
当然、中には倉橋島名物の鯛(マダイ)が入っていた。
全長50cm・2㎏上は目の下一尺半である。
桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季だ。
これを骨を残して総て料理し尽くす。
刺身は先にも書いた。それはともかく、久しぶりに潮煮を作る。
かまの潮煮の、出来上がりにすだち丸々1個搾り込んで、後は食らうだけだ。
昆布だしでことことじっくり炊き上げたもので、表面の皮から、身からして、とろりと柔らかい。
器に盛り付けるときは国宝を輸送するが如し、の気持ちでなければならない
身から飛び出した肩帯(胸鰭周辺)の骨をつまむとひょいっと抜ける。
マダイの肩帯と腰帯周り、すなわちかまの部分の骨が大きく小骨が少ないのも魅力だろう。
抜けた骨周りの身をすすり込んだら、もうそこにあるのは別世界である。
皮と身は、濃厚な昆布だしとマダイのうま味が凝縮されて液体のように舌を這う。
潮煮は日本料理の基本ともいうべき料理であるが、要するに昆布の味と魚の味を仲睦まじくさせるといいのだ。
皮や身、煮汁をすすり込む時間が永遠続くといい、とも思う。
ちなみに潮煮はご飯の友というよりも、酒と相思相愛である。
できれば燗酒を用意したい。
煮汁は別の器に半分入れて、ときどきぬる燗と半割にして飲む。
煮汁で酒がのめるのもうれしいねー。
汁も身も皮もなく、器に残ってるのは鰭と骨だけになったら、残念ながら終いである。
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これなら赤坂某店の「夜の梅」だって、今食べたらうまいと思うかも知れない。
ちなみに「あんこ」が好きで和菓子が好きなボクにとって、せっかくの「あんこ」のもとである小豆などの豆類の「あんこ」感を取り去った羊羹がどうにも許せなかった。ボクの「あんこ」ちゃんを返してくれ! と思ったほどだ。
滋賀県周辺の蒸し羊羹である、「丁稚羊羹」は好きだけど、「練り羊羹」ときたら、「あんこ」様の「あんこ」であることのよさが感じられなかったのだ。
でも、今、ボクは「あんこ」と同じくらい「練り羊羹」も好きだ。
好みがころころ変わるのがボクのボクらしさで、ころころ変わるのが進化という名の変化である。だから食通という進化を止めた存在が嫌いなのだ。
さて、『御菓子所 絹与』は豊橋市市街地のど真ん中にある。
前の通りが旧東海道である。京に向かって東海道宮宿(熱田宿)手前では最大の宿、吉田宿で、吉田藩の城下町でもある。
愛知県でも屈指の人口を誇り、歴史のある町だともいえるだろう。
この店から西に豊橋市の老舗が多く、これが江戸時代の吉田宿の中心地なのかも知れない。
そんな豊橋で見つけた『御菓子所 絹与』は享保年間創業とあるので、300年の歴史を持つ老舗中の老舗だ。
昔、和菓子屋を見つけて、入って、羊羹中心の店だったら、がっかりして回れ右していたものである。
でも今回は羊羹好きの新参者として、一棹(さお)買ってきた。店のお姉さんも美人でよかった。
これを5日間にわたっておめざに食べる。
落語家の羊羹食べのような、ヤな感じの舌触りではない。
ちゃんと小豆の粒子が感じられて、歯にもつかない。
小豆の渋の残り方も絶妙だと思う。
小豆にはうるさいつもりだが、非常に上等なものを使い、その上等な小豆を生かせていることも明白。
羊羹は高いものだが、5日で割れば安いものだ。
豊橋に行ったら、必ず『御菓子所 絹与』に寄りそうである。
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今回はちょっとだけツキヒガイの方が甘味が豊かで、貝らしい風味が優っていた気がする。
でも気のせいかも知れない。
それにしてもイタヤガイとツキヒガイはうまい。
もちろんイタヤガイ科の食用貝は総てうまいけど、この2種はうまさのラインが刺身にして他の二枚貝より上だ。
次いでヒオウギかな?
といいながら、ヒオウギを食べるとまた違ってくるのが、ボクが通ではない証拠である。
結論、イタヤガイ、ツキヒガイ、ヒオウギガイは同じくらいうまい。
一色のすごいところは、このイタヤガイ科3種が全部揚がることだろう。
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当然、中には倉橋島名物の鯛(マダイ)が入っていた。
桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季。
雄で体が黒ずんではいるものの、精巣(白子)はまだ硬く成熟度は低い。
白子は明らかに食べ頃である。
白子は天ぷらにした。
鯛白子天ぷらは東京都内、天ぷら屋では春の定番種だと思っている。
白子を揚げるとき、衣を改めて作り直してから揚げているのが記憶にある。
たぶんクルマエビや「めごち(ネズミゴチ)」のための、薄めの衣をつけて高温で揚げると、火が通り過ぎる、もしくは中の白子が散るのだと思う。
天ぷら屋では職人さんのなすがままに食べたことはあるが、めったに追加したことはない。
その「めったに」の種が白子だった。
白子はていねいに取りだし、中の筋などを取り去る。
軽く振り塩をして小麦粉をまんべんなくまぶして、厚めの衣をつけて高温で揚げる。
使っているのは市販の天ぷら粉(これだと技いらずだ)に氷で冷やした水で厚めの衣を作る。
一般家庭なのでわざわざ神経を使って衣を作る気になれない。
最近の天ぷら粉はとてもヨイヨイよいやサ、だ。
揚げたてを食べる。
白子の衣は厚めの方がうまい。
さくっと音が聞こえるくらいでなければならない。
当然、中から一瞬だけ熱々の半液化した白子がとろりとくる。
舌触りは生クリームのようだけど、ちゃんと魚らしい味わいがある。
残念なのは、5分以内に食べないとおいしくないことかな。
鯛の白子天ぷらに敬意を表して、本物ビールの晴れ風500mlを開ける。
ボクに好みのビールが出来るなんて、思わなかった。
日美丸さんに感謝!
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当然、中には倉橋島名物のマダイが入っていた。
倉橋島は広島市の南にある。広島側からは江田島があり、倉橋島と大きな島が連なる。
呉市に統合されてしまっているが、もともとの呉との間には音戸の瀬戸という海峡がある。
たぶん広島県の最南端に当たるのではないか。
このあたりは、広島湾から南に島と島が重なり合い、多様な貝類、エビなどが豊富で豊かな海域である。
そんな海域で、多彩な貝類やエビなどを食べて育ったのが倉橋島のマダイだ。
全長50cm・2㎏上で、吻から目の下、尾の先までが1尺半。
マダイは目の下2尺までがいちばんうまいと思っているが、まさにそのサイズである。
桜は散り、5月、6月の産卵盛期を迎えようとしている時季。
雄で体が黒ずんではいるものの、精巣(白子)はまだ硬く成熟度は低い。
『日美丸』のタイ釣りは伝統的なフカセという釣法で、いわゆる一本釣りである。
マダイはエサ(食べているもの)、漁法、扱う人によって大きな差が出る。
そのどれ一つが欠けても、うまいマダイは生まれない。
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例えば、茨城県のマルアオメエソと駿河湾のアオメエソを並べてもまったく違いがわからない。
個人的には同種だとしか思えない。
それで産地によって種を分けるしかなかった。
この銚子以北のマルアオメエソが消滅してくれた(シノニムとなる)ことは、まことに目出度い。
ただし、このアオメエソ属の画像は膨大なので、データの合体になかなか手をつけられないでいる。
しかもバケがいる。
この手頃なアオメエソ(目光)を一つかみ買って、八王子総合卸売センター、八百角でノビルを買って天ぷらにして、乾麺のそばをゆでて……。
これがボクのお昼となりぬ。
そばつゆは、めじか節厚削り節(マルソウダ)を煮だし、砂糖・醤油でつゆにして、追い鰹(かつお節削り節)をしたものだ。
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うまいに決まっているセットだけど、本命はさておき、最強クラスの脇役から。
ニシン目ヒラ科のヒラである。
体長49cm・1.384kg はこの魚としては小振りである。
魚類に興味のない人にとっては巨大なニシンのような魚で、北海道でも見つかっているが、あえて言うと瀬戸内海周辺、有明海周辺の魚といいたい。
この魚、広い内湾域がないと産卵できないのではないか、と思っている。
この点からも、自然破壊だけしかやらない、企業や行政や政治家達は、ヒラだけではなく、地球にとっても敵である。
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一般的に「ぼたんえび」というのはトヤマエビのことだ。日本海と北海道以北の深場にいる大型の美しいエビである。
標準和名(図鑑などにのるときの)ボタンエビは近縁だが別種なので要注意。もちろん標準和名のボタンエビだってやたらにうまい。
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