タヌキメバル


40cm前後になる。体は白色、または桃色。涙骨に円形の突起はあるが顕著な棘はない。全身に斑紋があり横縞の太い帯がある。体側には地の色の濃い部分と薄い部分が帯状になっている。尾鰭(おびれ)の後縁(いちばん端)に白い部分がある。コウライキツネメバルと比べると体高が低い。

クロソイ、まぞい(キツネメバル、タヌキメバル)、ムラソイは似ている

魚貝の物知り度 ★★★★
知っていたら達人級
食べ物としての重要度 ★★★
一般的(流通量は普通)
味の評価度 ★★★★
非常に美味
分類
顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目カサゴ亜目メバル科メバル属
外国名
Jacopever
学名
Sebastes zonatus Chen and Barsukov, 1976
漢字・学名由来

漢字 狸目張 Tanukimebaru
由来・語源 タヌキメバルの方がキツネ顔に近く、キツネメバルがどちらかというとタヌキ顔に近い。全体に意味不明だが、タヌキメバルと見分けがつかない。タヌキキツネのたぐいで狐狸という意味合いか?
 『図鑑 北日本の魚と海藻』(尼岡邦夫、中谷一宏、籔凞、山本弘敏 北日本海洋センター 1983)に標準和名、タヌキメバルがある。
デーデルライン採取の19世紀のキツネメバルの模式標本との違いは体色でしかなく、新種記載が認められた経緯が不明。

過去のソイ属、メバル属の変遷
ソイ属(1938)→ クロソイSebastes schlegelii Hilgendorf, 1880、キツネメバルSebastes vulpes Döderlein, 1884、コウライキツネメバルSebastes ijimae (Jordan & Metz, 1913)、ゴマソイSebastes nivosus Hilgendorf, 1880、シマゾイSebastes trivittatus Hilgendorf, 1880、タケノコメバルSebastes oblongus Günther,1880、ムラソイSebastes pachycephalus pachycephalus Temminck and Schlegel,1843、ヨロイメバルSebastes hubbsi (Matsubara, 1937)、コウライヨロイメバルSebastes longispinis (Matsubara, 1934)
メバル属クロソイ亞属(1955)→/ オウゴンムラソイSebastes pachycephalus nudus Matsubara, 1943、ホシナシムラソイ(シノニム)、アカブチムラソイ(シノニム)を追加
『日本産魚類検索』(岡田彌一郎、松原喜代松 三省堂 初版1938)
フサカサゴ科メバル属 タヌキメバル追加。Sebastes zonatus Chen and Barsukov, 1976。『図鑑 北日本の魚と海藻』(尼岡邦夫、中谷一宏、籔凞、山本弘敏 北日本海洋センター 1983)、『日本産魚類大図鑑』(益田一、荒賀忠一、尼岡邦夫、上野輝弥彌、吉野哲夫 東海大学出版会 1984)

地方名・市場名

概要

生息域

海水魚。水深50〜175メートルの岩礁域。
北海道〜山形県、富山椀、石川県能登半島、若狭湾、兵庫県香住〜島根県の日本海沿岸。
北海道から、岩手県、宮城県、[東京湾千葉県富津]、相模湾、土佐湾。
朝鮮半島南岸・東岸

生態

水深50〜100メートルの岩礁域に生息。
卵胎生。
交尾期は秋から冬。出産期は初夏。
マゾイ(タヌキメバル・キツネメバル) 涙骨(目の下の骨)にはっきりした棘がない
クロソイ 涙骨(目の下の骨)にはっきりした棘がある

基本情報

日本各地の浅場に生息している。北海道南部ではキツネメバル、タヌキメバルとともに「マゾイ」。この2種は2022年にいたっても種として曖昧で、形態学的には理解できない点が多い。本、タヌキメバルは新参和名の可能性すらあると思っている。以下、マゾイとして。
関東などでも北海道での呼び名を使うことが多いので「マゾイ」と呼ぶこともある。ソイの代表的なもので、またもっとも味がよいと思われている。消費地では評価が低く、庶民的な値段の魚となっている。
白身魚で、クセがなく、上品な味わい。もっと評価が高くなってもよい。

水産基本情報

市場での評価 北海道ではソイ類でもっとも高いもの。関東ではソイ類は総てやや安値安定。
漁法 釣り、刺し網、定置網
主な産地 北海道、岩手県

選び方・食べ方・その他

選び方

触って高いもの。退色していないもの。鰓が鮮紅色のもの。

味わい

旬は不明。
出産期は不安定ながら年間を通して味がよい。
白身魚で血合いもほとんど色がなく、ほどよく繊維質。
煮る、焼くなどして身離れがいい。
汁にしてうまいだしが出る。

栄養

危険性など

食べ方・料理法・作り方

タヌキメバル(マゾイ)の料理法・レシピ・食べ方/汁(みそ汁)、煮る(煮つけ、鍋)、生食(刺身、焼霜造り)、揚げる(唐揚げ)、焼く(塩焼き)
タヌキメバルのみそ汁 ちょっと贅沢だが、いちばんうまい食べ方はみそ汁だと思っている。とにかく汁がうまいし、皮も骨際の身もすべて食べられる。基本的な作り方は水洗いして適当に切り、湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよく拭き取り、水から煮出してみそを溶くだけ。

タヌキメバルの煮つけ うまいだしが出るのと、白身で味わい深いところが煮つけに最適。水洗いして小さいものは丸のまま、大きいものは鍋に合わせて切る。これを湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、酒・しょうゆ・水で煮上げる。みりん、砂糖などで甘味をつけてもいい。味がある割りにあっさりした後味で食べ飽きない。
タヌキメバルの酒蒸し 5月の固体は脂がのって、身がしまっていた。刺身でもいけそうなのを、そのまま蒸し上げてみた。水洗いして水分をよくきり、肝と胃袋だけど戻して強めの振り塩をする。少し寝かせて出て来た水分を拭き取り、器に入れて酒を振り、強火で15分ほど蒸し上げる。蒸し時間は大きさによって変わる。身がふっくらとして柔らかく甘みがあって美味。
タヌキメバルの刺身(大型) 大型で鮮度がよければ刺身にして美味だ。水洗いして三枚に下ろして皮を引き刺身に切る。血合いが美しく、身に透明感があり、食感もいい。実に秀麗な味わい。飽きが来ないので、ついつい箸が伸びる。
タヌキメバルの刺身(小型) 活魚を見つけて刺身にしてみた。締めて当日なので食感が強い。三枚に下ろして腹骨をすき血合い骨を抜き、皮を引く。薄いそぎ造りにしてみた。上品な味わいながら、ほんのりと甘味があって非常にうまい。
タヌキメバルの唐揚げ 野締めを唐揚げに。水洗いして適当に切り、水分をていねいに拭き取る。片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げにした。中骨までとはいかないが、捨てる部分少なく、食べられる。皮目が香ばしく、身は鶏肉のようにしまって甘味がある。
タヌキメバルの塩焼き 小振りを塩焼きにしてみた。水洗いして振り塩をして1時間以上置く。これをじっくり焼き上げる。時季によって強く締まるもののイヤミのない味わいだ。

好んで食べる地域・名物料理

ソイでいちばん上 北海道ではソイ類のなかでは1にマゾイ(タヌキメバル、キツネメバル)、2にシマソイ、3にクロソイという。

加工品・名産品

釣り情報

歴史・ことわざなど

地方名・市場名

マゾイ
場所北海道室蘭市、青森県むつ市大畑、山形県酒田市酒田漁港、鶴岡市由良漁港、山形県漁業協同組合 
ゴマバチメ
参考20240227市場 場所新潟県佐渡・新潟市 
ツヅノメ
場所新潟県糸魚川市 
ツヅラメ
場所新潟県糸魚川市周辺 
モンコク
場所福井県 
ツヅリメバル
場所鳥取県境港 
ソイ ドコ
場所山形県酒田市酒田漁港、鶴岡市由良漁港、山形県漁業協同組合 
ツンノメ
場所石川県七尾市七尾魚市場 
ソイ スイ キツコオホゴ スズノメバチメ[鈴の目鉢目] ツズノメバチメ[鈴ノ目鉢目] ツヅノメバチメ タケノコメバル バドウ
備考ソイというところとスイというところがある。※キツネメバル型など混同している。