アカヤガラ

Scientific Name / Fistularia petimba Lacepède, 1803

アカヤガラの形態写真

2m SL ・4.7kg前後になる。非常に細長く断面は丸く、棒状。頭部は身体の3分の1ほどもある。全身が赤みを帯びる。背正中線上に鱗がある。尾柄部の側線鱗に後方棘があり、触ると引っかかる。尾鰭の中央軟条が糸状に伸びる。
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2m SL ・4.7kg前後になる。非常に細長く断面は丸く、棒状。頭部は身体の3分の1ほどもある。全身が赤みを帯びる。背正中線上に鱗がある。尾柄部の側線鱗に後方棘があり、触ると引っかかる。尾鰭の中央軟条が糸状に伸びる。2m SL ・4.7kg前後になる。非常に細長く断面は丸く、棒状。頭部は身体の3分の1ほどもある。全身が赤みを帯びる。背正中線上に鱗がある。尾柄部の側線鱗に後方棘があり、触ると引っかかる。尾鰭の中央軟条が糸状に伸びる。背正中線上に鱗がある。尾柄部の側線鱗に後方棘があり、後方からなぞると引っかかる。2m SL 前後になる。非常に細長く断面は丸く、棒状。頭部は身体の3分の1ほどもある。赤身を帯びる。尾柄部の側線鱗に後方棘があり、触ると引っかかる。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★
      がんばって探せば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区棘鰭上目スメグマモルフ系トゲウオ亜系トゲウオ目ヨウジウオ亜目ヤガラ科ヤガラ属

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    外国名

    学名

    Fistularia petimba Lacepède, 1803

    漢字・学名由来

    漢字 赤矢柄、赤簳魚 Akayagara
    由来・語源 ヤガラは一般的な呼び名だが、アカヤガラは市場でアオヤガラtp区別するための呼び名だ。アカヤガラの本が断然高いので間違っては大変だ。
    簳(矢の棒状の長い部分)のように細長い魚で、赤いという意味。
    〈簳魚(やがら) 簳魚の形は鱵(さより)に類していて長く丸くて節幹(やがら)のようである。それで俗に簳魚という。喙は長くて上下均しい。細鱗は紋のようで微赤く、尾には岐がある。岐の中に紅糸一条が通っている〉『和漢三才図会』(寺島良安 正徳3年/1713 東洋文庫 平凡社)
    〈やがら 西国にふゑふき綱目の鞘魚(せうぎょ)なり、王氏囊苑(王氏画苑)に戴帽魚(たいぼうぎょ)なりという〉。『魚鑑』(武井周作 天保辛卯 1831)
    Synonym
    Fistularia serrata Cuvier, 1816
    Fistularia villosa Klunzinger, 1871
    Lacepède
    Bernard Germain Lacepède(ベルナール・ジェルマン・ド・ラセペード 1756-1825 博物学者、音楽家。フランス)はビュフォン(Georges-Louis Leclerc de Buffon 博物学者。リンネとは違った配列を試みた)の後継者。
    魚鑑
    『魚かゞみ』(著者/武井周作、画/一勇斎国芳)。天保2年(1831年)。魚貝類の和漢書(事典)。武井周作は江戸日本橋長浜町の蘭方医で本草家。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。沿岸〜沖合いの200mよりも浅場。
    北海道・[岩手県宮古]〜九州の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、瀬戸内海、屋久島、沖永良部島、沖縄。
    東シナ海大陸棚域、台湾、福建省、広東省、インド・西太平洋域、ハワイ諸島、大西洋。

    生態

    産卵期は冬〜春。
    沖合のやや浅い岩礁域に生息。沖縄などではより深場。
    小魚などを狙う肉食魚。
    定置網の水揚げなどのときによく飛ぶ。

    基本情報

    北海道から熱帯インド洋・西太平洋に広い生息域を持つ。日本各地で水揚げがあるが、房総半島以南で水揚げが多い。非常にユニークな姿なので市場などでもとても目につく魚である。
    関東などでは古くから椀ものなどに使われる上等な魚とされている。当然、割烹料理などに使われるもので、一般的に知られている魚ではない。
    刺身、焼きものなども味がよいが、歩留まりから考えると超高級魚といえる。
    田中茂穂は「薬用となるとの評判が多い」と書くが科学的な根拠はないと思われる。
    珍魚度 珍しい魚ではない。ただやや高級であるのと、たくさんとれる魚ではないのでがんばって探さないと手に入らない。

    水産基本情報

    市場での評価 入荷は少ないが珍しいものではない。歩留まりが悪く、高級魚というよりも超高級魚といえそう。
    漁法 釣り、定置網
    主な産地 九州など

    選び方

    赤味の強いもの。触って硬いもの。

    味わい

    旬は秋から冬。比較的年間を通して味が落ちない。寒くなると顕著に脂を蓄えるということはなく、むしろ煮たり焼いたり、刺身にすると豊潤だと感じる。うま味も豊かになる。
    鱗は皮と一体化して取れないので体側の鱗をこそげ取り、全体にもこそげ取る。皮は薄いが硬い。頭部に近い方の骨は非常に硬い。
    やや赤みがかった白身で熱を通しても硬く締まらない。身離れがよい。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    アカヤガラの料理・レシピ・食べ方/汁(鍋、潮汁、みそ汁、吸もの)、煮る(煮つけ)、生食(刺身、焼き切り)、焼く(塩焼き、幽庵焼き)、揚げる(唐揚げ)
    アカヤガラの鍋アカヤガラの水炊き(ちり) 鱗がほとんど気にならず、水洗いしてそのまま使える。上質の白身で煮ると適度にしまり、甘味がある。皮や骨からうまいだしが出る。鍋ものにして美味な条件が総て揃っている。
    水洗いして肝などを取り分けておき適当に切る。頭部に近い方の骨は非常に硬いがいいだしがでるので、必ず使いたい。湯通しして冷水に落とし、表面のぬめりなどを撮る。これを昆布だしに酒塩で煮ながら食べる。ポン酢でも柑橘類と醤油でもお好みの物をつけて食べる。
    身と皮は非常に上品でいながら締まっており、甘味と微かな脂を感じる。食べ飽きない。頭部の骨周りの身は別格のうまさである。いいだしが出るので終いに雑炊とか麺をいれるとかするといい。

    ヤガラの潮汁アカヤガラの潮汁 刺身などで残った中骨の部分(小型は単にぶつ切りにしても)を湯通しし、冷水に落としてぬめりなどを取る。水分をよくきり、昆布だしで煮だして酒、塩で味つけする。淡泊で上品な味の中に甘味とうま味が満ちている。身をせせり食べてもおいしい。

    ヤガラのお吸い物アカヤガラの吸いもの 本種は昔から椀種の魚とされてきた。身質がよく嫌みがないためだと思う。椀種のつゆをつくる。昆布だしをとり、酒塩で味つけをする。下ろして、体の後ろの方を3枚に下ろし、内側から切れ目を入れる。これを湯通しして冷水に落とす。椀の汁の中で少し煮て、取りだし、椀の中にいれて新しい汁を張る。

    ヤガラの煮つけアカヤガラの煮つけ 大振りのアカヤガラの前半中骨の周辺を煮たもの。もちろん全身をぶつ切りにしてもいい。これを湯通しして冷水に落としてぬめりなどを流す。よく水分を切り、水(昆布だしでも)と酒・しょうゆ(酒・みりん・しょうゆでも単に塩味でもいい)味で煮る。煮ても硬く締まらず、あっさりしたなかに甘味がある。ゴボウ(魚の臭い消しにもなる)、焼きねぎ、うどなどと煮てもうまい。

    ヤガラの刺身アカヤガラの刺身 水洗いして3枚に下ろす。皮を引いて薄く切りつけていく。淡い味わいなので、薄作りをたっぷりとってわさび醤油とかポン酢で食べる。薄く造るのは比較的上品な味わいの中からうま味を感じやすくするためである。肝などを添えて醤油に溶かし込んで食べてもおいしい。
    ヤガラの焼き切りアカヤガラの焼き切り 3枚に下ろして腹骨や小骨を抜く。皮目をあぶり、急速冷凍の場所で冷ます。身が落ち着いたら適宜に切る。あぶり、氷水であら熱をとってもいい。皮目のうま味を楽しむもので、湯引きして肝や内臓も一緒に。

    アカヤガラの干もの(2日干し) 塩焼きにしても十分にうまいが、皮目の風味をもっと強く感じられればと思って干してみた。
    小骨が少ない真ん中あたりを使った。3枚に下ろして立て塩に10分前後つける(気温や大きさで漬ける時間は変わる)。今回は強めに干し上げてみた。丸2日間なので表面は硬く感じるくらいである。焼き上げると非常に香り高く、独特の風味が皮から感じられる。身は反対にふっくらと豊潤になり、肉汁がにじみ出てくるほどだ。

    ヤガラの塩焼きアカヤガラの塩焼き 頭部や尾に近い部分は小骨が多く、身が少ない。これに振り塩をしてじっくりと焼き上げる。皮目に独特の甘味をともなう香りがあり、うま味も強い。身は適度に繊維質で身離れがよく甘みがある。
    ヤガラの祐庵焼きアカヤガラの幽庵焼き 小振りのものを水洗いして、水分をよく切る。これを酒、みりん、しょうゆを同量合わせた地に数時間つけ込んで焼き上げたもの。みりんを多くして甘くしてもいい。気温によって漬け込み時間を変える。
    アカヤガラのみりん干し 非常に小振りのものは頭部と内蔵を取り、適当に切る。これをみりん・少量の砂糖・しょうゆの地につけ込んで干す。甘いのが嫌いなら酒・しょうゆ、酒・しょうゆ・みりん(祐庵地)にしてもいい。甘いと酒の肴にもご飯のおかずにも向く。
    アカヤガラの天ぷら 皮に独特の風味がある。微かだが甲殻類のエビのような風味を感じる。比較的体の後ろの方を3枚に下ろす。水分をよくきり切れ目を入れて小麦粉をまぶし、衣をつけて揚げる。皮目の香ばしさ、独特の風味があり、身は豊潤である。中骨も素揚げにして添えたがとてもおいしい。
    ヤガラの唐揚げアカヤガラの唐揚げ 小振りのものは、唐揚げにするといい。頭部、尾の部分を適宜にぶつ切りにして水分をていねいに拭き取る。片栗粉をまぶしてじっくり二度揚げにする。揚げると皮目に独特の香りが立ち、身はほどよく繊維質で適度に締まる。

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    好んで食べる地域・名物料理

    日本各地

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    加工品・名産品

    干物 三重県尾鷲市。岩田昭人さんから。

    釣り情報

    沖合の岩場の上などでイサキやマアジ釣りをしていると釣れた魚を加えて上がってくる。もし専門に狙うならルアーや生き餌がいい。

    歴史・ことわざ・雑学など

    古くはアオヤガラとともに乾燥させて腎臓病や喘息(ぜんそく)の薬にされた。古乾物は子供の寝小便にきくとされた。〈膈噎(かくいつ 喉や胸のつまる病)を患っている人は、この魚の嘴を用いて飲食すれば治るという〉。寺島良安は実際にやったがきかなかったらしい。『和漢三才図会』
    喉に刺さった魚の骨を取る アカヤガラの喙(吻)を乾燥して、神棚に保存しておく。魚の骨が喉に刺さったとき、乾燥した喙をストローのようにして花柴を生けたいた花瓶の水を飲む。すると魚の骨がとれる。[佐藤厚さん 長崎県雲仙市小浜 2023/12/10]

    阿漕の平次 「あこぎ」の語源は〈旧伊勢国安濃郡の阿漕ヶ浦は伊勢神宮への供える魚をとるために禁漁だったが、ある漁師がたびたび密漁しとらえられた〉。これがために「同じことがたびかさなること」、「なんども行うことによって広く知れ渡ること」、転じて「際限なくむさぼる」、「あつかましい」、「しつこい」の意味になる。たびたび密漁してとらえられた漁師の名を平次といい簀巻きにして海に沈められた。(古浄瑠璃『あこぎの平次』) 
    この平次の密漁を病気の母のための孝行として、その笠をかたどって作られたのが三重県津市の「平治煎餅」との由来がある。このときの魚がヤガラだとしている。

    参考文献・協力

    協力/勘網丸・大楠漁協(神奈川県横須賀市)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)

    地方名・市場名

    フエフキ[笛吹き]
    場所山口県下関、鹿児島 参考文献 
    タイホウギョ[大砲魚]
    場所愛媛県川之江 参考文献 
    アカヤガラ
    場所東京、神奈川県江ノ島・小田原、三重県志摩市志摩町和具 備考標準和名 参考聞取、日比野友亮さん/和具の方言 
    ヒーフチャー[火吹魚?] ヒフチャア
    場所沖縄県 参考文献 
    フエイオ[笛魚]
    場所福岡県志賀島 参考文献 
    アカヤグラ
    場所静岡県稲取 参考静岡県水産・海洋技術研究所・伊豆分場 
    タイホオ[大砲]
    場所鳥取県米子 参考文献 
    アモ
    場所鹿児島県 
    フュクシナガリ
    場所鹿児島県奄美大島安脚場 参考文献 
    フーグシ
    場所鹿児島県奄美大島笠利 参考文献 
    フェンド
    場所鹿児島県屋久島安房 参考川東繭右さん 
    ヤガラ
    場所宮城県、福島県、東京都、神奈川県、徳島県海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』 
    ヤカラ
    参考文献より。 
  • 主食材として「アカヤガラ」を使用したレシピ一覧

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