コショウダイ

Scientific Name / Plectorhinchus cinctus (Temminck & Schlegel, 1843)

コショウダイの形態写真

体長60cm前後になり、水揚げ地などでは非常に大型を見かける機会が多い。側扁(左右に平たい)し、体高が高く卵形。口が厚い。銀色の体色にやや濃い帯があり、全体に黒い斑文が散らばっている。[静岡県舞阪産 41cm TL ・1.79kg]
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体長60cm前後になり、水揚げ地などでは非常に大型を見かける機会が多い。側扁(左右に平たい)し、体高が高く卵形。口が厚い。銀色の体色にやや濃い帯があり、全体に黒い斑文が散らばっている。[静岡県舞阪産 41cm TL ・1.79kg]体長60cm前後になり、水揚げ地などでは非常に大型を見かける機会が多い。側扁(左右に平たい)し、体高が高く卵形。口が厚い。銀色の体色にやや濃い帯があり、全体に黒い斑文が散らばっている。体長60cm前後になり、水揚げ地などでは非常に大型を見かける機会が多い。側扁(左右に平たい)し、体高が高く卵形。口が厚い。銀色の体色にやや濃い帯があり、全体に黒い斑文が散らばっている。[SL17cm]体長60cm前後になり、水揚げ地などでは非常に大型を見かける機会が多い。側扁(左右に平たい)し、体高が高く卵形。口が厚い。銀色の体色にやや濃い帯があり、全体に黒い斑文が散らばっている。[36cm TL ・0.946kg]
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚類条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目イサキ科コショウダイ属

    外国名

    学名

    Plectorhinchus cinctus (Temminck & Schlegel, 1843)

    漢字・学名由来

    漢字 胡椒鯛、小正だい、鰭白魚、古世宇(京俗) Koshoudai
    由来・語源
    江戸(東京)に江戸時代からある呼び名を標準和名にしたもの。2000年前後までの水揚げから考えても江戸時代に江戸湾(東京湾)に大型はほとんど生息していなかったと考えられる。むしろ斑点や斜めに背から腹に横切る帯が目立つ若魚、幼魚が多かっただろう。この若い個体に対してつけた呼び名だと思う。
    黒く丸い斑紋からの「胡椒鯛」ではなく、小さい割りに目立つ柄をした「小姓鯛」だった可能性も捨てられない。
    1938年の魚類検索では、旧仮名遣いではコセウダヒ属コセウダヒだった。
    こしょうだひ 〈こしょうだひ 武蔵品川〉『帝国博物館天産部魚類標本目録.帝国博物館』(石川千代松・松浦歓一郎 1897/明治30年)
    胡椒ダイ 栗本丹州『魚譜』。
    小正だい 『魚鑑』(武井周作天保辛卯 1831)に「小正だい」。
    胡椒鯛 田中茂穂、宇井縫蔵は〈神奈川県三崎、和歌山県和歌浦・湯浅・白崎でコショオダイ〉とある。地域を違えて言語があるということは、「こしょう(こしょお)」という言葉に国内共通の語彙があるはず。「胡椒」なのか「小姓」なのかは不明だが、田中茂穂は「胡椒」をあてている。
    鰭白魚 〈身が扁く短首。繊せびれで鱗には白黒の文様がある〉。『和漢三才図会』
    英名/Crescent sweetlips Crescent は三日月がたで、体側の暗色帯に囲まれた部分が三日月に見えるため。sweetlips は直訳すると甘い唇だが、分厚く唇がやけに目立つから。

    Crescent sweetlips 訳すと「三日月型の模様がある、甘い唇をもつ魚」という意味。体側の斑紋のない白っぽい部分は三日月型に見える。この分厚い唇から「甘い唇」を連想した模様。
    Temminck
    コンラート・ヤコブ・テミンク Coenraad Jacob Temminck(1778-1858 オランダ) シュレーゲルとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
    Schlegel
    ヘルマン・シュレーゲル(Hermann Schlegel 1804-1884年)はドイツの動物学者。テミングとともにシーボルトの持ち帰った脊椎動物を整理、記載。『Fauna Japonica』(日本動物誌)を執筆。
    栗本丹州
    栗本丹洲(くりもと たんしゅう栗本 丹洲(くりもと たんしゅう 宝暦6年/1756年〜天保5年/1834年)。江戸神田紺屋町生まれ。奥医師、本草学者。『魚譜』、『千虫譜』、『異魚図賛』など多くの図譜を残す。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。磯や沿岸近くに棲息している。
    千葉県外房、東京湾、相模湾〜九州南岸の太平洋沿岸。
    [青森県日本海側]、新潟県、[富山県黒部港]〜九州南岸の日本海・東シナ海、瀬戸内海、屋久島。
    福島県〜青森県でも少ないながら見られる。
    朝鮮半島西岸・南岸、台湾、福建省・広東省、海南島、東沙諸島、タイランド湾、マナール湾、オマーン湾。

    生態

    産卵期は5月から6月。

    基本情報

    古くは本州中部以南に生息とあった。伊豆半島以西に多く、相模湾以東には少なかったが、近年では関東でも普通。また日本海でも増えている模様だ。相模湾ではまとまって揚がることもある。
    関東の市場ではあまり人気がないが、大型になり、歩留まりがいい上に上質の白身なのでもっと活用されてもいいと思う。
    問題は寄生虫がついていることが多いことから毀誉褒貶半ばする魚である。 これさえなければ評価は4星。
    珍魚度 珍魚度はゼロに近い。山陰・東京湾以南ではスーパーで売っていることがある。2000年以前はそれほどとれなかった魚だが、温暖化で水揚げ地が北上し、漁獲量が増えた。

    水産基本情報

    市場での評価 西日本などから入荷してくるもので、量は少なめ。上質な白身であるわりにそんなに高価に取引されていないのは、寄生虫を持っている個体が多いためだと思われる。
    漁法 釣り、定置網
    主な産地 日本各地

    選び方

    鮮度が落ちるのが遅い。太っていて、触って張りのあるもの。斑文がくっきりしているもの。鰓が鮮紅色のもの。

    味わい

    旬は秋から初春。産卵後をのぞくと年間を通して味が落ちない。比較的小さくても味がいいので産卵後の盛夏でも小型を選べばおいしい。
    鱗は細かく硬い。皮は厚くて強い。骨はあまり硬くない。
    上質の白身で血合いがきれい。皮目などに微かに磯臭さが感じられる。熱を通すとやや硬く締まる。

    寄生虫 大型は寄生虫を持っている個体が多い。ディディモゾーン(ディディモゾイド)という吸虫に寄生されているのだ。黄色みがかった袋状に見え、包丁などが当たると黄色い汁が出る。非常にやっかいなものだが、最終宿主が魚類なので、人体には影響がない。ただしとても食べる気になれない。煮たり、焼いたりしても痕跡が残る。
    大型の個体の方が多く寄生されている。この寄生虫が本種の評価を落としている。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    コショウダイの料理・レシピ・食べ方/生食(刺身、セビチェ、カルパッチョ、づけ)、ソテー(ムニエル)、汁(みそ汁)、煮る(煮つけ)、焼く(塩焼き)

    コショウダイの刺身 10月の成魚を水洗いし、三枚に下ろして、皮を引いて刺身にする。血合いを脂が覆い霜が降りたよう。脂は身にも混在して白濁させている。食感がありやや硬く感じるほどだが、脂の口溶け感があり。魚らしいうま味がほどよく感じられる。非常においしい。

    コショウダイの若魚の刺身 本種などイサキ科の特徴は幼魚期から刺身にして味がいいことだ。水洗いして三枚に下ろして腹骨・血合い骨を取る。皮を引き刺身にする。鮮度がいいものは薄く切らないと硬く感じるほどだ。6月、小さいのに脂があり、噛むほどに味が出て非常に味わい深い。[全長24cm・重さ288g]
    コショウダイの若魚の焼霜造り 6月の若魚を使った。水洗いして三枚に下ろす。腹骨・血合い骨を取り、水分をよく拭き取る。皮目をあぶって冷水に落として粗熱を取る。皮目が落ち着いていたら、刺身状に切る。皮周辺に独特の好ましい風味があり、身にはほどよい脂の甘さがある。[全長24cm・重さ288g]
    コショウダイの蒸魚(清蒸) 水洗いして二枚に下ろす。頭部でも切り身でもいいが、ここでは頭部(兜)を使った。皿に盛りてしょうが、ねぎを乗せて15分ほど蒸す。蒸し上がりにタレ(醤油・紹興酒・砂糖・魚醬を合わせて一煮立ちしたもの。もしくは甘い中華醤油)をかけ、ねぎ、香菜などをかざり、熱く熱した油をかける。
    コショウダイの塩焼き 小型はまるのまま、大型は切り身で焼き上げる。ここではかま(胸鰭まわり)を使った。振り塩をして1時間以上寝かせる。これをじっくりと焼く。イサキ科ならではの身のしまり方、皮目の香りなど絶品だ。
    コショウダイのあら煮 兜や中骨を煮た。兜は梨子割りにする。中骨は適当に切る。湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。これを酒・醤油・水を煮立てた中で火を通す。みりん、砂糖で甘味をつけてもいい。身離れがよく、骨周りに味がある。残った作る骨湯(医者いらず)を作ってもいい。
    コショウダイのフライ あまり新しいものよりも、寝かせたものの方がおいしい。三枚に下ろし血合い骨・腹骨を取る。塩胡椒して小麦粉をまぶし、衣(小麦粉・卵・水・油。溶き卵でもいい)をからめパン粉をつけてかりっと揚げる。脂のある時季のものは柔らかく豊潤。その上、上品な味わいで美味。
    コショウダイのバター焼き 小型は丸のまま、大型は切り身を使う。水洗いして表面の水分をていねいに取る。塩コショウして1時間ほど寝かせる。フライパンに多めの油をいれてじっくり香ばしくソテーする。火が通ったら、マーガリン(バター)で風味づけする。身離れがよく、皮目に独特の好ましい風味がある。とてもご飯に合う。
    コショウダイのみそ汁 あらを集めて置く。適当に切り、湯通しして冷水に落とす。残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、水から煮出してみそを溶く。うま味豊かな汁になり、付着した身も甘味があって美味。ご飯に合う。
    コショウダイの潮汁 あらを集めて置く。適当に切り、湯通しして冷水に落として水分をよくきる。これを昆布だしで煮だして酒と塩で味つけする。非常に上品でいながら、味わい深い汁になる。後味がよく酒の後などにうまい。

    好んで食べる地域・名物料理

    コタイ 大分県中津市では市内スーパーでも普通に切り身などで見られ、魚市場関係者も市内ではコショウダイを非常に好むという認識を持っている。料理法などは不明。
    コタイの煮つけ 『聞書き 福岡の食事』に麦の穂が色づく頃にとれる、「まだいとくろだいの中間の鯛」はコショウダイである可能性が高い。豊前浜ではなぜかコショウダイを好む。

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/魚清(愛知県一色仲買店舗)、岩田昭人さん(三重県尾鷲市)、中田親さん(愛媛県南宇和郡愛南町城辺深浦)、出口典彦さん(熊本県上天草市大矢野町)
    『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』(中坊徹次編 東海大学出版会 20130226)、『台湾 淡水及河口魚圖鑑』(高瑞鄕、周銘泰 辰星出版2011)、『魚介類に寄生する生物』(長澤和也 成山堂書店)

    地方名・市場名

    スジ
    場所三重県南伊勢町 参考河部友彦さん(海辺のかわべ屋/三重県度会郡南伊勢町) 
    カイグレ
    場所三重県東紀州・尾鷲市 参考聞取、三重県『東紀州のお魚リスト』 
    グレ
    場所三重県鳥羽市 参考文献 
    コショウ コショオ
    場所兵庫県明石 参考文献 
    コロ
    場所兵庫県明石市 参考土井祐介さん 
    オゴンダイ
    場所千葉県小湊 参考文献 
    ホンゴロ
    場所和歌山県塩屋 参考文献 
    コン
    場所大分県佐伯 参考文献 
    コロエアイ
    場所大坂 参考文献 
    バシヨウダイ
    場所大阪府堺 参考文献 
    トモモリ
    場所宮崎県 参考文献 
    クロガキ
    場所富山県四方 参考文献 
    コチダイ
    場所富山県富山・射水市海老江 参考文献 
    チンダイ
    場所富山県射水市海老江 サイズ / 時期小さい個体 参考文献 
    カラスダイ
    場所富山県高岡 参考文献 
    ケイガ
    場所富山県魚津 参考鮮魚丸和 
    コツダイ
    場所富山県魚津・四方・新湊 参考文献 
    バダイ
    場所広島県 参考文献 
    イシダイ
    場所愛知県三谷 参考文献 
    カヤカリ ナマラ
    場所新潟県寺泊 参考文献 
    イロダイ コダイ
    場所有明海周辺 参考文献 
    コショウダイ
    場所東京、神奈川県三崎・江ノ島、和歌山県湯浅・白崎・和歌浦 参考文献 
    シマダイ
    場所東京都品川 参考文献 
    ナナフウ
    場所熊本、有明海 参考文献 
    ナナツ[七通]
    場所熊本県上天草市大矢野町(a) 
    コーコ
    場所熊本県天草 参考木戸克己さん 
    ラッパコーコ
    場所熊本県天草市・本渡魚市場 参考有江商店(熊本県天草市) 
    コンモリダイ
    場所石川県木場潟・今江潟 参考文献 
    コンモリタイ
    場所石川県金沢 参考文献 
    ケイグリ
    場所福岡県志賀島 参考文献 
    タマジシャ
    場所福岡県津屋崎 参考文献 
    カヤカリタイ
    場所秋田県男鹿・象潟 参考文献 
    コクロ コウクロ
    場所長崎県大村湾 参考藤田晴大さん 
    ブタンクチ [ブタの唇]
    場所長崎県雲仙市小浜町 参考佐藤厚さん 
    ココダイ
    場所長崎県雲仙市小浜町、熊本県上天草市大矢野町 参考佐藤厚さん 
    エゴダイ
    場所静岡県伊豆・浜名湖 参考文献 
    カクレダイ
    場所高知県手結 参考文献 
    セコダイ
    場所鹿児島 参考文献 
    フゾグチ
    場所鹿児島県南さつま市笠沙 参考伊東正英さん 
    コロタイ(コロ)
    場所福岡県福岡市 備考コロダイと呼び名などで混同があり、コロタイ、コロダイと呼ぶ地域がある。またコロダイをコショウダイという地域もある。 参考長浜鮮魚市場20181122 
    ヘダイ
    場所神奈川県真鶴で 
    カイクレ
    場所三重県尾鷲市(a) 
    コロ
    場所兵庫県明石市、徳島県徳島市漁業協同組合・海部郡海陽町宍喰漁業協同組合、福岡県福岡市 
    コロダイ
    場所福岡県福岡市、長崎県佐世保 参考長浜市鮮魚市場20181122 
    バダイ
    場所広島県倉橋島 
    コタイ
    場所高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協、大分県中津市 
    ノマ
    場所愛媛県愛南町城辺 
    ヒッツウ[七通]
    場所熊本県上天草市大矢野町 
    ヨゴダイ
    場所神奈川県三崎 参考文献 
  • 主食材として「コショウダイ」を使用したレシピ一覧

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