第1集
1〜100貫
第2集
101〜200貫
第3集
201〜300貫
第4集
301〜400貫
第5集
401〜500貫
第6集
501〜600貫
寿司図鑑別巻 寿司図鑑索引
二十四巻 市場魚貝類図鑑の中で寿司に仕立てたものを独立させたものです。
毎日、1種類ずつ紹介する「寿司日記」と思ってください。
地方の寿司、まったく寿司ネタとされないものもとりあげています。
ほとんど総てが八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」でのものです。
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蝦夷馬糞海胆/エゾバフンウニ 2005年7月24日 116
 エゾバフンウニは北海道からのものは秋から初夏まで。これに対して三陸産は夏に「いがうに」が到来してくる。普通ウニというと弁当箱とよばれる経木の箱や木の台にのって剥かれた状態で来る。これが生きているのがゆるりゆるりと刺を蠢かしながら市場に並ぶのである。この活けのウニ、しかもエゾバフンウニというと主に北海道ものが多いのだが、今回のものは岩手県宮古からのもの。この身の入りがいいので迷わず『市場寿司 たか』に駆け込んだのだ。たかさんのところでも毎日のように大量のウニを仕入れている。でも寿司屋では普通、活けのウニを使うことはない。この活けエゾバフンウニの味わいは口に入れてピンとすぐに頭脳を刺激してくるうまさ。キタムラサキウニよりも旨さの濃度が高い。口中がウニの甘味旨味でやけどするような刺激がある。しかもしっかりとすし飯の味わいも感じられるのはなぜだろう。たかさんもこの鮮烈な甘味と旨味には感激しているようだ。「でもお客の注文受けていちいち剥いてらんないよ」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
がんど/ブリ 2005年7月25日 117
 ブリは出世魚である。各地で大きさごとに呼び名が変わる。関東なら「わかし」、「いなだ」、「わらさ」、「めじろ」、そして鰤となる。これが本場富山では「つばす」、「こずくら」、「ふくらぎ」、「がんど」、そして鰤である。ブリは冬が旬なのだけれど、それ以前の大きさのものは夏でも充分にうまいのだ。それなのに八王子の市場で氷見のがんどを見つけてあまりの安さに驚き、そして腕組みしながら思案、「えいや!」と1本買ってしまった。これを『市場寿司 たか』に持ち込むと、「夏だからね。人気もないし、ブリだろう?」というのに色々説得して、「夏のがんどはうまい」とそれを実際に握ってもらった。これが、たかさんもうなずくうま〜いネタ。「いい味してるね。魚というかブリ本来の旨味があるよね。それに腹身にはそれ相応の脂があるよ」。この脂が適度な甘味を醸し出してくれている。「夏はがんどに限りますということで……お後がよろしいようで……」。
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●八王子綜合卸売センター「市場寿司 たか」
わかし/ブリ 2005年7月26日 118
 出世魚ブリを続けて、今回は関東での「わかし」。ブリの子供である「わかし」は体長が15センチから、だいたい30センチ弱の段階を差す。神奈川県、伊豆半島に抱かれた相模湾に「わかし」が来るのが6月から7月のこと、これが7月後半8月には「いなだ」となる。「わかしはうまくないな、せめていなだまで待ってやれよ」と河岸の老人は呟く。それを「わしの子供の頃はよくこの大きさのを食ったけどうまかったよ」と返すのは石川県出身の寿司職人である。この市場で見ているのが富山県氷見からきたもの。7月11日であり、面白いことに兄貴分の「いなだ」が隣に並んでいる。敢えて「わかし」を2〜3本持って、たかさんに握ってもらう。脂の強いものを嫌う、たかさんが「いい味だね。このあっさりしたところがいいかも」という。「わかし」の身に脂はほとんどない。そのため脂からにじみ出す甘味もなく、ネタの前面に出てくるのは血合いからの酸味と身の淡い旨味だけ。ちょっと物足りないのだけれど、トロかなんか食べた後に1かん「こんな握りがあってもいい」に違いない。
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いなだ/ブリ 2005年7月27日 119
 またまた出世魚ブリを続ける。夏の相模湾というと名物は「いなだ釣り」の乗り合い船である。土日ともなると釣り宿の駐車場が満杯となり、通常の2倍3倍の船が出船となる。そんなに釣り人ばかりいて釣果はいかがなものか? というと大型クーラー満杯は当たり前である。このいなだが定置網にも入り、河岸にもやってくるけれどとんと人気がなく、300から500グラムほどのいなだで一本100円、200円の捨て値で売られていたりするのだ。この夏のいなだが嫌われるのは脂のなさからだろう。いなだの旬は間違いなく冬であり、「いなだ」=関西での「はまち」なのだから本来まずいわけがない。この人気薄のいなだを試しに握ってもらった。これが思いもよらずうまいのだ。日本海の氷見というブリの本場からきたもので、相模湾とはひと味違うのだろうか。脂はほどほどにあり、それが適度な甘さを醸し出している。そしてわかしよりちょっと硬めの食感がまたいいのだ。さて、ここでもうひとつ新しい課題ができた、今回は日本海の夏のいなだ、さて馴染みの相模湾・駿河湾のは、「どんな味わいだったろう」
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つぶ/アツエゾボラ 2005年7月28日 120
 刺身用のつぶといったらエゾボラが主役であって他のエゾバイ科エゾボラ属の巻き貝は三枚目とでも言えようか? 市場では前者を「Aつぶ」、後者を「Bつぶ」なんていい、この語源のわからない言葉で値段まで違ってくる。コリコリした食感と甘味、貝の苦みをともなった旨味が信条なのは同じであり、味わいが大きく違うということもない。そのBつぶにあたるのは幾種類かあるが、なかでも多いのがアツエゾボラだ。貝殻から身を抜き唾液腺をとる、ぬめりを流水でもみとり、水をきって出来上がり。やや薄目にへぐように切り付けて、握りに仕立てるのがなかなか「難しいな」とたかさん。やはり、つぶの握りはすし飯との相性はよくない。こりこりっとしてひやりと冷たい身が噛むごとに甘味を口中に発散して心地よい。そこにすし飯の穏やかな酸味がきて味わいはいい。「もっと薄くネタの切り付けをしたらどうだろう」というと、「それじゃこんどは旨味がなくなるだろ」とたかさん。「これはこれでいいんじゃまいかな、うまいんだから」。
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