2005年9月23日
糸魚川への旅02
能生漁港
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もくもくと選別をする。そこに笑顔はない
与徳丸は佐渡島周辺でカゴ漁をしている。悪天候でなければ、発砲の山が出来る
なんばんえび(ホッコクアカエビ)、チヂミエゾボラ、ばい(ツバイ)
水深1000メートルから上がったもの。エチュウバイなのかオオエチュウバイなのか迷う
 糸魚川市街から左に日本海を見てに20分ほど走る。海に近いところには横断歩道はなく地下道になっているのは冬の怒濤と雪のためだろう。海岸線が切れて磯場に変わり、いくつか川を過ぎると能生町漁港にたどりついた。時刻は、ちょうど9時になっている。早く水揚げする底引き網漁の船は、この時間には漁獲物の選別を始めているはずなのだ。
 初めての港ではあるが、選別する場所はすぐにわかった。中ではすでに選別が始まっていて、すぐに目に付いたのはニギスである。これを見ながら、市場長の池田さんにケータイ。
 すると「今日はね、天気が悪くてぜんぶ帰ってきてるだろ。だからほとんど魚はないよ」という。確かに選別台には魚が少なく、また種類もあまりない。いちばん多いのがニギス、そして小さなマアジ。まとまるのはこの2種だけでヒメジ、小振りなシロサバフグ、フタホシイシガニなどもやっと1箱2箱できるほど。ほかには1匹だけサケ、エビスダイ、ソコカナガシラらしき魚、ヒメジ、ハタハタ、ホッケ。雑魚としてはクサウオの仲間、そしてエビジャコやエンコウガニ。
 比較的親切な人と、いるだけで邪魔だと言わんばかりの人もいて、長居は無用かなと外に出る。外にはサザエの刺し網の補修をする老人。そののどかなコンクリート面にぽつぽつと雨粒が落ちてきている。

 市場事務所に行くと1階でサザエの出荷をしている男性がいて、その人が池田さんだった。いろいろ話を聞いて、底引きの選別ではあまり見るべきものがなかったと話していると、窓の外をさしてあそこで選別しているのがオオエチュウバイなどのカゴ漁であると教えてくれる。
 押っ取り刀で競り場の前に走り込む。何箱か並んでいるのはツバイである。怪訝そうなのを「おはようございます」といってニコリと笑い(気持ち悪かったかな)、水揚げしたものを見せてもらった。
 親子3人、息子さんはどうも後継者らしい。ツバイを大きさ別に選別して、海水で汚れを落として箱に詰めていく。船長さんは54歳、息子さんは二十歳前後だろうか、ともに180センチを超える。船の名前は「与徳丸」である。
「ただただ港と水産物魚貝類が好きで見て回っている」というと、親切にいろいろ見せてくださる。
 もう選別し終わっていたのがチヂミエゾボラ。まだピンクがかった色合いの小さなのから殻長20センチを超えるのまである。
「こんへんじゃ、『にし』だな。それとこの下を見な」
 何箱か下から出てきたのがオオエッチュウバイである。
「今日の深さで1000メートルだな」
 やはり、新潟でしか見かけないオオエチュウバイはエゾバイ属でも深海性の形態であることが明白にわかる。するとますますわからなくなるのがエチュウバイの存在だ。
 水産1000メートルのカゴで揚がるのがツバイ、オオエチュウバイ、チヂミエゾボラの3種なら、脇に置かれた「なんばんえび(ホッコクアカエビ)」は350〜500メートルでとれるという。ホッコクアカエビに混ざり、モロトゲアカエビが1匹、またクロザコエビ属が2種。「しまえび(モロトゲアカエビ)は少ない」のだという。
「なんばんえび」は大型のメスは抱卵しており、赤が濃い。これが小型になると赤が薄くなる。ここにゆっくりとした足取りで老人が現れた。この方もカゴ漁をやっておられる「太平丸」の船長さんである。この方、能生町での魚貝類の呼び名を考えるときに貴重な存在であるようだ。
「甘エビは、昔しゃ『こしょうえび』っていっとったな」
 イバラモエビを聞くと
「あれは『しゃこえび』って言う。『鬼えび』とも言うが」
 また天候のことは「けしき(景色)」というのも面白いではないか。
 与徳丸ではクロザコエビ2種、チヒロダコらしきもの、ニクイロツムバイをいただいた。
 市場の事務所にもどって池田さんの辞去を告げる。朝方日差しもあり、なかなかの日よりであったのが、今は驟雨となっており、海岸に残してきた家族が不安なのだ。
 今回の旅は家族がヒスイを探すのが中心である。能生町まで脚を伸ばしたのはおまけ。次回は能生町をじっくり腰を据えて見てみたい。



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