利根川周辺の漁
刺し網漁 02
千葉県香取郡小見川町
宮崎米秋さん、篠塚秀一さん、
根本豊治さんと利根川へ
2004年1月10日
目次市場魚貝類図鑑
千葉県の目次へ
宮崎さんは去年までは刺し網を行っていた。この刺し網はずしはひとりでは大変。そして寂しい作業だという
篠塚さんは宮崎さんの刺し網漁での相方である。おしゃべりしながらどんどんはずしていく
 船は沖と呼ばれる常陸利根川と利根川の間の洲の方に入る。ここは西岸とはうって変わって葦原の入り江が複雑に入り組んで自然豊かである。
 入り江のあちこちにTずーぽUが見える。これは竹筒を2本合わせて沈め、中に入るウナギをとるもの。冬にはまったくウナギはとれないそうでTずーぽUは泥をかぶって見えない。このTずーぽUの持ち主を知っているという根本さんに後から断りを入れてもらうということで2本だけ揚げてみる。中にはマハゼ、チチブ、モクズガニが入っている。
「さーてこれからが大変だ」、にこにこと笑いながら宮崎さんは、魚をはずしていく。多くのニゴイ、ウグイをはずしては逃がし、はずしては逃がしして、お帰り願う。ほとんどが生きている。
 のんびり世間話や昔話をしながら魚をはずしていると鴨猟帰りの船が近づいてくる。音もなくすーっと来て「ウグイ(マルタ)くれねか」というのに篠塚さんがニゴイやマルタを投げ込む。船にはおとりの鴨に獲物のコガモ、ハシビロガモの2羽。「コガモはうめーよ」というのに、「今はとれねーな」という。実をいうとこのとき川魚料理の『うなせん』のご主人、菅谷敏夫さんが近くで漁をしており、我々を見ていたのである。しかもたっぷり獲物を撃ち、猟の小屋で羽をむしっていたわけだ。
 ニゴイは簡単にはずれるがウグイをはずすのは大変である。三人が見る間に魚をはずすのに、こちらは1本はずすのに悪戦苦闘している。



「こんなんはずすのなんでもねっぺよ」、宮崎さんは笑いながら「去年だっぺ、500キロもなずしたっぺよ。終わったら手がびろびろになって、なんも握れなかったよ」。そうだそうだと篠塚さんが笑う。
 昔は刺し網でとれるボラがいい値で売れて「笑いがとまらなたっぺ」というのに、いつ頃の話であるか聞いてみるとバブルの頃(1980年代)であるという。ニゴイですらヒラメの代用になるということで買い手があったという。ましてやフナ、コイを合わせると冬の稼ぎの大きな柱であったのだ。「海が荒れてよ、ながーく荒れて魚がなくなったら、どうだかな」宮崎さんは呟くようにいう。



関連コンテンツ

サイト内検索

目次

ぼうずコンニャク本

ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典
魚通、釣り人、魚を扱うプロの為の初めての「高級魚」の本。
美味しいマイナー魚介図鑑
製作期間5年を超す渾身作!
美味しいマイナー魚図鑑ミニ
[美味しいマイナー魚介図鑑]の文庫版が登場
すし図鑑
バッグに入るハンディサイズ本。320貫掲載。Kindle版も。
すし図鑑ミニ ~プロもビックリ!!~
すし図鑑が文庫本サイズになりました。Kindle版も。
全国47都道府県 うますぎゴーゴー!
ぼうずコンニャク新境地!? グルメエッセイ也。
からだにおいしい魚の便利帳
発行部数20万部突破のベストセラー。
イラスト図解 寿司ネタ1年生
イラストとマンガを交えて展開する見た目にも楽しい一冊。
地域食材大百科〈第5巻〉魚介類、海藻
魚介類、海藻460品目を収録。