スルメイカ

Scientific Name / Todarodes pacificus Steenstrup.1880

スルメイカの形態写真

外套長(胴の長さ)25cm前後になる。胴は丸く、細長い。交接腕変形は右Ⅳ腕先端のみ。
スルメイカの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
外套長(胴の長さ)25cm前後になる。胴は丸く、細長い。交接腕変形は右Ⅳ腕先端のみ。外套長(胴の長さ)25cm前後になる。胴は丸く、細長い。交接腕変形は右Ⅳ腕先端のみ。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度


      知らなきゃ恥
    • 食べ物としての重要度

      ★★★★★
      非常に重要
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    動物門軟体動物門頭足綱鞘形亜綱十脚形上目ツツイカ目開眼亜目アカイカ科スルメイカ亜科スルメイカ属

    外国名

    学名

    Todarodes pacificus Steenstrup.1880

    漢字・学名由来

    漢字 鯣烏賊、須留女烏賊、寿留女烏賊 Surumeika 
    由来・語源 地方名を佐々木望(1929)が標準和名にしたもの。
    墨群 「するめ」は「墨群(すみむれ)」で墨を吐くイカタコは「すみむれ」と呼ばれる。これが転訛したもの。
    鯣(「するめ」というイカをよく干した乾物)に向いている、もしくはよく加工される烏賊(イカ)の意味合い。「鯣」はイカタコの内臓をとり、開いて干したもの。イカではスルメイカ、ケンサキイカ、アオリイカ、紋甲烏賊(もんごういか カミナリイカ)などが原料。ケンサキイカのものを「一番するめ」、スルメイカのものを「二番するめ」と呼ぶ。
    寿留女 当て字。スルメイカの干したものを結納などのときに使う。長寿を願い、言祝ぐで「寿」、「留女」は嫁ぎ先で長くとどまる。
    Sasaki
    佐々木望(ささき・まどか/明治16年〜昭和2年 1883年〜1927年)。広島県広島市生まれ、ハンガリー、ブダペストで客死。動物学者。軟体類とくに頭足類の分野で大きな業績を残す。多くの軟体類を記載。

    地方名・市場名

    生息域

    海水生。
    オホーツク海、北海道〜琉球列島。香港。北限はカナダでも発見されている。

    生態

    スルメイカのアカイカ科は眼の水晶体が皮膜に覆われていない。露出している。
    孵化して産卵するまでが1年、産卵すると死んでしまうので、まさに1年イカである。
    スルメイカはメスが大きくオスが小さい。
    市場で見ていると小振りの「ばらイカ」というものが真冬の日本海を皮切りに入荷してくる。それが初夏まで続くのであるが、これは日本近海でのスルメイカが産卵期によって3系群あることによる。
    外套長(胴の長さ)25センチ前後になる。胴は太さが一定に近く細長い。腕は8本だが、触椀というエサを捕獲するための2本の特殊な腕を持っており、合計10本となっている。
    吸盤には角質化したリングがはまっていて鉤状になっている。
    体の中に軟甲(なんこう)という柔らかく透明なプラスティックを思わせるようなチキン質の貝殻の退化してものを持つ。

    スルメイカ3系群
    春から夏生まれ群 日本海本州沿岸から九州沿岸、伊豆半島周辺で4月から8月に発生する。資源量は小さい。
    秋生まれ群 東シナ海北部から日本海南西部で9月から11月に発生する。日本海の沖合を回遊し、大型になり、日本海での漁獲の7割を締めるもの。
    冬生まれ群 太平洋九州・四国沿岸で12月から3月に発生。黒潮にのって太平洋側を多くが回遊、もっとも北まで到達する。太平洋側での水揚げの多くはこの系群。

    基本情報

    日本列島を取り巻くように群れを作って回遊している。日本各地で「マイカ(真イカ)」と呼ばれているのは水揚げ量が多く、もっとも一般的だからだ。乾物として、干ものとして、生鮮品として日常的なものだし、非常に重要なものだ。これが2020年前後から不漁となっているのは深刻である。
    貝殻は非常に退化的で薄いプラスティックのよう。武井周作はこれを〈骨硝子紙(びいどろがみ)のごとし〉と記している。
    その群れに三群あって、産卵期が少しずつずれているために、年間を通して市場にみられ、年間をとおしておいしいものが手に入る。日本の総水揚げ量の半分を占めていたこともあり、重要な水産物でもある。
    鮮魚として重要なだけでなく、おびただしい種類、量の加工品の原材料となっている。
    特に「するめ」のほとんどが本種を原材料としている。
    すなわちもっともたくさん「するめ」に加工されるイカであるから本種の名がある。
    珍しさ度 普通の食用イカである。スーパーなどでもお馴染みであるが、最近、入荷が不安定でいつでも手に入るイカではなくなりつつある。

    水産基本情報

    市場での評価
    ■ 鮮魚、冷凍ともに毎日のように入荷している。量的にも多い。価格は安値安定。
    ■ 氷を下に敷き詰めて並べたものを「下氷」、釣り上げたものを冷海水のなかでしめて、そのまま水氷で近場から直送したものを活けスルメと呼ぶ。「活けスルメ」の方がやや高値。
    ■ 季節によって大きさによって入荷方法が違う。小型のものを発泡に無造作に投げ込んで出荷、これを「バライカ」と呼ぶ。値段は大型以上に安い。
    漁法 釣り、巻き網
    産地(漁獲量の多い順) 北海道、青森県、宮城県、岩手県、石川県、長崎県


    下氷のスルメイカ下氷のスルメイカ
    下氷は船上で釣り上げたものをすぐに箱詰めする。漁場は遠く、値段も安い
    水氷のスルメイカ水氷のスルメイカ(活けいか)
    比較的近海で釣り上げたものを海水氷でしめたもの。入荷までの時間が短く、吸盤がすいついてくる。下氷と比べて高い
    バライカ(ムギイカ)バライカ(ムギイカ)
    春から初夏にかけて入荷してくるまだ若いものを「ばらいか」という。小振りなので箱に並べられない。値段は安い

    選び方

    生きているとき、水揚げされた時点では透明、時間をおくと褐色になり、やがて白濁した色合いとなる。スーパーなどでは白くないものを選ぶ。

    味わい

    年間を通して美味。
    身はほどよい硬さで、旨み、甘みは生ではやや少ない。
    焼くと少し硬く締まる。旨み、甘みが増す。特に皮は味わい深い。

    栄養

    良質なタンパク質が多く、低カロリー。コレステロール低下作用や視力向上、肝機能を強化してくれるタウリンが豊富に含まれます。肝には目の疲れ、視力の低下を軽減し、肌荒れ、風邪の予防効果のあるビタミンAが非常に多く含まれる。またイカ墨にはガン抑制作用があるとされています。

    危険性など

    ■ アニサキスの宿主。刺身などでは注意が必要。

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    スルメイカの料理・レシピ・食べ方(おいしい順序ではない)/生食(刺身、湯引き、和え物)、煮る(塩ゆで、煮つけ)、焼く(干もの、醤油焼き)、ソテー(中華炒め)、揚げる(フライ、唐揚げ、天ぷら)、汁(みそ汁)

    スルメイカの刺身 小振りのイカを水洗いする。胴を割ってからはできる限り水などを使わない方がいい。皮を剥き、横に2等分する。これを縦方向に拍子木切りにする。耳(エンペラ)も同様。鮮度がいいとコリコリとした食感が心地よく、実に甘味豊か。イカらしい風味も楽しめる。

    スルメイカのイカ素麺いかそうめん(烏賊素麺) スルメイカの胴の部分を薄く二等分にはぎ、厚みを二分の一にして細切りにしたもの。甘味、うま味が舌に当たるように感じられて、生じょうゆで食べても、ポン酢で食べてもおいしい。
    スルメイカの湯引きばらいかの湯引き 手のひらに乗るサイズのバライカの胴で作る。胴の部分の皮を取り、細切りに。約80度くらいの湯にさっとくぐらせ、氷水にとり、水分をよくきる。ここにみょうが、しょうがねぎを合わせてみた。さっと湯をくぐらせたために甘味がぐんと増える。当然、成イカで作ってもうまい。
    スルメイカ納豆スルメイカの納豆和え 水洗いして水分をよくきる。川を剥き細造りにする。これを市販の納豆を合わせてかき混ぜ、きじょうゆ、からしを加える。ちなみについてくるタレ、辛子で十分だ。

    スルメイカと里芋煮 いちばん相性のいい野菜は里芋だと思っている。一緒に煮ると相乗効果でおいしくなる。スルメイカは水洗いして適当に切る。下ゆでした里芋は水分をよくきる、酒・醤油・砂糖・水を煮立たせてイカと里芋を煮上げる。

    スルメイカの煮つけ 水洗いして水分をよくきり、適当に切る。バライカは水洗いして外套膜に足を入れて口を楊枝でとめる。酒・砂糖・醤油・水を煮立たせた中で煮つける、短時間で煮つけて鍋止めすると硬くならない。
    スルメイカの酢のものスルメイカの酢のもの きゅうりもみににんじんなどを加えたものに、ゆでたスルメイカを加えたもの。スルメイカには味があるので少しだけ豪奢になる。
    スルメイカの一夜干しスルメイカ一夜干し なめると塩辛い塩水を作り漬け込む。約15分(気温による)漬け込み、水分をよくきる。これを半日ほど干す。軽くあぶって食べるが、イカらしい甘味を感じるような香りと風味でやたらにうまい。
    スルメイカのげそ焼きスルメイカのげそ焼き スルメイカのゲソを抜き、水分をよく拭き取る。これを、酒、みりん、しょうゆ、少量の砂糖の地につけ込む。数時間漬け込んだら焦げないように焼き、1、2回地をからめる。げそではなく、胴を使うと軟らかくておいしい。
    スルメイカと野菜炒めスルメイカの野菜炒め 街の中華料理店の定番料理「野菜いため」のイカ版と思うといい。香りのある野菜が合うのでにんじん、沖縄のセロリなどを使ってみた。フライパンに油、しょうが・にんにくのかけらを入れて熱し、適宜に切った野菜、イカを同時に入れて強火で短時間炒めたもの。超簡単でおいしいおかずの出来上がりだ。
    スルメイカの肝バター焼き 水洗いして肝を分けておく。軟体は輪切りにして置く。フライパンにバターとつぶした肝をいれて火をつける。ここに軟体を入れて和えるように炒める。野菜はお好みで。
    スルメイカのみそ汁スルメイカのみそ汁 昆布だしに内臓を除いたスルメイカを入れて煮だしてみそを溶いたもの。大根やにんじん、葉ものなどの野菜を加えてもいい。また昆布だしではなく水でも十分だ。
    超簡単トマト煮込みスルメイカの超簡単トマト煮込み 内臓を取り去り、適当に切る。大小が出来ても気にしないこと。トマト、冷蔵庫にある煮てもいいものを用意して適宜に切る。フライパンなどに油をしき、トマト、スルメイカ、野菜(ここではズッキーニと玉ねぎ)を一緒に炒める。野菜、スルメイカ、トマトなどから水分が出て来て煮込み状態になる。トマトの甘味が出たら塩コショウで味つけして出来上がり。あまち煮込みすぎるとトマトの甘味が消える。
    スルメイカのフリットスルメイカのフリット 水洗いしたスルメイカの皮を剥き、素麺のように細切りにして、よく水分をとっておく。小麦粉、ビール、塩、少量の砂糖で衣を作る。イカに小麦粉をまぶし、衣をつけて高温で揚げる。表面はかりっとし、中はイカらしい味がある。
    スルメイカのイカリングスルメイカのイカリング 輪切りにしたイカを包丁で切れない程度にとんとんとたたく。水分をよくきり、塩コショウして小麦粉をまぶし、小麦粉、卵黄、サラダ油を合わせた衣をつけ、パン粉をつけて揚げたもの。さくさくと限りなく食べてしまいそう。
    スルメイカのカレースルメイカのカレー 牛肉、豚肉の代わりにスルメイカを使うこと。スルメイカは内臓を除き、足の吸盤を包丁などで取り去る。あとは適当に切るだけ。市販のルーを使い、ほんの10分程度で出来て簡単でうまい。

    関連コラム(料理法・レシピ)

    記事のサムネイル写真イカの煮なます
    日本各地に残る「煮なます」もしくは「湯なます」は基本的には同じ物だ。どうやら非常に古い料理で酢を使っていることから、19世紀初頭以後に生まれ、日本各地に広まり、・・・ 続きを開く

    好んで食べる地域・名物料理

    いかそうめん 函館の朝市、名物食堂では「いかそうめん」でご飯をかき込むが、これがヤリイカではつまらない。これに限ってはスルメイカでなければと思うのだ。厚みを薄く二枚に切って細いそうめんにして、だし醤油(加減醤油)、もしくは生醤油ですすり込む。
    かき揚げ 江戸前天ぷらの天丼のかき揚げに使う。かき揚げには上と並があり、並ネタのひとつ。
    するめの天ぷら 「するめ」をもどして天ぷらにしたもの。他には「身欠きにしん」をもどして天ぷらにする。[会津地方全域]
    イカの湯引き(がんせきの湯引き)/長崎県平戸市度島 祝い事などのとき、刺身などの盛り合わせにつきものであるとのこと。一緒に湯引きにするのが「ばり(アイゴ)」であるというのも面白い。スルメイカはリング状に切り、短時間塩ゆでする。
    夏いかのもんぺ焼き夏いかのもんぺ焼き スルメイカの胴に青じそいりのみそで和えたゲソを摘めて焼き上げたもの。スルメイカを水洗い。ゲソを外す。げそを刻んでみそ、みりん、砂糖を合わせたみそで和え、青じそを加えて胴に詰める。これを焼く。[山形県鶴岡市]
    イカメンチイガメンチ(イカメンチ) 「メンチ」とあるのでパン粉を使っているのかと思うと、実はかき揚げに近いもの。昔は日本海で揚がったスルメイカの加工のときに余ったげそ(腕)の部分を細かく刻んで玉ねぎ、ニンジンなどを合わせて、小麦粉、卵などで作った衣をつけて揚げたもの。キャベツを使ったものなどソースをかけるとまるでお好み焼きを食べているようでおいしい。弘前市など青森県の各地で作られている。[わらび 青森県弘前市]など

    いか、こんにゃく煮 白木屋呉服店の夕食の主菜が「いか、こんにゃく煮」で、これを想像で再現。イカを適宜に切り、酒、砂糖、しょうゆ、水の地でこんにゃくと煮る。「いかとこんにゃく」の取り合わせは家庭料理の基本だったのかもしれないと思うほど相性がいい。うま味の強いイカと、それ自体に味がないこんにゃくの取り合わせがいい。日本橋にある和菓子の老舗『榮太樓』主人、細田安兵衛の著書内にあった『実業少年』(明治44年3月号)の「商店小僧の三食調べ 探偵術応用の結果』より。

    する天するてん(する天) スルメイカの塩いか(干もの)を天ぷらにしたもの。上質のスルメイカの干もので作ったものは非常に味がいい。[新潟県上越市高田]
    ごろ焼き フライパンなどにイカのわたと、げそだけ、イカ全体を入れて炒めたもの。味つけは塩コショウでもしょうゆでもよいと思う。酒との相性が抜群にいい。[藪田浦漁業協同組合 富山県氷見市]
    塩辛大根煮 大根を水煮して塩辛で味つけする。塩辛からたっぷり旨みが出て、それが大根煮しみこんでうまい。静岡県など日本各地。カツオの塩辛でも作る。『秘伝 おふくろの味 静岡県海のさち山のさち』(静岡県生活改良普及員編 静岡新聞社)
    スルメイカの煮しめ 東京都奥多摩、多摩地区、山梨県などではスルメイカと里芋などと煮染めにする。本来は鯣(乾物)を使ったのだろうと思う。主に冠婚葬祭に作るものだった。
    イカ雑炊 伊豆半島などでは雑炊にワタも含めて丸ごと入れて作る。ワタの濃厚な旨みが、身体をほかほかにしてくれる。網代では船宿の定番夜食だった。作り方はしょうゆ味の汁を作る。カツオ節だしでも水でもいい。ここにご飯とスルメイカ、わたを適宜に切った物を入れて火を通す。仕上げに卵を溶き入れる。
    貝焼き スルメイカを野菜とともに「いしる(魚醤)」で煮て食べる。石川県能登半島などで作られている。能登半島にはマイワシのものとスルメイカで作る魚醤があるが、後者で作るものがうまい。
    玉こんにゃく ピンポン球状のこんにゃくを鯣(するめ)のだし、しょうゆ味で煮たもの。山形県全域で食べられているようだ。
    いか玉焼き 関西、四国ではお好み焼きの具の代表的なもの。基本形は「イカと卵」でキャベツの具である。

    関連コラム(郷土料理)

    記事のサムネイル写真日本海産バライカで秋祭の味
    クの周りには奥多摩出身の方が多い。現在も暮らしている人、都会(八王子)に出て来た人などさまざまだ。今でこそ奥多摩は観光地だけど、古くは山奥のまた奥であった。・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真湯引き・長崎県平戸市度島のイカの湯引き
    長崎県平戸市度島では「イカの湯引き」を祝い事のときに「みずいか(アオリイカ)」や「あかいか(ケンサキイカ)」と「がんせき(スルメイカ)」などとの時季のイカで作る・・・ 続きを開く
    記事のサムネイル写真茨城・栃木の煮いか
    ルメイカをはじめツツイカ目を使った加工品、料理に「煮いか」がある。  市場など流通上のものは、生もしくは冷凍イカを塩ゆでしたもので、「ボイルいか」、「煮いか・・・ 続きを開く

    加工品・名産品

    塩干するめ スルメイカの内臓を取り去り、塩漬け、干したもの。[青森県八戸市など]
    いかずし ニンジンと一緒につけ込んだもの。すしというよりも漬け物に近い。
    いかぽっぽ焼き ゆでたスルメイカを串に刺して焼くのみの状態になっている。
    沖づけ 沖で漁をするときにしょうゆ、みりん、酒などで調味したつけ汁を持参して、釣り上げたばかりのスルメイカを生きているときにつけ汁に入れる。関東州半の海辺など、日本各地。
    するめ
    塩乾品
    鯣(するめ) 開いたスルメイカを強く干したもの。乾物として出回り、スルメイカの語源になった。そのまま焼いても、水でもどして利用してもいい。げそを取り去ったものを「だるま」といい、「げそ」と分けて売られることも多い。
    鯣の皮
    塩乾品
    いかの皮 鯣(するめ/スルメイカを開いて強く干したもの)の皮。食べ方はよくわからないが水で戻して、煮ものなどに使うものと思われる。
    スルメイカの一夜干し
    塩乾品
    一夜干し(開き干し) むしろ乾物といえそうな「鯣」とは違って軽く干し上げたもの。軟らかくスルメイカの風味が強く非常に魅力的。[海の駅 松島 島根県隠岐郡海士町]
    塩乾品
    塩いか 新潟県の主に佐渡島で作られ、新潟県下で売られているもの。近海ものの大型のスルメイカを開いて塩をして干している。非常に上質でスルメイカのうま味、風味豊かで食感も好ましい。[野口福蔵商店 新潟県佐渡市両津など]
    スルメイカの丸干し
    塩乾品
    丸干し(もみいか) 小振りのスルメイカを丸ごと干し上げたもの。ぺたんこにおしつけて干し上げている。焼くと甘味のある香りと強いうま味があって、わた半生で濃厚かつ独特の味がする。日本海沿いの福井県、石川県、富山県、新潟県などで作られている。[中宗 富山県新湊市、石川県、吉川水産 福井県丹生郡越前町]
    稚イカの煮干し
    塩乾品
    煮干し 稚イカをゆでて干し上げたもの。軽くあぶって食べると、ほどよいかみ応えと強いうま味が楽しめる。[長崎県産]
    塩辛
    いかの塩辛(赤作り) 「いかの塩辛」は原則的にスルメイカ以外では作れない。それは「わた」が大きく、味わい深いからだ。塩辛の基本的な味はこの「わた」で決まる。わたを塩漬けにし、軟体もげそも胴も皮つきのまま塩をして干して合わせる本格的な塩辛と、ほとんど生のわたと軟体を合わせただけのものがある。
    塩辛
    黒作り スルメイカの軟体、墨、わたを一緒に塩で漬け込んだもの。墨が入っているためか少々まろやかに感じられる。水産加工品の研究家(主にかまぼこ)清水亘が『新説三珍味』のひとつとして挙げている。『新説三珍味』は東京都新島の「くさや」、滋賀県琵琶湖の「ふなずし」、富山県の「黒作り」。[三浦鮮魚店 富山県氷見市]黒造り
    塩辛
    白作り スルメイカの胴の部分だけ皮を剥いて切り、漬け込んだもの。わたの色も比較的薄い色合いで漬けて合わせる。昨今では調味料を加えて味つけしたものもある。
    塩辛
    いかの子塩辛 スルメイカの卵巣の塩漬け。塩味の中にほんのり甘味とうま味がある。[島根県隠岐郡西之島]
    塩乾
    もみいか スルメイカを内臓も丸ごと塩漬けにしたもの。丸干しいかも「もみいか」と呼ばれているが、こちらは別物。このまま切り、汁にしたり、塩出しをして和え物に使ったりできる。[輪島朝市]
    いしり
    魚醬
    いしる(いしり) スルメイカの内臓を塩漬けにして出てきた汁。イカ醬とするとわかりやすい。魚醬よりも甘味が強いと思う。[大積海産 石川県輪島市]
    塩乾加工品
    するめ漬 するめを戻し、醤油味の地につけ込んだもの。鮮魚に乏しい山間部で生まれたもので現在の物は塩分濃度が低くまことに食べやすい。ただ本来は生醤油などに漬けた塩辛いものだった可能性が高い。[今井醸造 岐阜県下呂市萩原]
    塩乾加工品
    するめ麹漬(いか麹漬) もどした鯣(するめ)を細切りにして麹に漬け込んだもの。本来は塩分がある程度高く保存性を重視したものだったが、近年、塩分濃度が低くまろやかなものが増えいている。[兵庫県・鳥取県・島根県など山陰]
    塩丸いか
    塩乾
    塩丸いか 非常に塩分濃度が高い。水でもどしてゆでたり、揚げたり、焼いたりする。もともとは日本海側でとれたスルメイカを山間部である岐阜県、長野県に運ぶために産地で作られていたもの。[丸三小池食品 長野県岡谷市]
    酢いか
    総菜
    酢いか イカを調理した酢に漬け込んだもの。保存性が非常に高く、産地で流通するというよりも遠隔地である山間部などに送られていたものだ。同様のものは東北や茨城などでも作られているが消費するのは山間部だと思われる。[佐々木商店 島根県浜田市]
    煮いか
    総菜
    煮いか 本来は日本海でとれたスルメイカを浜でゆでたもの。長野県、岐阜県では「年取」、「正月」に食べた。「塩いか」がケの食品なら、「煮いか」はハレの食品だ。塩イカは長野県、岐阜県などの山間部に年間を通じて運べる。「煮いか」は寒い時季だけのものだったかも知れない。今ではスーパーや魚屋でよく見かける地域性を感じる食べ物だ。
    岐阜県古川(岐阜県飛騨市古川町)では〈正月よりもむしろこの「としとり(年取)」に重きが置かれる。「ぶりや煮いかやカマボコなど、普段では食べられないようなご馳走を食べる習慣があった」〉飛騨古川 八ツ三旅館 女将 池田加津美『サライ』(1990 12/20)

    いかにんじん
    総菜
    いかにんじん 「するめいか」と生のにんじんを調味液で漬け込んだもの。福島県全域で売られているようだ。
    いかめし
    総菜
    いかめし 「いかめし」は本来は道南渡島半島周辺で作られていた郷土料理。スルメイカの同の部分に洗ったもち米を詰めて、甘辛い地で煮上げたもの。近年はもち米を使ったり、うるち米を使ったものがレトルト食品として売り出されている。同様のものを函館本線森駅で駅弁として売り出したことで有名になった。[かくまん 北海道函館市]
    いか薄削り
    塩乾
    するめのウス削り 乾物のするめを薄く削ったもの。[西尾商店 静岡県静岡市清水区]
    イカロケット
    総菜
    まるごとイカロケット スルメイカの胴の部分にげそとチーズを入れて三温糖や塩、酒などで味つけしたものらしい。和なのか洋なのか、判然としないがおいしい。[源泉 徳島県海部郡牟岐町]

    釣り情報

    関東ではイカ角(擬餌バリ)を使って釣る。初夏の麦イカ釣りから、やや深場のスルメイカ釣りまで人気が高い。

    歴史・ことわざ・雑学など

    結納の品のひとつ、「寿留女(するめ)」の原料。
    ■ 加工品、鮮魚ともにもっとも重要な水産物。
    ■ 漁獲量が多く、我が国での水産物水揚げの5パーセント前後を占める。
    真いか 国内で漁獲するイカの半分以上が本種である。代表的なイカであることから「真いか(まいか)」と呼ぶ地域が多い。それでスルメを釣る船の漁り火は、人工衛星からの映像で日本海を大都市が出現したかのように浮かび上がらせると言う。
    ■ 加工品の種類が多い。イカの塩辛、缶詰、するめ、丸干し、一夜干し、いかめし(イカ飯)、酢いか、さきイカ。
    島根のすさみ 川路聖謨。天保11年佐渡への途次。三国街道、三俣宿(新潟県湯沢町)宿の食事。〈汁 くじら・なす・豆腐。平(平椀) ぜんまい・いんげん。膾 大根おろし、名もしらぬ塩肴一切れ。鮨 きざみするめ三筋ズツ。取肴 名はしらず、田づくりに似たるもの十ばかり〉。この鮨は明らかにスルメイカを糀と漬け込んだものと思われる。

    参考文献・協力

    『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)、『水産加工品総覧』(三輪勝利監修 光琳)、『たべもの起源事典』(岡田哲 東京堂出版)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)『イカ-その生物から消費まで-』(奈須敬二他 成山堂)、『天麩羅物語』(露木米太郎 時事日報社)、『聞き書 岐阜の食事』(農文協)、『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)

    地方名・市場名

    チャボイカ チャボ
    場所三重県南度会郡伊勢町 サイズ / 時期稚イカ 参考河部友彦さん(海辺のかわべ屋/三重県度会郡南伊勢町) 
    ガンセキ
    場所長崎県平戸市度島 参考福畑敏光さん 
    イガ
    場所青森県青森市 
    イキレ[稚イカ] エキレ[稚イカ]
    場所山口県萩 サイズ / 時期稚イカ 
    オニイカ
    場所山口県宇部市・下関 参考青山時彦さん(宇部市青山鮮魚)、聞取 
    カンセキ
    場所徳島県阿南市 
    サラタケ
    場所三重県熊野市遊木漁港 サイズ / 時期稚イカから胴長10cm前後まで 備考1尾の大きさが皿に盛ってはみ出さないほどだという意味合い。 
    サルイカ
    場所島根県、山口県仙崎 
    シマメイカ シマメ
    場所鳥取県、島根県 備考小型のものを言うことが多い。 
    ジルマイカ
    場所静岡県沼津市 
    チンチロ チンチロイカ
    場所三重県南伊勢町・紀伊長島・尾鷲市・熊野市 サイズ / 時期稚イカ 参考河部友彦さん 
    バライカ バラ
    場所新潟県佐渡、東京都内市場 サイズ / 時期小型 備考春から初夏にかけてとれるまだ小振りのもの。 
    マイカ[真烏賊]
    場所各地 
    マツイカ
    場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協、青森県鰺ヶ沢 サイズ / 時期小型 
    ムギイカ[麦いか]
    場所神奈川県相模湾周辺 サイズ / 時期小型 備考初夏に関東周辺でとれる小さな若いイカ。これは相模湾などで若いスルメイカがとれる時期と麦の収穫期が同じであることからきている。 参考聞取 
    ゴロ
    場所関東 部位肝臓 備考関東でもときどき「ゴロ」という。 
    フ[腑]
    場所宮城県 部位肝臓 備考腑ではないかと思われる。香住では形の揃わない個体が混ざって入った箱をいう。 
  • 主食材として「スルメイカ」を使用したレシピ一覧

関連コンテンツ