静岡県静岡市清水・魚いさ
イルカのタレ
2004年5
月13日
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イルカの干物であるタレは真っ黒であるが、しょうゆなどは使っていない。この真っ黒な色は干すうちに自然にでてくるもの
普通の魚屋さんである「魚いさ」の人気商品はお総菜類。マグロのフレークや卵焼きなどどれもいい味です
 静岡県の沼津魚市場で底引きをはじめ様々な魚を見て、清水に来た。ここでは東海大学博物館の毎原先生に駿河湾の生物のことなど教えを受けたのだけれど、清水に来たもう一つの目的がイルカのことを調べるということ。
 これは蒲原の魚屋さんでイルカの「たれ」という干物のことを教えてもらって、これは静岡県各地、特に伊豆や清水などで作られている。その上、大槌町でイルカの解体、荷主でもある、「まる高」に聞いてもイシイルカ、リクゼンイルカの出荷先は沼津、清水が多いとの話である。
 清水でイルカを食べるようになったのはいつ頃のことだろう? 人づてに聞くと昔清水にはイルカの解体所があって、伊豆の追い込み漁などでとったイルカがかなりの量、もたらされた。戦前はもちろん、戦後においても我が国の食糧事情は安定した状態にはなかった。そんなときにイルカは貴重な食料(タンパク源)であったのは言うまでもなく、解体された肉は清水周辺では在り来たりな日常食として売られていただろう。

 美保から清水市街に入り魚屋を探す。なんどもなんども見知らぬ街角を曲がり見つけたのが万世町の「魚いさ」である。間口は2間ほどだろうか、中に入ると奥が深い建物であることがわかる。店先に冷蔵陳列台があるのは魚屋や肉屋さんならではの造り、奥にタイル張りの大きな冷蔵庫がある。
 店の日よけをくぐり「イルカを置いていますか」というと、すぐに出してくれたのが真っ黒な「たれ」である。やっぱりあったなと、怪訝な表情のご主人(大石功さん)にイルカのことを調べていることなど、単刀直入に話をすると、奥から女将さんも出てきていろいろ教えていただいた。
 当日、出してくれた「たれ」の原料は「ツバメイルカ」であるという。このイルカのことを聞いてみるとどうやらイシイルカのようだ。確かに、腹の部分が白く背が真っ黒だから「ツバメイルカ」となってもおかしくない。そういえば沼津では同じものを「スズメイルカ(イシイルカ)」というがこちらは意味不明である。この「ツバメイルカ」の身を塩水につけて、干しただけのいたって単純な加工品であるが、干す課程で真っ黒に変色する。

 この「ツバメイルカ」を季節(秋から冬)に仕入れて、ときには煮つけ用に、また焼き肉用に売るのだという。
「魚いさ」では、このイルカの煮つけは自家製を秋から冬にかけて店にも出している。これなど清水におけるイルカの味わいを知る格好のもの。秋が待ち遠しい。

 さて今回、突然おじゃました「魚いさ」であるが、典型的な町の魚屋さんである。清水は魚処であるから新鮮な魚はもちろん、様々なお総菜を自家製して売っている。当日は自慢であるという卵焼きも買って帰ったのであるが子供達が夢中で食べた。また清水ならではのマグロの煮つけや酢で締めたものもある。私の清水土産は「魚いさ」で買うことに決めた。

 帰宅後さっそくイルカの「たれ」を食べてみた。
「まさにレバー」とはいちばんに受けた印象。ところが2切れ3切れ食べる内に明らかに特有の獣臭さが鼻に抜ける。我がサイトを見てくれている方に「イルカ特有の臭いがあるのだけれども、それを好きになるとたまらない」というメールをいただいたが、それがこの匂いだろうか? 最初はこの臭いに閉口したものの個性の強い伊豆七島の青ヶ島産「青酎」とあわせて肴とするうちに結局買ったきたものを全部食べてしまった。特有の獣臭さはあるもののレバーのようなコクと旨味があって臭いも旨さを引き立てるというか、プラスに働いているように思える。「たれ」を食べるなら芋焼酎かウイスキーが合いそうだ。
2004年5月の段階では岩手県大槌町の「まるたか海産」、蒲原、清水などでイルカのことを調べていますが途上です。特に「まるたか海産」の情報は非常に大量でしかもまとめるに私のもっている知識能力が追いつけないでいます。イルカのことなど情報がありましたらお寄せください。



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