷の荷できたもの。それでも鮮度はよくて刺身の味わいはよし。すし飯との馴染みもよくて素直にうまい1かんなのだ。そして「やっぱりコチはうまい」と言うのがたかさん。「ヨシノゴチだって」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
槍烏賊/ヤリイカ 2006年1月15日 290
 秋口には小いかだったヤリイカが寒くなるにつれて大きくなる。その分旨味も増してくるのが「冬いか」と言われる所以だ。そんな旬のヤリイカをいつ握りにするのか、「いいものが見つかったら、すぐ握ってみてください」と、寿司職人の渡辺隆之さんに言って置いた。そんな年明けに見事なヤリイカがあった。「産地はわからないのかな」と問い合わせてみてもらっても「どうしてもわからないんです。伝票をもう一度見直します」と市場職員が言うが、とにかく握りに仕立ててもらう。たかさん、握ったものを口に入れて「うん、これは言うことない」なんて月並みなことを言ってくれる。そして続いて口に放り込んで。「甘いのかな。甘いよね。そしてコリっとしている。口の中でイカがいい感じで咀嚼されている」。そして浮かび上がってくるのがすし飯である。これが甘味と混ざり合っている。米の甘味、糖質がヤリイカの甘味と相乗硬化を生み出しているのだ。「満足するな」、ポツリとたかさんが呟く。
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