第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
九十巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
どこまで続けられるか未知数ですが、毎日一かんずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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筋烏賊/スジイカ 2006年12月6日 446
 この平凡なスルメイカに似ている小振りのイカをご存じだろうか? 沼津では漁師から「こんなのどうしようもねー」とけられ、鹿島灘では釣り師に外道とされている。まことに評価の低いイカなのである。どうして評価が低いのかというと釣り師にとっては「型(大きさ)」が小さいからだけど、漁師にとってはまとまってとれないただそれだけの理由である。「食っちゃ、うまいよ。ウチでもときどき煮ておかずにするだら」、「個人的には好きだけん」と沼津巻き網漁師は呟く。これを勝手にいただいてきて刺身にする。決してまずくはないが平凡である。それではと「煮いか」にしてみる。酒、醤油、砂糖の汁でほんの数十秒火を通す。これは近所の寿司屋のご隠居直伝のやり方である。これを、たかさんがネタに切り付ける。「ちょっと皮がやわっかいな」と2かん。これはなかなかうまいのである。どうしてもスルメイカ、ヤリイカと比べてしまうが、素直に味わうと「いけるよ。イカの味だね。普通の柔らかいからすし飯との馴染みもいい」とたかさん。ごく在り来たりで特徴はないが平凡な煮いかを楽しんだのであった。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
イセゴイ 2006年12月10日 447
 世の中にはどうにも食べられない魚というのがある。「なんでも食えばいいんだ。それが野生の底力だ」とうそぶいていたが、最近やっぱり「無理かな」と根を上げて降参する魚にひとつやふたつ出くわすようになってきた。その最大の難敵がイセゴイであった。この立派な外見に「見事じゃないか」と笑顔で卸し始めた、たかさんの顔つきが曇り始めた。「イセゴイは小骨が多いっていうけど」。「いや違う。小骨じゃないな。大骨だ」。体長60センチからなんと握りにとれたのは4かん分。まな板には無残な残骸が残っている。そして生の味だ。「ホントに食べるんだな」。真剣にこちらを睨む。「食べますよ。沼津の青木さんがせっかく送ってくれたんだから」。こういうのは考えていてはダメ。ゴツーンと一気に口に放り込む。そうしたらゴツーンと口の中でイセゴイの反撃が始まった。なんだこれは? まるで鉛のようじゃないか。臭みというか変な風味もある。「オレがなにをしたというの。こんな仕打ちはないだろう」とたかさんが宣うが「そうですね」。「神よ助けたまえ」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
油蟹/アブラガニ 2006年12月11日 448
「油蟹」とはなんとまずそうな名ではないか、これだけは和名をつけた学者さんのミステークだとしか思えない。その昔にはまさかアブラガニがこんなに輸入されるとは思わなかったんだろうね。「でもこの名前のつけかたに失敗して助けられているのが庶民だわね。にせタラバ、それもいいじゃない。タラバがブランドものなら、こちらはノンブランドの優れものよ(サザエさんの言い方で)」。「そうそうあんまりアブラガニがいい味だって言うなよ」とたかさんが笑う。こちらもアブラガニ礼賛者なのである。ようするに安くてうまいがいちばんということ。でもやっぱり今年はそんなアブラガニも暮れになって値を上げてきている。その2キロほどのを蒸し上げて「市場寿司 たか」へ持ち込む。「たかさん、真剣に考えてさ、タラバガニとどうちがうかな」、「違わないでしょ。安い小さなタラバなら大きめのアブラの方がなんぼも上だね」。そして握りもうまいな。まだ剥くとほんのりと温かい。この握りがいいのである。酢飯と甲殻類の甘味が相乗効果を「生みすぎですね。5つ子を産んだ感じ」。これじゃアブラも暮れは値上がりしそうだな。年始に食べるとするかな。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
炭焼き/クロシビカマス 2006年12月16日 449
 国道1号線を平塚から小田原に走る。魚屋が多いななんて、ついついのぞいてしまうのだが、かならず置いてあるのが「炭焼き」なんである。真っ黒で口が大きくて犬歯がドドーッと上に下に並んでいる。すごみのある顔つきだな。でもこれがなくては相模湾岸に住む人たちの食生活は寂しいものとなる。煮つけにしてじんわりと浮かんでくる甘い脂、そして旨味、本当に満足度の高い味わいだ。でもこれを刺身にするのは大変なのだ。うまーく骨のないところだけを削り取るようにして細いリボン状の冊がとれる。これを握りに仕立てて、「あああ、うまい」、感動、感動、また感動だな。白身なのに濃厚な脂の甘味、そしてしっとりして適度に柔らかいので、すし飯との相性も抜群である。「たかさん、これは絶品だな。最高の握りだぜ!」。「バカ言うなよ。握れるまでが長すぎるわい」。
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肉持鰈/ミギガレイ 2006年12月17日 450
 この種名、なんだか「投げやりな」じゃないだろうか。「右鰈」なんておかしいだろ。ヌマガレイに「左鰈」とつけるようなものではないか。「でも、これじゃ投げやりな名前つけられても仕方ないな」、たかさんが沼津から持ち帰ったのを見てぽつり。「そう言えば昔の俳優さんで面白い名の人いたよね。山茶花究とかさ」、たかさんの話がそれそうなので、目の前に来たミギガレイの握りをぱくつく。これが「ええ?」なのである。聞いてないのがわかったのだろうか? たかさんも口に放り込んで、「ええ?」、「うまいじゃん」。鮮度のよさもあるだろうけど、身はしっとりとして甘味が微かだがある。それにすし飯と混ざり込んでも存在感がある。「沼津じゃなんて言うの?」。「それがないんだよ。福島じゃ“にくもちがれい”って言うんだけど」。「なんだそれ、ぜんぜんうまそうじゃない。本日の特ネタは“沼津のカレイ”にするかな」。「素直にミギガレイでいいんじゃないかな」。
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