イタボガキ

Scientific Name / Ostrea denselamellosa Lischke,1869

イタボガキの形態写真

15センチを超える大型種。丸みを帯びている。成長肋は薄い板を重ねたよう。放射肋はくっきりとして目立つ。外見はイワガキと酷似して見分けるのは難しいが貝殻の硬さがイワガキよりも柔らかく、貝殻に海水を含んだような染みがある。
イタボガキの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
15センチを超える大型種。丸みを帯びている。成長肋は薄い板を重ねたよう。放射肋はくっきりとして目立つ。外見はイワガキと酷似して見分けるのは難しいが貝殻の硬さがイワガキよりも柔らかく、貝殻に海水を含んだような染みがある。貝殻のなかに海水が入り込み染み状になる。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★★
      めったに出合えない
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★★
      知っていたら学者級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★★
      非常に美味

    分類

    軟体動物門二枚貝綱翼形亜綱ウグイスガイ目カキ上科イタボガキ科Ostrea(イタボガキ)属

    外国名

    学名

    Ostrea denselamellosa Lischke,1869

    漢字・学名由来

    漢字 板甫牡蠣
    由来・語源 『目八譜』より。千葉県内房での呼び名。「いたぼ」は単に「板」なのではないだろうか? すなわち一見、汚れた板きれに見える。またもしくは板葺きの屋根のように板が重なっている。
    C.E.Lischke
    日本の貝に関する文献、「Japanische Meeres-Conchylien」(1869)を表す。ドイツ人の動物学者。タイラギ類、イタボガキなど。
    目八譜
    1843(天保14)、武蔵石寿(武蔵孫左衛門)が編んだ貝の図譜のひとつ。図は服部雪斎が描く。武蔵石寿は貝類を形態的に類別。1064種を掲載する。現在使われている標準和名の多くが本書からのもの。貝類学的に非常に重要。
    武蔵石寿
    武蔵石寿(むさし・せきじゅ 玩珂停、明和3-万延元年 1766-1861)。石寿は号、本名は武蔵孫左衛門。450石取りの旗本。赭鞭会。本草学、貝類。西洋の新しい分類学も取り入れようとしていた。『目八譜』(掲載1064種)、『甲介群分品彙』(掲載605種)、『介殻稀品撰』など。現在使われている標準和名の多くがここから来ている。

    地方名・市場名

    ボタンガキ[牡丹牡蠣]
    場所兵庫県明石市 
    サルガキ
    場所広島県倉橋島 
    トコナミガキ[床波牡蠣]
    場所山口県宇部市 備考これは宇部市床波漁港にたくさん水揚げがあり、大阪などに出荷されていたため。 

    生息域

    海水生。水深3-10mの砂礫地。
    房総半島以南、九州まで棲息。東京湾では絶滅している模様。

    生態

    5〜8月に産卵。
    受精は母貝のなかで行なわれ、稚貝にまで育ててから放散する。
    砂礫底にイタボガキにイタボガキがついて大きな塊状になって生息する。

    基本情報

    愛知県、愛媛県、熊本県などで絶滅危惧種に指定されている。
    もともとは桁網(底曳き網)などの副産物で食用になっていた。
    海辺の潮間帯にも見られるマガキと違って、水深3メートルから7メートル前後の海底にいる。
    フランスのブロン(ヨーロッパヒラガキ)と味わいが非常に似通っている。
    生食は非常に美味。イワガキに似て渋味がある。両種食べ比べても見分けがつかにほどに味わいは似ており。これが市場などに並んでいてもイタボガキと認識できるひとはまずいないと思う。他にはカキフライなどいろいろ利用できそうだ。
    さてマガキは雌雄同体、卵胎生。卵を海に産卵、放出するのだが、イタボガキは5~8月に産卵、受精は母貝のなかで行なわれ、稚貝にまで育ててから放散する。外見はイワガキと酷似して見分けるのは難しいが貝殻の硬さがイワガキよりも柔らかく、貝殻に海水を含んだような染みがある。
    イタボガキ科のなかでは汚染に弱いのか珍しい二枚貝となってしまっている。その昔、東京湾にも無数に見られたというが、現在では絶滅の可能性が大。
    珍魚度 古くは東京湾をはじめいたるところに生息していたが、現在では瀬戸内海の一部にしかいない。かなり探さないと手に入らない。

    水産基本情報

    市場での評価 ほとんど流通しない。
    漁法 底曳き網
    産地

    選び方

    触って貝殻の閉じるもの。貝柱などが伸びている、水分が出ているものは古い。

    味わい

    旬は冬から春
    貝殻は厚く、もろいが、やや開けるのは難しい。
    自然状態ではいくつもの固体がくっついている。
    身は薄く、貝柱が大きい。
    苦み、渋みが感じられるが、非常に強い旨みがある。
    貝柱はほどよく柔らかく、甘みがある。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    調理法
    生食、煮る(すき焼き)、揚げる(フライ、天ぷら)、蒸す

    イタボガキの生食生食
    かなり濃厚な味わい。カキの持つ、渋みや苦みがほどよく感じられ、大きな貝柱が甘い。食感のある貝柱がいいアクセントになる。味はヨーロッパヒラガキに似ている。
    イタボガキの煮つけ煮る
    兵庫県では煮つけにしたという。また長く煮ると硬くなり、渋みが出るのですき焼きにした方が食べやすいかも知れない。意外やあっさりしてたくさん食べられる。
    みそ汁などにしてもよい。
    イタボガキのフライ揚げる
    フライにすると貝柱がまるでホタテのような味わいになり、そこにちゃんとカキらしい個性がある。天ぷらにしてもいい。
    蒸しイタボガキ蒸す
    少量の液体で蒸し煮にしても味がいい。

    好んで食べる地域・名物料理

    七色雑煮 〈いたぼがきや大貝でだしをとった七色雑煮が欠かせない。雑煮は、丸もちをゆで、にんじん、大根、ごぼう、お焼き(焼き豆腐)、里芋、をすべて丸く切り、貝でとっただしに味噌を加えた汁をかける。〉[P69 『聞書き 兵庫の食事』(農山漁村文化協会)1992]
    牡丹がき 〈かきこぎ(かきとり)に出る家では、当然自家用文をとりのけて水揚げする。漁に出ない家では仲間の漁師からまとめ買いをして、殻つきのままかますに入れて一か月くらい保存しながら使う。〉、料理法は天ぷら、酢がき、大根との煮つけ、雑煮。土手なべ。[「瀬戸内海沿岸明石の食事」『聞書き 兵庫の食事』(農山漁村文化協会)1992]

    加工品・名産品

    釣り情報

    歴史・ことわざ・雑学など

    旧ページ内容

    [以下古い記載が含まれている可能性があります]

    参考文献・協力

    ケイ・ナワさん、山口県水産課
    『日本近海産貝類図鑑』(奥谷喬司編著 東海大学出版局)
  • 主食材として「イタボガキ」を使用したレシピ一覧

関連コンテンツ