寿司図鑑365 目次へ! |
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カゴカキダイ 2005年3月30日 旬/秋から冬 01
まったくこの魚、外見からすると熱帯魚としか思えない。しかも困ったことに小魚というか大きくなったとしても20センチ前後の磯回りの雑魚でしかない。この魚を市場まで持ってきて売れる魚としたのは八王子綜合卸売センターの高野水産ではないか? それには、ぼうずコンニャクの一枚噛んでいるのだが、一度もっていった寿司屋は翌日にもこの魚を探すようになる。旬は秋から冬。
白身魚で血合いの色が美しい。皮目に白くにごった脂があり、ここに甘みがある。酢飯との相性も抜群である。小さなもので1匹2個(かん)、大型で4個のネタがとれる。皮は捨てないで素揚げにすると美味。
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●八王子綜合卸売センター、「市場寿司 たか」
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万鯛/アカマンボウ 2005年3月31日 02
関東では万鯛(まんだい)と呼ばれる。マグロの延縄などでとれるので主に遠洋沿岸漁業の基地でよく見かける魚。宮城県気仙沼、石巻、関東では三崎、和歌山那智勝浦、高知市などで巨大で赤の斑紋のまん丸、奇怪な魚を見たら本種だと思って欲しい。この魚は関東などの市場では切り身で見ることが多い。
背の部分は脂がなく淡白、よく言うと上品な味わいであるが寿司には向かない。それが腹身は脂ものり味わいも深くてすし飯に負けることがない。すなわち寿司ネタとして使えるのだ。どちらかというとあっさりした味わいに脂が甘く、食感が軟らかい。もっと寿司に使われていい魚と思っている。
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アカガイ 2005年4月1日 旬/冬から春 03
八王子魚市場に源七という、貝どころ千葉の船橋から来る魚貝卸があり、店頭で、あんちゃんがアカガイを剥く。木の芽時になり、初夏を迎えると「子が入ってるかな?」と店頭で聞くのが毎年のこと。アカガイの旬は寒い時期から春までなのだと思うが、子を持っていなければけっしてまずくはないのだ。これはそろそろ「アカガイはよしにしようかな」という目安ともなる。子はアカガイの赤い身にやや薄い朱色である。
アカガイの味わいを決めるものは、その独特の苦みと風味である。まず口に入れるとそのアカガイらしさが広がり、その後に豊かな旨味甘みがどっと押し出してくる。このちょっと「くせのある味わい」が酢飯に至極調和する。それこそ江戸前握りにあってなくてはならぬ個性派脇役、すなわち「主役を食う」という役柄。
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クサカリツボダイ 2005年4月2日 旬不明 04
日本列島の遙か南、天皇海山でとれていたのが本種。干物やみそ漬けなどではお馴染みながら、なかなか鮮魚ではお目にかかれるものではない。それが本州は駿河湾、沼津ではときどきあがるのだ。めったにお目にかかれないから寿司屋や料理屋でも出ることはない。これは魚を知る人だけの密かな楽しみ。ぼうずコンニャクなどはこれを見ると競りをする人の間にあって「見逃してくれないか」と祈るのだ。それほどうまい魚である。
たっぷり甘い脂を蓄えた白く美しい身は寿司ネタにしてトロでもなく、カンパチやブリでもない。独特の存在である。軟らかくうまい身はすし飯とともに喉の奥に消えていく。口中に残る思いはトロっとした旨味、そして余韻とも言うべき甘みである。酢飯との相性抜群、間違いなく寿司ネタとして最上ではないかと思う。
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バカガイ(青柳) 2005年4月3日 旬は春 05
船橋の仲卸に「青柳ありますか?」と聞くと「ばかーはねーよ」なんて怒鳴るように言うのだ。船橋では「ばか」もしくは「ばかげ」と、寿司屋での青柳は面はゆいように言うのだ。それでも「うまいお」とは東京湾の漁師でもいちばん湾奥にちかい船橋の漁師はもっとも知悉している。「うめーよな春のばかげ」と歯の抜けた笑顔で言うのだ。どれぐらいうまいかというと春の握りでは「これなくしてだめだろ」というほどである。
バカガイは殻から外してウロや汚れをとり、開いて熱湯にくぐらせる。氷水にとりふきんでしっかり水分を取り除く。でも「市場寿司 たか」の仕込みはちょっとどころかえらい違っているのだ。むき身からウロを外し、鍋に入れる。そこに塩をどばっと入れて始めてガスコンロをつけるのだ。手でかきまぜながら熱くなってきたら流水で洗う。これを握るのだ。この朱に染まったバカの握りがうまいんだな。バカ特有の苦みをともなった風味。甘さ。春は「バカ」に限るなんてバカは思うのだ。
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