第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
三十九巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
毎日、1種類ずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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笹ずし(長野県小谷村) 2005年10月8日 別巻
 山間部の岐阜や長野で作られるのが、笹や木の葉を器とする寿司。有馬皇子は椎の葉に盛ると和歌に詠むが、現在使われるのはクマザサ、カシワ、ホウノキの葉であろう。甘めのすし飯を作り、軽く握って葉の上にのせるところから寿司の形態からすると握りずしに分類されると『すしの事典』(日比野光敏 東京堂)にある。ただ思うにこれは植物を器にするという独立した寿司の形態であると思う。なぜなら作られる地域が山間部に位置することや、使われる植物が他にも食物を加工・保存するときにしばしば使われるものだから、間違いなく自然発生的に生まれた寿司の形態だろう。ひょっとすると仏事や、飛躍した考えながら子供がままごとをするのを見た大人がヒントを得て作り始めたのかもしれない。これを「握る」ということでくくるのは不思議だ。のせる具はシイタケ、インゲン、紅ショウガや蕗。精進に限られるのもゆかしいな。
●長野県小谷村 「道の駅小谷」
車鯛/クルマダイ 2005年10月8日 191
 クルマダイの「車」は火の車から来たものだろう。どこか仏教的な形をしている。小魚であって、しかもあまりとれない魚である。駿河湾の沼津魚市場には毎月水揚げを見に行くが、そのたびに必ずクルマダイが上がっている。それがなぜかいつも1匹だけなのだ。それをお願いしてもらってくるのが楽しみなのである。なぜなら、この魚うまいのだ。キントキダイ科の分厚い皮はウロコをとらないで引く、その美しい白身を持ち、『市場寿司 たか』まで急ぐ。小さな魚であるからいきなり4かん握ってもらってふたりで食べる。「いい味してるね。でもこれなに?」と驚くたかさんに、どうせ言ったってわからないのだからと知らんぷりして、味の感想を交換する。まず白身だけれど、決して旨味が薄くない。むしろ甘みと旨味が調和して濃度は濃いくらいに感じる。そして身は柔らかくすし飯とともに喉に消えていくのが、いい感じなのだ。クルマダイ恐るべし。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
えがに/トゲノコギリガザミ 2005年10月9日 192
 浜名湖で「どうまんがに」、高知で「えがに」と呼ばれる大型のカニがトゲノコギリガザミ。お馴染みのガザミやタイワンガザミよりも南方系で関東で見る限り珍しいものになる。このカニがまことに怖ろしい。ヒモでくくられているからなんとか手に取れるが、もしもその巨大なハサミを向けられたら逃げ出すしかないモンスターなのだ。そのハサミがうまい。これを冷凍して気を失わせる。そして塩を入れた熱湯で20分ほど茹でるのだ。これがうまいいのなんのって、ガザミよりも濃厚な味わい、そして甘みがふわりと広がる。むさぼり食いたいのを我慢して握りのために殻を剥く、そして出来上がり。握る前から渡辺隆之さん(『市場寿司 たか』)はうなっている。「握りにするよりそのままの方がいいだろ」というのだ。でも味がいいものをのっけてもうまい寿司はできるわけで、それがこれだと思う。だいたい値の張るカニだから寿司屋で食べるのは無理だろうけどね。
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高知市の土佐の廣丸から  八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
あこう/キジハタ 2005年10月10日 193
 大阪では「あこう」と言い夏にはなくてはならない魚である。これは日本海山陰や北陸でもそうだろう。小振りの目立たないハタの真価を知っているために、少々懐を寂しくさせても「こうていこか」なんて思わせるのだ。それが関東に来ると途端に面白みがなくなる。キジハタとはなんとつまらない和名。無粋極まりないし決して雉に似ているわけでもない。このキジハタであるがハタの中では小振りで大きくても40センチくらい。寿司屋のネタとして買いやすい大きさだ。今回、『市場寿司 たか』に持ち込んだのは活け。これを手早くおろして、薄くへいで食べてみる。硬い、硬すぎて味がない。「一日置かないかい」というたかさんに従って翌日握ってもらった。それでもまだ硬い。刺身で食べるとちょうどいい硬さ。寿司にはもっと置くべき。でもシコっとした歯ごたえからじわっと甘みが来て、微かだが旨味も広がる。その刺身のうまさに少々すし飯がすり抜けてしまっても、うまいではないか。刺身のうまさが勝ってしまってもうまい寿司ということで、たかさんともども納得。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
梅色/ウメイロ 2005年10月11日 194
 関東では意外にお馴染みの魚である。これは東京都に産地である伊豆七島や小笠原があるためで、ここからくる定期便にしばしば乗ってくる。値段は高値安定、けっして安くはない。外見は利休鼠に山吹の黄とやや派手。白身のきれいな身のせいかネタに関して保守的な料理人でもときどき持っていくと仲買から聞いた。これを半身、『市場寿司 たか』に持ち込んだ。「きれいな身だね。なんだろうね」と首をひねるたかさんに「ウメイロだよ」と話すと、「これ高いだろ」と話す間もなく2かんが出来上がる。そしてもう1かん握って「うまいな、これは。身がねっとりしている」とうなる。すぐに追いかけて口に放り込む、そのねっとりした身の感触。これは練り絹のようだ。そして程良い旨味と甘み。すし飯と馴染む柔らかさが絶品である。「梅色」という和の呼び名も寿司によい。
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ムラソイ 2005年10月12日 195
 色合いは真っ黒であったり、赤黄の不揃いの斑点が不気味に散らばったり、要するに目立たない、それでいてよく見ても食指が動かない魚である。同じ面相のカサゴはいいとしても、これがダメなのはうまい魚であるだけにもったいない。当然、値も安いということで試みに握ってもらう。渡辺隆之さん、これをまな板にのせて「こ〜りゃ、トゲだらけだね。身はあるのかな」なんて三枚おろし、皮目をあぶってへぐようにネタに。実は、これが失敗だった。皮が硬いのだ。ただ身の方は旨味があり、すし飯とも相性よし。大振りのものが手に入ればカサゴの代わりになりそうだ。次は皮なしでいくぞ!
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