ヤガラは鞴型魚食い

奇っ怪な姿さは市場などでも注目のまと


国内で揚がる食用魚でもっとも不思議な姿をしているのが、棍棒のような形をしたアカヤガラとアオヤガラだ。両種は見わけがつかないくらいに似ている。
両種を釣り上げた経験がある方ならわかると思うけど、アタリが変だ。魚が来ているのか、それとも隣とお祭りしているのか、それともジャミなのかわからない。なんとなくスーッと引き込まれるようなので、とても魚のアタリとは思えない。
そのスーッと感じる時間が長いため、少しきき合わせると、抵抗して強く吸い込もうとするのがわかる。
これこそが典型的なヤガラのアタリである。
少し待って合わせると釣れていたりする。

体の2分の1が食う道具となっている


口が管状で非常に長く、先にある唇というか開口部がでかい。この管の中には返しがない。試しに小魚を放り込むと、するりと奥に入っていく。
ヤガラは小魚に食いつくのではなく吸い込むのである。
返しがないということは逃げられる可能性も高そうだが、たぶん吸引力が非常に強いために小魚は戻れないのだと思う。
上から見ると喙(くちばし)があり、頭部から腹部にかけて長いヘラのような骨が左右にあり、その内側に空間がある。
この左右のヘラの骨を体の正中線に向かってペンチをつかんで握るように押したり離したりすると、管の中の空気が動いているのがわかる。
空気だからスーハースーハーと穏やかな感じだけど、海水だと強い流れを引きおこし、小魚は胃袋の方に吸い込まれるのだと思う。
ヤガラは、長い喙だけではなく、その後ろの部分も魚を食べるための道具となっていて、体の2分の1(最後尾のヒモ状の部分を除く)はエサを取るための道具そのものなのだ。

筋肉隆々なのは逃げ足のためでもあるし食うためでもある


構造的には民具の鞴(ふいご)そのものである。鞴は火を起こすときなどに使う道具で、袋の先に細い管(口)をつけ、袋の上下もしくは左右に板状のものを張り付けたもので、細い管のつけ根が支点となり、板を押したり戻したりして、竈(かまど)にくべたまきなどに風を送る。ヤガラは海水を吹き出すのではなく吸い込むために体が鞴と逆の構造となっているのだ。
防波堤釣りでサバっ子などをつけて垂らすと、この吸い込むところが間近で見られるが、やはり頭部の後ろの部分が膨らんでいるのがわかる。鞴の板のような骨を急速に左右に開き袋を膨らませることで魚吸い込んでいるのだ。
ちなみにヤガラ科の魚は非常に運動能力が高く、ときどき海面をジャンプすることがある。
全身が鍛え抜かれた筋肉といったむきむきの魚なのだ。


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