マナマコ

Scientific Name / Apostichopus armata (Selenka, 1867)

マナマコの形態写真

全長30cm×8cmくらいになるが、身体は縮んだり、伸びたりするので大きさがわかりづらい。黒、青など、体色は生息する場所によって変わる。覆面(下面)は総て赤。前方に口、後方に肛門がある。身体に縦に6列のイボイボがあり、内骨格は退化して、内側に痕跡的に残る。[黒と青みがかったものがマナマコ]
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全長30cm×8cmくらいになるが、身体は縮んだり、伸びたりするので大きさがわかりづらい。黒、青など、体色は生息する場所によって変わる。覆面(下面)は総て赤。前方に口、後方に肛門がある。身体に縦に6列のイボイボがあり、内骨格は退化して、内側に痕跡的に残る。[黒と青みがかったものがマナマコ]全長30cm×8cmくらいになるが、身体は縮んだり、伸びたりするので大きさがわかりづらい。黒、青など、体色は生息する場所によって変わる。覆面(下面)は総て赤。前方に口、後方に肛門がある。身体に縦に6列のイボイボがあり、内骨格は退化して、内側に痕跡的に残る。[クロナマコタイプ]全長30cm×8cmくらいになるが、身体は縮んだり、伸びたりするので大きさがわかりづらい。黒、青など、体色は生息する場所によって変わる。覆面(下面)は総て赤。前方に口、後方に肛門がある。身体に縦に6列のイボイボがあり、内骨格は退化して、内側に痕跡的に残る。[赤いのがアカナマコ、黒と青みがかったものがマナマコ]
    • 物知り度

      ★★
      これは常識
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    棘皮動物門ナマコ綱楯手亜綱楯手目シカクナマコ科マナマコ属

    外国名

    学名

    Apostichopus armata (Selenka, 1867)

    漢字・学名由来

    漢字 真海鼠、真生子 Manamako
    由来・語源 ナマコの仲間でもっとも普通に見られるもの。
    ナマコの由来・語源
    古くは単に「こ」と呼ばれていた。漢字「海鼠」も本来は「こ」と読む。これはナマコは古くは、ゆでて干したものが都などに送られた。これを「干海鼠(ほしこ)」、「熬海鼠(いりこ)」という。それが室町時代には生鮮品が見られるようになり、これを特に「生(なま)の海鼠(こ)」と呼ぶ。それが江戸時代元禄期には生鮮品が一般的になり、「海鼠」を「なまこ」と読むようになった。これは山間地である京から海を臨む江戸に、文化の中心が移行したことも大きいのではないか。
    また「こ」とは指示代名詞「that」ではないか? ナマコを見て、不思議な姿から「あれ」といっただけで通じたのではないか? すなわち海中で見られる「あれ」がナマコであったのでは?

    地方名・市場名

    トラゴ
    場所上方(関西) 

    生息域

    海水生。浅海。
    北海道〜九州。中国大陸、朝鮮半島。

    生態

    マナマコは黒いナマコ(クロナマコもしくはクロコ)、緑青色のナマコ(アオナマコもしくはアオコ)の2形で内湾の砂泥地に生息する。
    雌雄異体。
    キュビエ器官は持たない。
    泥とともに珪藻類、海藻、貝類、アマモの破片などを食べている。
    産卵期は3月〜9月。
    産卵後、餌(えさ)をとることをやめ、深場に落ちる。
    冬に活発に餌をとり、活動する。
    腸や身体を再生することができ、危険を感じると腸(内臓)を出して、敵の目をごまかす。

    基本情報

    ナマコの仲間は世界中に生息し、熱帯にたくさんの種類がいてる。食用としている国は少なく、熱帯域のようにナマコの加工、乾物生産はしても、食用としない地域も多い。日本のように生で食べる習慣がある国は非常に希。
    中華高級食材の海参は非常に有名。日本でも江戸時代など中国向けの海参を生産し、俵物と呼ばれていた。
    国内で食用となるのはマナマコとアカナマコ、キンコの3種類。
    本種は市場ではアカナマコと混同されて流通し、近年あまり区別しなくなっている。

    水産基本情報

    市場での評価 寒くなると入荷してくるもの。量的にはあまり多くないが重要なものとなっている。価格はやや高値安定。黒ナマコ、青ナマコと呼ばれていたものでアカナマコよりも安い。またクロナマコは3色のなかでも特に安い。
    漁法 底曳網(ナマコ桁網、曳網、抄網)、見突き漁
    主な産地 北海道、青森県、長崎県、山口県、愛媛県、兵庫県、石川県

    選び方

    生きているもの。触って硬く、太っているものがいい。

    味わい

    旬は冬
    食べられるのは筋肉、消化管、卵巣。
    口と排泄孔は硬いので切り取る。体腔にある白い膜は硬く取りにくい。
    アオコは比較的生で食べて柔らかく口溶けがいい。
    クロコは生で硬く口溶けが悪い。黒い色が手に着き、またなかなか落ちない。この黒い色素は煮ると染み出してきて煮汁を黒く染める。

    栄養

    ビタミン類が豊富。
    カルシウム、コンドロイチン、コラーゲンに富む。
    ナマコが持つ、ホロトキシンというサポニンの一種には水虫を起こす白癬菌の成長を抑制し、殺菌効果もある。

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    マナマコの料理法・調理法・食べ方/生食(刺身、酢のもの)、煮る(茶振りなまこ)



    アオコ型
    ナマコの刺身 塩で少し締めて、体腔膜(筋肉に内側から張りついている膜)を剥がす。これを刺身状に切ったもの。ナマコそのものに塩味があるので、あえてしょうゆなどをつける必要はない。これにポン酢やきゅうりを合わせると酢のものになる。シコシコとして一瞬硬く感じるが口内でゆっくり溶けていく。柑橘類が合う。


    アオコ型
    このこ(ナマコの卵巣) 卵巣医は細い帯状だ。これを取り出して、塩水のなかで泥などをさっと洗い流す。水分をザルに上げてとったもの。本体にはない甘味があり、消化管(わた)のような苦みが少ない。
    アオコ型
    このわた(ナマコのわた) 消化管は非常に長い。これをしごくようにして消化途中の泥などを取る。ていねいに塩水で洗って水分をきる。包丁でとんとんとたたくと出来上がり。塩味があるのでこのまま食べて美味。当日食べないなら少し塩を加えておくといい。
    アオコ型
    茶振りなまこ(ナマコのつけ置き) 漬け地は昆布だし・酢・煮きり酒・煮きりみりんを合わせたもの。調味料は好みでいろいろやるといい。ザルなどに入れて振り塩をしてゆすり締める。肛門、口を切り取り、内臓を取る。これを煮立った緑茶のなかで湯通しする。ザルなどに入れて茶の中で振る(これが料理名の由来)。これを冷やした地に1日以上つけ込む。
    クロコ型
    マナマコの刺身 水洗いして振り塩をしてゆすり、口と排泄孔を切り取り、体腔膜をはがす。これをもう一度水洗いして刺身状に切る。思ったよりも硬く、口溶けが悪い。ナマコらしいおいしさはあるが、アオコ、アカナマコと比べると落ちる。
    クロコ型
    茶振なまこ(ナマコのつけ置き) 水洗いして振り塩をしてゆすり、もう一度水洗い。口と排泄孔を切り取り、体腔膜をはがす。これを番茶のなかでゆでる。軽く短時間で動かしながらゆでる。これを冷たい加減酢(酢・酒・しょうゆ・カツオ節だし)に漬け込む。やはりナマコ3色のなかでは硬くうま味が少ない。

    クロコ型
    ナマコの中華風煮込み 下ごしらえしたものをゆでる。ここでは30分ゆでて一度ゆで汁を捨て、もう一度30分ゆでた。冷水に取り粗熱がとれたら適当に切る。これを鶏ガラスープ、紹興酒で煮込んでみた。決してまずくはないが苦みが出てしまった。

    好んで食べる地域・名物料理

    日本全国。
    節分に食べる 島根県隠岐の島では節分に砂おろしといって必ず食べるところがある。[島根県隠岐の島]

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    加工品・名産品

    いりこ(煎海鼠、海参)、きんこ(金海鼠) 平安時代から作られていた。塩湯でして、干したもの。現在では高級中華食材として非常に重要。江戸時代には長崎から俵ものとして輸出されていた。漢字「海参」は薬効、薬用人参に匹敵するため。マナマコを干して乾燥させたもの。海参(いりこ)。
    このわた(海鼠腸) 内臓の塩辛。独特の渋みや苦み、風味がある。肥前野母(長崎県長崎市野母)の唐墨、越前の雲丹、三河(知多とも)の「このわた」で日本三大珍味とされる。
    くちこの塩辛 マナマコの卵巣、「くちこ」を塩漬けにしたもの。「このわた」ほど渋みがない。[愛知県三河地方など]
    くちこ、このこ、ほしこ、ばちこ 生殖巣を干したもの。
    卵巣を乾し揚げたもので珍味佳肴のたぐい。くちこ、ばちこ、ほしこ、このこ、などと呼ばれる。軽く焙って食べるものだが、非常に濃厚な旨みを持ち、独特の風味がある。
    味つけなまこ 切ったナマコを三杯酢に漬け込んだもの。[植村水産 北海道石狩市浜益]
    莫久来莫久来(ばくらい) マボヤとこのわた(ナマコの内臓の塩辛)を合わせたものが莫久来(ばくらい)というのがあるが、これは非常に美味。[ヤマ食 岐阜県岐阜市]

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    色合いで呼び名が違うが、アオナマコ、クロナマコ、アカナマコは一種で総てマナマコ。
    古事記 天孫降臨伝説にある。天孫降臨に際して、アメノウズメノミコトが魚たちを集めて、天孫にお仕えするか問うた。そのとき多くの魚たちが「仕えます」と答えたなかで、ナマコだけはなにも言わなかった。するとアメノウズメノミコトは「この口は答えをせぬ口か」と小刀でナマコの口を切り裂いたとされている。『たべもの史話』(鈴木晋一 平凡社)
    【俳句】
    季語歳時記 冬(「このわた」も)
    尾頭のこころもとなき海鼠哉 向井去来
    古往今来切って血の出ぬ海鼠かな 昔も今も切って血のでないナマコであることよ。松尾芭蕉
    吾輩は猫である 〈始めて海鼠(ナマコ)を食い出せる人はその胆力において敬すべく、始めて河豚を喫せる漢はその勇気において重んずべし。〉


    ふくらいり 『たべもの史話』にある料理を再現したもの。
    〈江戸時代には「ふくらいり」、「こだたみ」などというのも重要なメニューだった〉とあり〈「ふくらいり」は別名「ふくらい煮」ともいい、酒・醤油で調味した出汁を沸騰させ、そこへ大ぶりに切ったナマコを入れてあたため、すぐ器に盛って供した」〉というのを再現したもの。
    1 ナマコを軽く洗い、口と肛門を切り取り、内臓を取り、大振りに切る。
    2 鰹節だしを沸騰させて、ナマコを入れて、すぐに器に汁ごと盛る。

    関連コラム(歴史)

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    参考文献・協力

    『ナマコ学 -生物・産業・文化-』(高橋明義・奥村誠一編 誠文堂書店)、『水産加工品総覧』(三輪勝利監修 光琳)、『商用魚介名ハンドブック』(日本水産物貿易協会編 成山堂)、『新版 水産動物学』(谷田専治 恒星社厚生閣)、『水産無脊椎動物学』(椎野季雄 培風館)、『基礎水産動物学』(岩井保、林勇夫 恒星社厚生閣)、『たべもの史話』(鈴木晋一 平凡社)、『歳時記語源辞典』(橋本文三郎 文芸社)、『魚と貝の事典』(望月賢二 柏書房)、『たべもの語源辞典』(清水桂一編 東京堂出版)、『日本語源大辞典』(小学館)、『語源海』(杉本つとむ 東京書籍)
  • 主食材として「マナマコ」を使用したレシピ一覧

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