寿司図鑑 千 目次へ!
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マダカアワビ 2005年12月17日 261
市場でもっともよく見かけて定番的、また単にアワビと言えばクロアワビである。ついでメガイアワビ。そしてもっとも少ないのがマダカアワビとなる。現在ではアワビと言えばクロアワビということになったのは生でそのまま食べるようになったためだが、江戸前握りにこの生でいいのかは疑問を感じる。確かに食っちゃうまいのだけど、あえてすし飯に合わせる必要があるのか? それと比べるに蒸しアワビというのがある。これは酒と水で蒸し上げて硬いアワビを蒲鉾のように軟らかくする。それでいながら濃い味わいを身に残しているのだ。そして蒸しアワビならマダカに限るのだ。今回は30分蒸して、そのまま鍋で一晩置いたもの。この寿司のいいところはすし飯とともにかみ切れるアワビの身が噛むと同時に貝の旨さを放出する。そして蒸した汁の味わい。やっぱり江戸前握りは一仕事しなくちゃだめなんだろうね。
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縁側/ツバメウオ 2005年12月18日 262
噴火が起こる前の三宅島、三池港で初めて釣り上げた魚がツバメウオ。それを脇で見ていたお婆さんが「おかずにくれんかいな」と言ってきて、よく見ると、お婆さんがゴッツイ釣り竿を持っている。どうも夕ご飯のおかず釣りなのだ。「これがいちばんうまい魚」だと教えてくれて、お婆さんは大きなナンヨウカイワリやイスズミを次々と釣って帰ったのである。そんなツバメウオだが、意外なことに市場でもあまり珍しい魚ではない。関東には和歌山、大分などからまTまって入荷してくるし、だんだんうまいということも知られてきているようだ。今回のものは大分県産。「イシダイかな?」なんて寿司職人の渡辺隆之さんが切り付けている。そして出来たのが背の部分の握りと、なんと大きな背ビレ下の縁側である。この縁側のうまいのなんのって、なによりも旨味がじわっと湧きだしてくるようだし、シコっとした食感。すし飯に負けぬ個性に「いい握りになったね」と、たかさんと全部食べてしまったのだ。
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もんぱ/セミエビ 2005年12月19日 263
セミエビといってもあまり一般に流通することもない。また東京で暮らすものにとって身近な海辺、伊豆や千葉外房でもとれるにはとれるが小振りなのが普通で漁師さんのみそ汁になってしまうものなのだ。そんなとき「高知でとれるもんぱ、送りますから、食べてみてください」と言ってくれたのが銀座の料理屋『黒尊』さん。それが届いて、驚いた。デカイというか、長い年月黒潮に現れてきて背に海藻が生えている。当然、これを刺身にしてみました。これがイセエビ以上に甘味があってうまい。当然、握りにしてもらうべく『市場寿司 たか』に持ち込みました。「イセエビとかこれなんか、あまり卸したことがないんだよ」とこわごわ握りになってきたのがコレ。前回、生のイセエビに少しがっかりしたのだが、今回は上々だ。なんといっても旨味甘味があって、当然甘味のお陰ですし飯との相性がいい。たまには贅沢さを堪能したい方は『黒尊』まで。
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養殖マダイ 2005年12月20日 264
今だにほとんど養殖魚を食べないのであるが、無視できないほどに市場にはあふれている。そして『市場寿司 たか』であるが、マダイに関して主に養殖ものを使っているのだ。ここで養殖天然もの論議になって、品質の安定、また脂の多さを歓迎する昨今の客の好みなどを話す。そして話が一段落ついて実際に食べてみたのだ。これが思った以上によくできている。エサによる臭みなどまったく感じられない。そして脂がとろっとして甘い。「うまいだろ、しかもたまに天然出すとまずいって言う客がいるんだからね」とたかさん。残念ながら出来すぎの養殖マダイ。でも自然破壊の原因でもあるし、結局エサは他の水産物なのだから食糧問題からも疑問がいっぱいなのだ。
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シマソイ 2005年12月21日 265
市場で荷を待っていると、知りあいの居酒屋店主が「これカサゴの仲間かな」と見せたのがシマソイ。主に北海道からくるカサゴの仲間である。ビックリするくらいに安かったので慌てて買いにいった。これが同じように北からくるクロソイやまぞい(タヌキメバル)などとは違い、値段が安くて比較的鮮度のいいものが多い。すなわちお得なお魚なのだ。料理法としては鍋や煮つけ、塩焼きにするのだが、刺身でのまずくはない。まずくはないが味がないのだ。それで今回は昆布締めにしてみた。ところが昆布の味を足してもあまりうまいとは思えない。「鍋はあんなにうまかったのに」と泣きをいれると、「まあ、こんな普通の味ってのも大切よ」とは寿司職人の渡辺隆之さんの弁。
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