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2004年8月9日 島根の旅 09 浜島根県多伎町小田漁港 多岐の粒うに 2004年8月5日から11日まで、島根県安来を中心とした旅に出かけました。その土地土地で様々な生き物や魚貝類に出合いました。 ■島根の目次へ! ■市場魚貝類図鑑 |
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ウニ漁で前の磯でとれたバフンウニは漁師さんたちの家族総出でむく、むいた作業をした競り場からとんとんと階段を上がると、こんどは「粒うに」作りが始まる。 ザルに入った剥きウニは2階の漁協作業場(多伎町漁業協同組合)に運ばれる。待ち受けているのは専務の藤井さんをはじめ漁協のスタッフ。これを計量して、すぐ塩をする。 まずブリキで作られた独特の容器に塩を敷く、ここにウニを置いて上からも振り塩。ウニは何回か上下を入れ替え、また振り塩をする。このとき塩の浸透圧で水分が押し出されてぽたぽたと落ちてくる。このときにうまみがより濃くなるようだ。この落ちてきた水分、実をいうとかなり美味であるが、これだけは作り手だけの楽しみでしかない、残念。 これをあらかじめアルコールの入った瓶に入れて軽くかき混ぜる。多伎のウニはバフンウニとこれに甘みをプラスしてくれるアカウニ(これはほんの少しだけ)、塩と防腐剤のアルコール以外は何にも入っていない。また機械化された部分は皆無であり、塩をする、アルコールとともに瓶に詰める、ラベルを貼る、箱に詰める、などすべて手仕事で作られる。当日は藤井専務と漁協の方が二人、お手伝いの漁師さんの小学生の娘さん、たった4人で名物「多伎の粒うに」が作られるのだ。 帰りに1瓶、いただきました。これを帰り着いて後にあれこれ食べて、ここに記していきます。今回も八王子の寿司屋「市場寿司 たか」の渡辺隆之さんに参加していただきました。 瓶から皿にあけてそのまま食べてみる。するとウニの味わいとともにつんと差し込んでくるのがアルコールの苦みである。「うまいな。かなりうまいけど、これは好き嫌いがでるだろう」と話しているうちに、多伎町漁業協同組合専務の藤井さんの話を思い出す。「皿にあけて少し置くとアルコール分が飛んでまろやかになる」と聞いたはず。それで皿に広げて、小一時間ほど待つと今度はアルコールの苦みが和らいだ。また、じっくり味わう粒ウニのうまみについつい箸が出てしまう。このとき激しく「酒がほしい」と思った。粒ウニを食べると日本酒が飲みたくなるようだ。 「市場寿司 たか」で瓶を開けたのは、とうぜん寿司に仕立てて見たいからである。これを軍艦に乗せてみた。これが失敗。まずくはないのだけれど寿司飯と合わないのだ。しかも寿司職人に言わせると「ウニがうますぎるのもいけない」という。確かにこのウニはうまいというか、寿司飯の存在を消してしまう。結論としてはそのまま酒の肴とするか、熱いご飯にのせて食べるのがいいとなった。 それと「瓶のまま1年寝かすとアルコールが飛んで食べ頃になる」そうだ。確かに瓶をあけて最初のときに強くて、ツンときたアルコールが1週間ほど経て残り少なくなったときにはほとんど気にならなくなった。1年おかなくても、数時間おく、もしくは瓶を開けてから1週間ほどおくだけでもアルコールのきつさは和らぐ。 多伎の粒ウニは港の前の岩礁でとったウニを、すぐに剥いて、剥いたそばから塩ウニにしていく。まさに純粋無垢な日本海、海の味わいである。 ここで「粒うに」、もしくは「うにの塩から」について説明する。今では瓶詰めの「粒うに」は珍しいものではなく、関東でも流通量こそ少ないものの定番商品として「必ずあるもの」であるようだ。これを最初に考案したのは山口県下関市の和田又藏などで明治20年にさかのぼる。これが現在まで連綿として「粒うには山口名産」とされる嚆矢となっているわけだ。この考案されたときから原料はウニと塩とアルコールだけで、現在でも国産で名品とされるものは他のいっさいの混ぜものは入っていない。 面白いのは同じウニの瓶詰めといっても1瓶200円という信じられないものから、東京日本橋のデパートに売られていた山口県産の1瓶6千円のものまで多種多様。安いものほどアミノ酸や糖分などが添加されている。 もしも「粒うに」を購入されるなら、ぜひウニ自体の味わいが生きている昔ながらの「粒うに」を選んでいただきたいものだ。 ちなみに「多岐の粒うに」は多伎町の小売店や道の駅で2400円で売られている。 |
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