バショウカジキ

Scientific Name / Istiophorus platypterus (Shaw, 1792)

バショウカジキの形態写真

体長3mを超える。側扁し細長い。上あごの先端は著しく長く先がとがっているが鋭くはない。第一背鰭は非常に大きく、帆船の帆もしくはバショウの葉状。第二背鰭は小さい。腹鰭は細長くヒモ状に見える。

    • 魚貝の物知り度

      ★★
      これは常識
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系カジキ亜目マカジキ科バショウカジキ属

    外国名

    Indo-Pacific sailfish
    言語英名 

    学名

    Istiophorus platypterus (Shaw, 1792)

    漢字・学名由来

    漢字 芭蕉梶木 bashoukajiki
    〈マカヂキ科バセウカヂキ属バセウカヂキ Istiophorus orientalis (Temminck & Schlegel, 1844)〉『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
    〈カジキ上科マカジキ科バショウカジキ属バショウカジキ Istiophorus orientalis (Temminck & Schlegel, 1844)〉『魚類の形態と検索』(松原喜代松 岩崎書店 1955)
    〈スズキ目メカジキ亜目マカジキ科バショウカジキ Istiophorus platypterus (Shaw and Nodder, 1792)  筆者(中村泉)は大西洋のニシバショウカジキ Istiophorus albicans (Latreille)をも認め2種とする 〉『日本産魚類大図鑑』(益田一、荒賀忠一、尼岡邦夫、上野輝弥彌、吉野哲夫 東海大学出版会 1984)


    由来・語源 東京での呼び名。背鰭がバショウの葉に似ているため。バショウはショウガ科の植物で葉が著しく大きい。松尾芭蕉の俳号はこの植物が深川の庵の庭にあったことからくる。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。南日本。インド・太平洋域。
    外洋の表層を遊泳。

    生態

    産卵期は夏。
    熱帯域では産卵は通年を通して行われる。
    餌は魚類。
    日本には夏から秋にかけて暖流にのって回遊する。

    基本情報

    九州、本州などでは夏から秋の魚のひとつである。カジキ類の中では比較的安いもので、全国的に流通することはあまりなく、ローカルな味。
    主に刺身用として各地で食べられている。ほとんどが鮮魚で加工用になることは希。刺身だけではなく、ムニエルやフライなど用途が広いので、スーパーなどで見かけたら買い求めて欲しい。

    水産基本情報

    市場での評価 入荷量は少ない。カジキ類ではもっとも安い。
    漁法 延縄、定置網
    産地 鹿児島県、長崎県、山口県、島根県

    選び方

    触って張りのあるもの。目が澄んでいるもの。大きいので真ん中あたりが筋が弱い。

    味わい

    旬は秋
    赤身魚。
    頭部が大きく歩留まりが悪い。鱗は皮に埋もれて取れない。
    身は筋が多くあまり脂がのらない。淡泊ななかに旨みを感じるもの。
    背鰭の下の蛇腹状になった担鰭筋は非常に美味。
    筋肉、胃袋、心臓などが利用できる。
    赤身とは マグロ族の魚(マグロ属/クロマグロ、タイセイヨウクロマグロ、タイセイヨウマグロ[Thunnus atlanticus (Lesson, 1831) ] : Blackfin tuna/一般的ではない)、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロ、コシナガ、ビンナガマグロ ソウダ属/マルソウダ、ヒラソウダ スマ属/スマ カツオ属/カツオ) および、カジキ類のシロカジキ、マカジキ、バショウカジキのこと。これにあえて加えるならカマスサワラかも。


    バショウカジキの切り身バショウカジキの切り身 断面を見ると腹の方が筋が多いのがわかる。血合いは強く切り落としている。血合いは煮ものや汁ものに利用したい。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    バショウカジキの料理法・レシピ・食べ方/刺身(セビッチェ、カルパッチョ、なめろう[さんが焼き])、揚げる(フライ、唐揚げ、天ぷら)、煮る(煮つけ、鍋、塩ゆで)、ソテー(ムニエル)、焼く(塩焼き、幽庵焼き)、汁(みそ汁)

    バショウカジキ腹刺身 基本冊で買い求めることになる。秋の脂ののった時季は脂が身全域に混在して柔らかい。ほんのり赤身を帯びた身はほどよい酸味が感じられる。脂に甘味があって非常に味わい深い。薬味はしょうが、わさび、にんにくなどお好みで。

    バショウカジキのカルパッチョ 皿ににんにくをなすりつけて香りづけ。オリーブオイル、塩を落とす。ここに薄く切った身を貼り付けていく。皿全体に貼り付けたら上からもオリーブオイル、塩をしてスプーンなどでとんとんと馴染ませる。好みの野菜などを乗せる。

    バショウカジキのフライ 水洗いして三枚に下ろして血合い骨・腹骨を取る。塩コショウして小麦粉をまぶして衣をつけてパン粉をつけて短時間高温で揚げる。熱を通すとややぱさつくのが、フライにするとややジューシーになる。淡泊で食べやすくていい。
    バショウカジキのやばたの唐揚げ やばた(背鰭下の筋肉)を骨つきで適当な大きさに切る。片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げにする。身はしっとりとして味わい深い。塩焼きにしても脂がある部分なので焼いてもぱさつかない。実に美味しい。
    バショウカジキの唐揚げ 刺身にしたときの半端な部分や、かまなどの部分を集めて置く。塩をして1時間くらい置き片栗粉をまぶしてじっくりと揚げる。揚げたてにコショウもしくはカイエンヌペッパーを振る。
    バショウカジキやばたの沖縄風天ぷら 背鰭下の小骨を好くように筋肉を取る。軽く振り塩をして少し置く。出て来た水分を拭き取り、小麦粉をまぶし、衣(小麦粉・塩・少量の砂糖・水)をつけて揚げる。衣に味つけすると冷めてもおいしく食べられる。
    バショウカジキのムニエル 淡泊な味にバターの風味と油分をプラスする合理的な一品。切身にして塩コショウする。小麦粉をまぶして多めの油でソテー。仕上げにバターで風味づけする。少し硬く締まるものの嫌みのない味わい。
    バショウカジキ腹身のねぎま鍋 腹側の脂のあるところを使う。適当に切り、カツオ節出しに酒・塩・少量の薄口醤油で味つけする。味つけはお好みで。切り身を煮ながら食べる。火が通り過ぎると硬く締まるので、中心部分は生の状態で食べる。
    バショウカジキの魚すき(煮食い、いり焼き) 筋の多い腹身をすき焼きの地(酒、砂糖、しょうゆ)で煮ながら食べる。煮加減は各自のお好みで。旬のキノコやコンニャク、豆腐などを入れて賑やかに食べてもおいしい。
    バショウカジキのあら煮 かま下や鰭際のあらを集めてさっと湯通し、冷水に落としてぬめりや残った鱗などを流す。これを酒、砂糖、しょうゆ味でこってりと煮上げる。付着した筋肉は煮ても硬く締まらず甘味があって美味。酒、塩であっさり煮てもおいしい。
    バショウカジキ胃袋湯引き 山陰などでは秋に揚がる大型の内臓を別売している。特に好まれているのは胃袋である。ていねいに洗って湯通しし冷水に落として表面の汚れなどを徹底的に流す。水分をよくきり薄切りにする。酢みそなどで食べる。
    バショウカジキの内臓の煮込み 胃袋、腸などは汚れをていねいに流しておく。湯通しして冷水に落として汚れをていねいに落とす。水分をよくきり、酒・水でことこと柔らかくなるまで煮る。砂糖・醤油で味つけしてまた煮込む。牛などの内臓よりも柔らかく、また魚らしい味わいも楽しめる。
    バショウカジキひげの湯引き 鰓蓋の下の部分(鰓軟条骨)で、意外に身がたっぷりついている。「ひげ」は適当に切り、水分をよくきり塩ゆでにする。おか揚げにして冷ます。このとき団扇などで冷ましてもいい。適当にほぐして酢みそなどを添える。
    バショウカジキのみそ汁 腹骨やかまなどのあらを集めて置く。ゆどうしして冷水に落として汚れなどを流す。これを水から煮出してみそを溶く。味がもの足りなかったら化学調味料を加えてもいい。ややさっぱりした味わいながら美味。
    バショウカジキやばたの塩焼 背鰭下の鰭筋は「やばた」とか、「ハーモニカ」と呼ばれている。脂があり独特の食感が楽しめる。「やばた」に振り塩をする。1時間ほど寝かせて表面に出て来た水分を拭き取る。これをじっくり焼き上げる。鰭担骨を取りながら食べると中から液化した脂が染み出してくる。非常に美味。
    バショウカジキの幽庵焼 切り身に振り塩をする。少し置き表面に出て来た水分を拭き取る。これを酒・みりん・醤油同割りの地につけ込む。漬け地はお好みで甘いのが好きならみりんを多くし、また砂糖を加えてもいい。1日以上寝かせてじっくり焦がさないように焼き上げる。
    バショウカジキの塩焼き 内臓を包み込んでいる部分を使う。振り塩をして1時間ほど寝かせて表面に出て来た水分を拭き取る。これをじっくり焼き上げる。腹の身は焼いても柔らかく脂の甘さがある。
    バショウカジキプロペラの塩焼き 尾鰭のつけ根にある三角形の部分をプロペラという。この部分を切り取ってもらい、振り塩をする。1時間以上寝かせてじっくり焼き上げる。焼くとほどよく締まり、食感的には鶏肉のようである。非常に美味。

    好んで食べる地域・名物料理

    福井県、島根県、鹿児島県
    バショウカジキ南蛮バショウカジキ南蛮 宮崎県日南市のスーパーに「南蛮用」とあったパックがあった。買い求めていたオバチャンに聞くと、「チキン南蛮」をマグロ(キハダマグロらしい)とかカジキ(なんでもいいようだ)とかで作るのだという。切り身に小麦粉をまぶして卵の白身をくぐらせる(この白身の工程はしなくてもいいとのこと)。揚がったらタルタルソースとチキン南蛮の素(タレ)をかける。あっさりして食べやすく、ご飯にも合う。

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/津曲商店(鹿児島市)、合同水産(福井市)、福井中央魚市株式会社、紙安(石川県金沢市)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『魚類学 下』(落合明、田中克 恒星社厚生閣)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)

    地方名・市場名

    アキタロウ[秋太郎]
    場所鹿児島県 備考鹿児島県では秋にとれるので。 
    カンヌシ[神主]
    場所富山県氷見市藪田漁業協同組合 
    サス
    場所富山県氷見市、福井県福井市福井中央魚市 
    ザス コザス[小ざす]
    場所福井県福井市福井中央魚市 サイズ / 時期小型 
    ハイオ
    場所長崎県 
    バレン
    場所富山県氷見市藪田漁業協同組合、石川県石川中央市場、福井県福井市福井中央魚市、京都府舞鶴市舞鶴魚市場 
    ヤバタ
    場所鹿児島 部位背鰭下の鰭筋 
    ヒゲ
    場所鹿児島 部位鰓条骨 
  • 主食材として「バショウカジキ」を使用したレシピ一覧

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