第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
三十五巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
毎日、1種類ずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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赤えび/ツノナガチヒロエビ 2005年9月18日 171
 駿河湾沼津でエビといえば浅いところにいるクルマエビやヨシエビなどではなく、主に深海性のエビということになる。その深海エビの中でもとびっきり目立つのがツノナガチヒロエビである。まるで映画『エイリアン』にでも出てきそうな頭部、まっかな身体、殻を剥くと身自体も赤い。これが競り場に並ぶとそこだけ深紅に染まるのだ。駿河湾沿岸の沼津、戸田、土肥などでは味のよいのが知られており、寿司ネタとして使われている。これを沼津魚市場で仕入れて大急ぎで『市場寿司 たか』に持ち込んだ。そして間髪入れずに握ってもらったのが、この2かん。生なのに身は赤く、これがなかなか美しい。その味わいはやや甘みがきて、そこにエビ独特の旨味、それで身は甘えび(ホッコクアカエビ)よりもしっかりしている。いい味わいだ。感心していると、「味は合格だけど、そんなに高い評価じゃないよ」と寿司職人としてのたかさんが宣う。この評価ズバリだな。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
づけ/キハダマグロ 2005年9月19日 172
 関東よりも関西で需要の高いマグロである。それで大阪では「本しび(本マグロにあたる)」などと呼ばれている。それが関東に来ると見向きもされない。これは色合いが薄く、脂が少ない、それで味わいが淡白であるからだろう。でも、魚自体の味わいというか、じっくり食べてみるとなかなか捨てがたい味なのである。この柵を熱湯をかけて表面を白くさせ、冷水にとり、水気を拭き取ってタレに漬け込んだ。タレは味醂1・酒1・しょうゆ2の割でつくる。一夜寝かして翌朝、『市場寿司 たか』に持ち込んで握って、たかさんにも食べてもらう。これがうまいのだ。たかさんも1かん、そして2かんとついつい口に運ぶが、まさにそれほどにうまい。しょうゆと酒などの旨味は表面から5ミリほど中に入っている。真ん中は生。これが口の中でほどよい旨味を作り出している。そしてすし飯の酸味がしめる。これは見事な1かんとでも言うしかないだろう。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
イトヨリダイ 2005年9月20日 173
 イトヨリダイは高値安定型のゆうなれば定番的な高級魚である。主に会席料理の蒸しものや焼き物に使われる。その風味というか気品のある味わいは他に代え難い。ただ、これを生で食べるということはほとんどないだろう。どうもこれは固定観念でしかないのだと思ってはいるが、なかなか実際に「お造り」になったところに出くわさない。実際に食べて刺身はなかなかどうしてうまい。特に霜皮造りにして皮と皮の直下の旨味を楽しめる工夫を凝らすと素晴らしい逸品となる。これを握ってもらった。これが江戸前握りとしても堪えられない味わいだ。すし飯に皮目の個性が効いて、その甘みとともにいい味わいになる。見慣れた魚であるが寿司ネタとしては新しいもの。一度お試しのほどを。
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甘えび/ジンケンエビ 2005年9月21日 174
 駿河湾での底引きの主な漁獲物はエビである。その多彩なエビのなかのひとつが「甘えび」と呼ばれるジンケンエビなのだ。細身で小型のエビなのであまり値段の貼るエビではない。当地では熱を通すと甘いので「甘えび」と呼ばれているのだろう、ほとんどが茹でたり、かき揚げになる。このかき揚げがずば抜けて甘くそして美味である。これを江戸前握りの『市場寿司 たか』に持ち込んだ。当然、首をひねったのはエビが小さすぎるからだ。難しいねと3本合わせて握ったのが画像のもの。なんとも美しい握りではないか? この苦心した握りを2、3かん、あっという間に口に放り込んだ。すぐに来たのは甘みである。甘えび(ホッコクアカエビ)と比べるとやや甘みは少なく、また旨味も欠ける。たかさんなど「面倒な割に、もうひとつ魅力がない」という。寿司ネタとしてはイマイチながら、食べてみる価値はあると思う。
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でんでん/ワキヤハタ 2005年9月22日 175
 相模湾で「白むつ」、駿河湾では「でんでん」と呼ばれる魚はワキヤハタ、オオメハタ、ナガオオメの3種である。この魚は同じくらいの大きさで比べるに味わいにはほとんど差がない。大きなものほどうまく。旬は秋。産地は相模湾、駿河湾や三河、熊野灘、九州からも入荷してくる。値段はやや安く、市場の評価もないだろう。すなわちこの魚の真価を知る人はまだまだ少数派なのだ。その少数派のひとりである渡辺隆之さんを驚かそうと『市場寿司 たか』に持ち込んだ。なんの特徴もない魚を前にたんたんと仕事をして、そして握った1かんを口に運ぶや、予想通りの表情に変わっている。「これなんていう魚だろうね」、その感動は深いようだ。秋のワキヤハタのうまさは恐るべし、なのだ。身全体に細やかで上品な脂があり、それがために甘みがあるように感じる。そして旨味が来て、身の柔らかさで、すし飯と混ざり合うようだ。「ねえ、どこで売っているか教えて?」といったのは、たかさんであった。
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