タカアシガニ

Scientific Name / Macrocheria kaempferi (Temminck,1836)

タカアシガニの形態写真

脚を広げると4m近くになる。頭部は小さく、脚は細く華奢。雄は甲に対して足が長く雌よりも大きくなる。[雄。徳島県海陽町鞆浦漁港]
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脚を広げると4m近くになる。頭部は小さく、脚は細く華奢。雄は甲に対して足が長く雌よりも大きくなる。[雄。徳島県海陽町鞆浦漁港]脚を広げると4m近くになる。頭部は小さく、脚は細く華奢。雌は甲に対して足が短く、雄よりも小さい。[雌。千葉県竹岡産]
    • 魚貝の物知り度

      ★★
      これは常識
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    節足動物門甲殻上綱軟甲綱(エビ綱)真軟綱亜綱(エビ亜綱)エビ上目十脚目短尾下目クモガニ科タカアシガニ属

    外国名

    学名

    Macrocheria kaempferi (Temminck,1836)

    漢字・学名由来

    漢字 高足蟹、高脚蟹
    由来・語源 足の長いカニという意味。種小名の「kaempferi」はケンペルのこと、「Macrocheria」は巨大なハサミを意味する。

    Temminck
    コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。

    地方名・市場名

    バンバガニ
    場所神奈川県三崎 参考『動物學雑誌二十五巻三百一號』(大正二年十一月号 1913) 谷津直秀 
    タカアシガニ
    場所神奈川県小田原市 参考『動物學雑誌二十五巻三百一號』(大正二年十一月号 1913) 谷津直秀 
    メンガニ[面蟹]
    場所静岡県御前崎 備考静岡県御前崎ではメンガニ(蟹)と呼び、魔よけにしていた。 
    シビトガニ[死人蟹]
    場所房州(千葉県)、静岡県沼津市 参考『動物學雑誌二十五巻三百一號』(大正二年十一月号 1913) 谷津直秀、聞取 
    ヒガンガニ[彼岸蟹]
    場所徳島県海部郡海陽町宍喰・鞆浦 備考春のお彼岸頃になると浅場のヒラメ刺し網などにかかるため。 
    ヘイケガニ[平家蟹]
    場所愛知県西浦 

    生息域

    海水生。
    岩手県釜石沖から九州南岸の大平洋沿岸、九州西岸、沖縄。台湾。
    水深250メートルから650メートルに棲息。
    日本海、瀬戸内海にはいない。

    生態

    春の産卵期には100メートルよりも浅い場所、ときに水深30メートルくらいの場所に移動してくる。
    雄の方が雌よりも遙かに大型になる。

    基本情報

    足の長さまで含めると4メートル近くにもなり、世界最大のカニ。17世紀ドイツの博物学者ケンペルが、巨大なハサミを静岡県由比で見つけてヨーロッパに紹介したことは有名。テミングがシーボルトが持ち帰った標本をもとに記載したとなっているが、実際に整理したのはデ ハーンらしい。
    千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県などでは底曳き網、底刺し網などで取っている。徳島県、長崎県などでは春の彼岸の頃、ヒラメの刺し網にかかってくる。
    ただし、やや水っぽいため漁業対象としているのは静岡県だけ、県東部にある沼津市戸田などでは観光資源として重要なものとなっている。
    また静岡県では甲羅に恐ろしい顔を描き魔除けとして飾る習慣がある。
    タカアシガニの甲羅のお面魔除けの面 静岡県沼津市戸田村で作られている、子供の魔除けのお面。

    水産基本情報

    市場での評価 関東の市場にも少ないながら入荷してくる。値段は一定しないが安い。
    漁法 刺し網、底曳き網
    産地 水揚げ港としては静岡県沼津港、千葉県金谷港・外房、神奈川県三浦市長井、愛知県蒲郡市形原、三重県尾鷲市尾鷲漁港、和歌山県、徳島県、長崎県

    選び方

    原則的に生きているもの。雌は外子を持っていない個体。外子が大きくないもの。雄の方が味がいい。

    味わい

    旬は不明。漁獲量が全国的に増えるのは春。
    秋から春の漁期が旬ともいえそう。
    殻は硬く、脚が細いので歩留まりが悪い。身はやや水っぽい。カニみそはあまりおいしくない。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    タカアシガニの料理法・調理法・食べ方/蒸す、汁(かにちり、みそ汁)、揚げる(天ぷら)
    タカアシガニの蒸しがに
    タカアシガニの蒸しがに 大きいので適宜に解体して蒸す。水分が多いのでゆでると、より大味になる。蒸し上げると適度に身が締まり、殻を外しやすくなる。柔らかくて、ほどよい甘さがあり、とカニらしい香りがあってとてもおいしい。サラダやチャーハン、かに玉などに使ってもいい。

    タカアシガニのかにちりタカアシガニのかにちり 生のタカアシガニを適宜に切り、昆布だし、酒、塩のなかで煮ながら食べる。関節の部分などを使うと無駄がない。カニから実に濃厚でうま味豊かなだしが出る。仕上げの雑炊まで食べて頂きたい。
    タカアシガニのみそ汁タカアシガニのみそ汁 生の甲羅下や関節、腕の一部を適宜に切る。これを水から煮てみそを溶く。うま味も甘味も豊かなだしが出て、カニらしい香りも楽しめる。ご飯にも合う。ゆでたものを使ってもおいしい。
    タカアシガニの天ぷら 生の腕の部分を切り落とす。軽くゆでて殻を外して衣をつけて強火で揚げる。甘味もうま味も強くなり適宜に身が締まる。カニの香りも高まり非常においしい。ゆでたものを揚げたものも美味。

    好んで食べる地域・名物料理

    静岡県沼津市戸田 タカアシガニ料理を名物としている。

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    戦前(1945年以前)のタカアシガニ 駿河湾戸田村(静岡県沼津市戸田)では大正時代から底引きで水揚げされていたが、見向きもされなかった。それが戦後に旅館などで出されるようになって名物に。
    駿河湾の資源保護 資源の減少が著しく、稚ガニの生産や、養殖、畜養などの研究が盛んである。
    ケンペル ドイツ人エンゲルベルト・ケンペル(日本滞在1690〜1692年)が長崎出島オランダ商館長の江戸参府のおりに巨大な足の一部(ハサミ)を駿河の国、由比でみつけた。種小名の「kaempferi」はケンペルのこと、「Macrocheria」は巨大なハサミを意味する。
    テンミンクとデ・ハーン 最初の命名者はテンミンク(Coenraad Jacob Temminck, 1778-1858)によるが、後のシーボルト、ビュルゲルの標本をもとに実質的に分類整理したのはデ・ハーン(De Haan)である。
    世界最大のカニ 全長では世界最大のカニ。
    土産物 剥製、甲羅部分などはお土産などとして売られている。甲羅部分におどろおどろしい顔を描き魔よけなどにする。
    案山子の代わり 静岡県沼津市では、稲の取り入れ時期に案山子の変わりに鳥よけなどになっていた。

    参考文献・協力

    静岡県沼津市の飯塚栄一さん、菊地利雄さんにいろいろご教授願いました。
    『相模湾産深海性蟹類』(葉山しおさい博物館)、『ケンペルの見た巨蟹』(鈴木克美 静岡新聞社)、『シーボルトと日本の博物学』(山口隆男編)、『あいちの水産物 ハンドブック100』(愛知県農林水産課)
  • 主食材として「タカアシガニ」を使用したレシピ一覧

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