青空素浪人
ぼうずコンニャク  Bouzu Connyaku
1956年9月19日生 徳島県
土佐の高知の浦戸湾は大丈夫か?
 さてここで始まるのはちょっと、『ぼうずコンニャクの疑問がいっぱい湧いてくる。この疑問どうしてくれるんじゃ』てな話、浦戸湾覆砂問題編である。
 実をいいますとぼうずコンニャクは世の中にありましては、言わば「与太郎」とでも言えますでしょうか? 役にも立たず、かといって邪魔にもならずなんて、立身出世はおろか長い(短い)人生においても世に出ることなんてありはしない。「絶対ないな!」なんて確信がしっかり持てる普通以下の人間なのだ。
 この与太郎がちょっとたまには真面目に考えてみる「浦戸湾のみらい」である。
 それは2003年の春の宵のこと、私の心の友でもあります、土佐の漁師、永野廣が
「今年、浦戸湾に砂を撒くちゅう事業があるんじゃけんど、こんなもんやったらエガニがおらんようになるんで」
 と珍しく切実な声でいってきた。この時点で「覆砂」なんて言葉も知らず、ましてや各地で海の浄化、アサリなどの増産の革新的な事業として行なわれていることなど知る由もなかったんですな。
 そしていよいよ時は今、この永野廣のいう『浦戸湾のみらいが消える計画』が実行に移されようとしているので、「こんな与太郎流戦」を起こすわけです。もちろん与太郎とは永野廣と私であるが、「どう見ても与太郎じゃねえだろう」と思える高知大学の町田吉彦教授も戦に戦陣を切ってくれたのであるから、泣けるな〜。

 いざ、ぼうずコンニャクの闘いは、こ〜んなバカな! と与太郎にもわかる疑問集である。
 さ〜って始めるぞ!

与太郎の疑問1
 浦戸湾の覆砂は誰が思いついたのか? これがわからん「浦戸湾のみらい」を考えて、漁協の人? 市民? それとも行政? まさか土建屋さん?
 まさか最後のパターンではないでしょうね? そんなことないと思いますが、そろそろ土建屋さんも自然に優しくなりましょうよ。
 行政? これはもっと問題ですね。まさかと思いますが、どこかに天下りしたいとでも思っている県庁の幹部だったら、今や国民からあきれられたと言うか存在そのものが悪そのものと確信されてしまっている厚生省の外郭団体のよう。まさかね!
 市民なら健全な思いつき? これもねえだろうな?(これは「東京ぼん太(古い)風に) 普通のおばさんやおじさんがそんなこと思いつくわけがない。「バカいうんじゃない」。
 漁協の人だって。こんなことやったら浦戸湾名物「えがに(ノコギリガザミ)」いなくなりそうなこと、現役の漁師がそんなこと考えるわけがない。ただ現役じゃない漁師はどうかな?
与太郎の疑問2
 覆砂すると「なにかいいこと」あるのか? 今年の事、東京湾のアサリの産地を何度も見て歩きました。そこで出てきたのが「砂を撒く」って話。もうほとんどアサリくらいしか漁業対象のない港で、おとっちゃんが言いました。「バカいうよ! 砂を撒いたって、いいことないな。知ってるか、砂ってものは動くものなんだ」と。このおとっちゃん今は腰をいためてリタイアしてますが、ほんの数年前まではアサリ漁師だったそうで。実際、砂を撒いてもアサリが増えたのは1〜2年。「どれぐらいかかったものか知らね〜が、無駄なことするよ」って臭いタバコの煙りを吐いてましたッけ。
 実際、ネットで調べたり、研究者の書いたものを見ても「覆砂に科学的根拠はない」というのが大勢みたいなんだよね(たまには与太郎勉強する)。
 でもこれって冷静に考えると、誰でもわかることなわけ。砂はたまるとこにはたまるが、これは微妙な海流や川からの真水の流れ込みが影響するわけで、都合のいいとこにズ〜っとあるなんて、そんなバカな! それに泥のある場所に撒いてもすぐに軽い泥が浮いてきて元の木阿弥なんじゃないの? 泥が浮いたら、底を掻き回してやるなんていう、年々、貴重な税金の無駄使いサイクルを考えているのかな?

与太郎の疑問3
 ひょっとして覆砂っていいものだとするよね。いいものだとしてもどんな地域に覆砂するといいんだろう? これがわからない。有明海、山陰の中海、宍道湖、瀬戸内海、三河湾、東京湾。実際、覆砂って色んな方法がある。今、もっともいいって方法は、もともと砂があってそれがヘドロなんかで埋まったものを浮き上がらすという方法らしい。他にも元が砂浜であって、波なんかで砂が流されて、砂浜が消える。これは林野庁が環境によくないと判明した後も広葉樹の自然林をドバドバ切り倒し、次から次に杉を植えたり、キツネかイノシシしか通らない道路を作ったり。土建省だたかな? 「違う?」、旧建設省だった、今の国土交通省が無駄なダムをいっぱい作ったせいで、本来流れてくるはずの砂がない。しかたがないからこれを補うために砂を撒くってこと。これはまだまだいろいろ弊害もあるだろうけど、やむにやまれずってこともあるわね。
 じゃ浦戸湾の覆砂予定地はどんなところって見ると、これが湾内で珍しく干潟の形成されるところなんですね。与太郎ことぼうずコンニャクは、今年(2003年)、いろんな場所に行って、この生き物や環境のお勉強にイソイソ磯にはハマグリはいねえっての。じゃなかった、初夏には木更津は盤州干潟ってえとこに見学にいったんです。「まったくこんなヘドロがいっぱいあって、きたねえな」とせっかく案内してくれてる江戸前漁師さんの前でポロっとは言っちまったんです。「こらっ」なんて言いませんが、この干潟のいかに大切であることかクドクドじゃなかった。ご親切にも諭していただきました。
 これをかいつまんで説明しますと、木更津の盤州というところは小櫃川という川の河口に広がる干潟なんです。これを小櫃川、干潟(河口)、前浜(砂地)と沖へ向かって歩いたんです。山や平野から、人や動物や植物、例えば、落ち葉やいろんな有機物、無機物、生活廃水や工場廃水、ときには農薬など、いろんなものが流されてくる。これが河口についていきなり海に出るんじゃない。この干潟ってえところに一度、吸収されるわけ。きっとこの流れてくるもの自体が干潟の泥の成分かも知れないって聞いたこともあるな。そしてこの流れてくるもので生き物にとってご飯になるもの。まあ、栄養たっぷりのお肉や野菜や(これはゴカイやカニにとっての例えですが)がいっぱいあって、このおかげで膨大な生き物が幸せに暮らしていけるそうだ。
 これが一度、干潟の生き物に食べられて排泄される。はっきりいってウンコですが、これが前浜に広がってアサリやノリのご飯になるわけですな。
 川、干潟、砂浜というのは、ひとつとして欠けてはならねえ役割を持っていると言うことです。
 浦戸湾の干潟にあたる場所に砂を撒く、埋め立てるってことは与太郎が見たのと同じいっぱいイッパイいる大切な命をあっという間に殺しちまうことですな!
与太郎の疑問4
 海をきれいにするためにする覆砂、砂での埋め立てですから、さぞや吟味された美しい砂を撒くわけでしょうね? まさか汚染がひどい国分川の浚渫した砂だったりして、っとこれは意地悪が過ぎるかな? 国分川の砂なのは与太郎も知ってるし、きっと県民の方にもしっかり説明してますよね? この国分川の砂がキ・レ・イだっていうんなら、この砂を真水で洗って、その洗った水でお風呂でもたてて下さいな、事業を起こした人。
与太郎の疑問5
 疑問3から引き続いて、無知だった与太郎の「干潟はヘドロばっかりできたねな」なんてこと、まさか事業を起こした方達思ってやしませんでしょうね? まさかね! まさか、まさかって未来を担っていく子供達にも絶対そんなこと言ってませんよね?
 干潟、砂地、干潟、砂地と何度も足を運ぶ内に生き物を育んでいるのは干潟であって、砂地じゃない。砂地にはアサリやバカガイは多いものの(これがいちばん金になるが)生物の種類は貧相なんです。この貧相な生物層では川から流れてきた膨大な有機物や汚染物質を分解するなんて、出来ないんじゃないですか? 一見、泥ってきたなく感じますが、生き物にとっては真綿のお布団みたいに心地よいものなんです。またこのお布団は巨大な濾過槽のようなもので、アサリやバカガイなどお金になる生き物の快適な住まいも守っているわけですね。
与太郎の疑問6
 1億4千万も使うんですから、さぞや精密かつ長期の浦戸湾での調査を化学的、また生物学的にも行なったわけでしょうね。試験的に覆砂した場所も撒いた後にこれが今、どうなっているか知ってますよね? どんな生き物がいて、今年のアサリの稚貝がどれぐらいいるかぐらい調査したんですよね?
 前にも書きましたが、覆砂は多くの地域で行なわれていますが、これに対しては賛否両論。きっとこの1億4千万は国民の税金なのでしょう? これで浦戸湾がよくならず、ましてや名産の「えがに(ノコギリガザミ)」、ヨシエビ、クルマエビなどが激減したら責任は誰が取るのですか? これは認可した知事さんですか、県のお役人ですか? 事業を起こした方達ですか?

 ここでこんな疑問が湧いてくるのも浦戸湾が高知県民だけのものじゃなくて、この世に生を受けたもの総てにとって「大切な住まい、生産地、そして故郷」なんです。あっし与太郎が生を受けたのは、小さな田舎町でありますが、こんなどこにでもありそうな田舎町が今でもたまなく愛おしい。これをちっぽけな産業もねえ町だからってブルのドーザーでザザザってつぶされたら泣いちまうな。ましてや砂をかけられて埋められて跡形もなくなったらドウシテクレルンダ?
「フキョウノトキモ、サムイフトコロモ、ケンゼンナセイシンデ、ノリコエ、デクノボウトヨバレテモ、タダシクイキヨウネ、ケンリョクノヒトヨ」
ぼうずコンニャクの与太郎用語辞典
浦戸湾の覆砂事業
覆砂というとわかりらなくなるので、浚渫した汚染砂の湾内投棄。もしくは湾内埋め立てと言い換えたい。専門家や漁業者の間では「いいかげんやめんかい」と言う人もいる



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