寿司図鑑 千 目次へ!
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虎河豚/トラフグ 2005年11月27日 241
行きつけの仲買店に活けのトラフグが1匹、寂しそうに泳いでいる。どうも売れ残ってしまったようなのだ。「安くしとくからさ、持っていかないかな」と河豚調理師免許を持つ店長に言われて、すぐその気になった。こんなときはついているもので下ろしている最中に白子がでてきた。河豚を買っているときに「当たりだ、はずれだ」というがオス、すなわち白子が出てきたら大当たりというやつだ。これに気をよくしてみがき(下ろして毒などを除去したもの)をを持ち込みました。「今日握るの、止めといたほうがいいよ」という、たかさんにお願いして、紅葉おろしとポン酢を用意。これがうまくも何ともない。「うまくないだろ、ダメだっていったのに」、たかさんは食べてみようともしない。その身はぶるんと弾力性が強く、しこっとしていても味がない。味が登場しない内にすし飯が来てゴムと一緒に消えていくようだ。トラフグは一日寝かさないとうまくもなんともないんだな。と改めて認識した次第。
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千島貝/チシマガイ 2005年11月28日 242
関東の市場には福島県からほんのわずか入荷してくる。見た目は小型の白みる(ナミガイ)と言ったもの。これがいい味わいなのだ。福島県松川浦漁港に行ったおり当地のご婦人方が、これうまいよ、と言っていたのだけれど、あまりとれないためになかなかお目にかかれるものではない。食べたかったら産地に行くしかない。またこれなど福島県の海岸沿いの寿司屋さんなどネタとして使ってもらいたいものだ。さて、今回は、たかさんともども松川浦漁港から持ち帰ったのをじっくり味わった。仕込みはナミガイ、ミルクイと同じ、軽く茹でた水管の皮を剥いて1個で2かん取り。味はナミガイより旨味があっていいかも知れない。たかさんの評では「歯触りがいいし、これならすし飯とも合うよ」とのこと。産地ならではの味わいだけれど、将来性は高い。
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クジメ 2005年11月29日 243
相模湾や東京湾で小物釣りをしているとときどきアイナメに似た魚が上がってくる。アイナメかな? と思うと顔つきが違っていて。これをベテラン釣り師に聞いて「くじめ」という名を知ったのだ。大きくなっても20センチ前後。可愛いらしすぎて逃がして、「大きくなって来いよ」なんて楽しい思い出のひとつだ。そんな雑魚だんだけどある程度大きさのものが釣れると、煮つけや刺身にもなる。これを握ってもらったのが晩秋のこと。腹には卵が詰まっていた。これが見た目はきれいな白身なのだが、あまりうまいとは申せないもの。職人の渡辺隆之さんからも、「やっぱりアイナメとは全然違うな」と宣告されたのだ。なにしろ身に味がない。また食感も悪し、また時期を変えて、鮮度のいいのでチャレンジするべ! とあいなった。
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大正海老/タイショウエビ 2005年11月30日 244
1970年くらいまでは手頃な値段で買えるエビとしてお馴染みのものであったタイショウエビも、最近ではあまり見かけることがなくなっている。むしろあえて探すと珍しい部類になるのかも知れない。これの生を久しぶりに見つけて、『市場寿司 たか』に持ち込んだ。すると、たかさん曰く、「タイショウエビはね、昔っから天ぷらやフライって決まってるんだよね」。それでも素早くゆでエビにしてもらって、すぐに寿司に使わないわけがわかったのだ。それは色である。ブラックタイガーやクルマエビのように鮮やかな赤にならずに、くすんだ紅色にしか染まってこない。その上、ぷりっと心地よい食感を感じるところまではよかったのだけれど、甘みも旨味もどこか物足りないのだ。たかさんも「これは使えねーや」と言うことで、残念なことと相成った次第也。
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鬼鰺/オニアジ 2005年12月1日 245
オニアジは黒潮の差す沿岸部でときたまとれる魚。あまりまとまって獲れるものではなく、地域によっては珍しいものだろう。駿河湾沼津の巻き網でもポツンと1匹混ざっていて、選別からもれて捨てられていた。これがうまいのかまずいのか未知数であるが、こんな初物だからこそ、握りにしてみる価値はある。さて、これを三枚にして、皮を引いてみると身の色合いが赤く血合いも太い。「こりゃ、見た目は悪いだろう」と寿司職人の渡辺隆之さんは呟く。それでも刺身として食べたら、なかなか「うまいな」と感激してもいる。確かに、身に酸味があるのだが、これはカツオなどで感じるものに通じる。そしてまったりとくるのはやはり旨味である。身は鮮度がいいこともあってシコっとしている。「見た目より、やるじゃないか」オニアジ君。
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