利根川周辺の漁
ウナギ鎌漁 03
千葉県香取郡小見川町
篠塚秀一さん、根本豊治さんの
船にのって利根川へ
2003年10月16日
目次市場魚貝類図鑑
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↑下りウナギは泥に潜って暮らすためだろうか? 頭がつんととんがっている。この泥にいるウナギがいちばんうまいのであるという

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やっと群れを発見

 昼近くなって、ぽーんと篠塚さんがミカンを投げてくれる。「どうだ、大変な漁だっぺ。これでなーんもとれないって日があんだぞー」。
 船は河口堰のすぐ上流、19番の茨城県よりでかまを沈め、ここで1時間ほどがんばるがまったくウナギはこない。また上流に向けて走らせて今度は22番を越えると、ここに4、5艘のウナギ鎌漁の船が流している。
「あれが最長老の笹川の漁師だ」とすれ違うのに手を挙げる。何本あげたのかと聞いているようだが、白い手ぬぐいでほおかぶりした、その漁師が78歳であるなんてとても思えない。そのうちに下流から何艘かの船が上ってくる「根本だ」というので下流を凝視するが、やっと船らしい物体が見えたときに「違った、違ったっぺー。茨城の船だ」とその船が船団に加わる。
 千葉の船と、茨城の船は、漁をするときの流し方で見分けがつく。千葉の船は上流から下流に、下流から上流にまっすぐに流していくが、茨城の船は下りながらゆっくりと円を描くように流していく。
 この22番の上で流すがここでもウナギはこない。少し下ってかまを入れるやいなや「がつんときたな」といいながら800グラムを超えそうな大物が上がり、上がるまもなくまたかかりと、一回の流しで3本も来た。流しを変えても順調にウナギがかかってくる。ほどなく根本さんも上ってきて、篠塚さんと相前後して流し始める。船がすれ違いざまに根本さんに、大物が上がるのが見える。遠ざかってまた根本さんが上げる。ウナギのいるポイントを見つけたようだ。
 1時になってエンジンを止めて昼食をとる。エンジンを止めてもまったく船は流されない。河口堰が開いて、流れを止めていないにもかかわらず船が流れないのは不思議でたまらない。満ち潮なのだろうか? この大利根川の流量は河口堰ができ、また多目的な水利用のために年々減少している。
 ポカポカと暖かく眠くなるような利根の秋、茨城県側のすぐ目と鼻の先には鹿島臨海工業地帯の煙突群。煙はゆっくりと北になびく。
 昼食後は根本さんの船に乗り移る。根本さんの船の方がやや大きいようだ。生け簀を見せてもらうと、10匹前後の獲物が入っていて、かなりの「ぼっか(大物)」が混ざっている。お昼は2時間ほどの漁で根本さんは3匹ほどのウナギを上げた。
 午後2時を回って、あれほどにとれたウナギのあたりがまったく途絶えた。「退屈だぺー、飽きただろ」となんども聞いてくれる根本さんに、首を横に振りつつふーっと眠りに引き込まれそうになる。
「もおとれないっぺー」と根本さんが笑う。鎌を上げてほんの少し走ると黒部川への水門につく。根本さんは漁の間に胴の間にたまった葦の茎、カラスガイの貝殻、たくさんのビニールを片づけて水門に入る。水門のすぐ上流には小見川大橋が見える。2艘まとめて水門に入り、船通しを抜けると、ほどなく北総漁港の船泊に帰り着いた。



 篠塚さんたちは、漁の後もいろいろ仕事が山積みである。ウナギを活けてあるかごの掃除、中に弱っているウナギがいないかのチェック。
 また、この天然ウナギを割いて白焼きにして地方発送もする。その手際のよさは水際立っており、「これが60歳のじっさまか?」とビックリさせられる。

●さてこの北総漁協の天然ウナギは、通販で購入できる。時期は9月上旬から12月上旬まで。ただし漁の次第によってはいつもあるというものではない。
なおこの北総漁協天然ウナギ白焼きは1キロ4000円から
詳細は、小見川町産業振興課 TEL0478-82-1111

篠塚さんの漁姿。船縁をテコの支点にしての独特の構え
午後は根本さんの船に乗る。根本さんはまだ50代で、長年の漁のために肩が著しく盛り上がる
根本さんのウナギ鎌にはたくさんのヒモの輪があり、重りは2個吊す。この写真の時点であたりを感じている
重りをはずして、ゆっくり川底から上げる
鎌をゆっくり水面まで持ち上げる
水面に弧を描くように胴の間に持ってくる
の間にこつんとウナギを落とす。胴の間にはスーパーの袋、塩化ビニールのパイプなどがいっぱいたまる。このスーパーの袋が鎌に当たるとウナギそっくりの感触があり根本さんでも見分けがつかないと言う
下りウナギの特徴であるとんがった頭をした獲物は800グラム



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