寿司図鑑365 目次へ!
|
索引へ
|
|
緋おどし/ヒオドシ 2005年7月19日 111
沼津、佐政水産・青木修一さんはまるで魚類学者のような人である。魚を見て必ず種として比較・同定して競りに参加する。その味わいに関しても並はずれた経験と好奇心を持っているので、彼をして珍しいというと期待できること大。その青木さんが沼津では珍しい魚です、と送ってくれたのがヒオドシ。緋色の美しいカサゴである。これを、江戸前握りにして食べてみた。刺身としては少々旨味に欠ける。やはり寿司にしても同様である。皮下の脂も薄くすし飯に負けてしまっている。これが意外に寿司職人としての、たかさんとしてはいいという。この上品さが一品として「あっていい」というのだ。皮目の美しさもプラスされているようだ。
●市場魚貝類図鑑、ヒオドシのページへ!
●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
|
|
春日子酢じめ/マダイ 2005年7月20日 112
梅雨もそろそろ明けそうなという頃に市場で目立ってきたのがマダイ・チダイ混じりの春日子(かすご)。春日子というのは寿司ネタでは鯛の幼魚のことをさす。この鯛はマダイかチダイかはたまたキダイ(れんこ)か? 寿司ネタの本にはときに「マダイだ」「チダイだ」と1種類をさすがごとく書かれていたりするが、市場に置いてはこの3種で小さな物は総て春日子となる。そのなかからマダイだけ選んで『市場寿司 たか』でしめてもらった。皮付きで塩をする、これをさっと酢で洗うくらいの加減。「うまいね」というのに「当たり前だ」と寿司職人は胸をはる。タイ科のなかではもっとも身がしっかりしているマダイも幼魚では柔らかい、皮も柔らかく、ほわりをすし飯を包むがごとくである。適度な酢加減のネタのなんとうまいことか。
●市場魚貝類図鑑、マダイのページへ!
●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
|
|
春日子生/マダイ 2005年7月21日 113
春日子(かすご)はきちんと仕事をするもんだと思っていた。ところが、たかさんが不思議なことを言うではないか。「これの生ってのが出るんだよね。むしろ客はしめたのよりも好きっていうからね」。ほんまにそないなことあるんかいね、と2かん握ってもらった。マダイといっても幼魚だから味はあまりない。当然脂もないのだけれど、やや柔らかめの身がすし飯にすんなり馴染んで、口中から消えていく。確かに小さいとは言え、マダイの味わいはあり、それが舌に微かに余韻として残っている。こんな軽いネタがあってもいいのだろうか?
●市場魚貝類図鑑、マダイのページへ!
●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
|
|
紅ずわい/ベニズワイガニ 2005年7月22日 114
町の寿司屋もときに回転寿司のネタを使うのだけれど、ベニズワイは便利でおいしくて言うなれば「使える新ネタ」とでも言えようか? 日本海から東北太平洋沖合の深海に棲息するカニで、近年では北朝鮮などからの輸入が多い。クモガニ科ズワイガニ属でかの「越前がに」、「松葉がに」と称されて冬を彩るズワイガニと近縁のカニである。よくズワイと比べられてあたかもまずいように巷で言われているが、これはベルリンフィルと名もない交響楽団を比べるがごとき。食に関してあまり突き詰めてはならぬのだ。さてベニズワイは『市場寿司 たか』で出しているもの。さっぱりした甘みが夏木立に吹く風のごとし。適度な繊維質の食感、すし飯との調和、「これいいよね」とヴィヴァルディの良さを再認識しました。
●市場魚貝類図鑑、ベニズワイガニのページへ!
●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
|
|
青鯛/アオダイ 2005年7月23日 115
東京の市場で意外に普通に見られるのがアオダイである。ちょっと値段も張るし見栄えもするので旬の夏には皆が気になって見て通り過ぎていく。でもあまり買われていくところを見かけないのは値段のせいだろうか? 同じく夏の魚であるイサキよりも一段も二段も上の値段。それでもキチジ(きんき)やハタなんかと比べると格下の三役級である。この中途半端な値段が買い手を煮え切らなくさせている。関東に来るアオダイのほとんどは伊豆七島、すなわち東京都産である。今回のものは八丈島産。味わいは上品、それでいて旨味もあり、旬で脂ものっている。「久しく食ってなかったけど、いい味だね」という、たかさんの言葉がずばりと来ている。
●市場魚貝類図鑑、アオダイのページへ!
●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
|