「東京湾にもまだこんなところが残っていたのか」と感慨深げに彼方を見ると、そこには近代的な巨大ホテルがある。それが小櫃川河口から広がる盤州干潟である。
ここでスコップ一本でなにやら掘る人影が見える。
餌カニ漁 2003年8月11日
ヤマトオサガニ
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このヤマトオサガニは内房の袖ヶ浦、市原の釣り具店では「たんくがに」とよばれて、クロダイ釣りの重要な釣り餌である。特に木更津の沖にある堤防(西日本での波止)での独特の釣法、「落とし込み釣り」ではなくてはならないもののひとつ
 冷夏であっても日差しさえあれば、そこは熱暑の干潟上である。この日は、HPでもお馴染みのきんのり丸さんに案内されての盤州干潟行である。盤州干潟というのは東京湾であるのだからたかが知れているのだ、と思っていると見はるかす限りに続く干潟にいて、「どこに行けばいいのか?」と漠然と沖ばかり見ている内に、一転、アシの原っぱが続く茫漠たる三角州に目を移すと、そこにポツリと人影が見える。
 干潟で初めて出合う生き物に、すなわち目が慣れぬ内に現れるカニや巻貝に、心浮かれて焦点の合わぬ自分にいら立ちを覚えたところであった。
 思い干潟の砂をクヘックヘッと踏み締めて「なにを捕っているのですか?」と間抜けに聞くと、「カニだよ」と傍らの黄色いバケツをスコップで指した。覗くとヤマトオサガニである。
 このヤマトオサガニ、内房の大動脈とも言えそうな国道16号に乱立する釣り具やでは、お馴染みのクロダイ釣りの餌である。内房は釣り師の間では知らないものはいない、クロダイ釣りのメッカなのである。その釣り具屋で売る生き餌のコーナーを見る度に、この生き餌はどこからくるのかが大きな疑問であったのだ。イワイソメ、ユムシ、ケフサイソガニ、ヤマトオサガニ、ニッポンスナモグリがいつもある生き餌なのだが、この干潟で漁するひとは、この総てをとっているという。
 干潟の岸に近い場所で潮の流れのある場所を掘り、少し待つとヤマトオサガニがニョキニョキと出てくる。これをひとつひとつ拾い上げて行くのだ。
 実際、見てる間に灰色の砂のなかから砂が動くように見えて、それをじっと見ている間にカニの形になる。これがヤマトオサガニなのだ。
第二きんのり丸
アサリ漁師であり、海苔の養殖もしている木更津のパイロット。木更津の干潟盤州のことはもとより、東京湾のことも含めてこのHPを見れば発見がたくさんあります



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