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イカ釣りで有名なのが長井の各港。 そこにはひなびた昔ながらの 漁村の風景が残っている。 三浦半島長井 サザエ刺し網漁 2004年7月6日 神奈川県横須賀市 ■神奈川県の目次へ!/市場魚貝類図鑑へ! |
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梅雨は明けていないが、猛暑が続いている。台風はもう何個が通り過ぎただろう。8号は太平洋側を荒らして北上したばかり。その影響か朝方、激しい雨が降る。 久しぶりに、我が家に「一番近い海」である三浦半島へ向かう。今回のテーマは「打ち上げ貝」というものだが、いつものことで目的はいっぱいある。 海岸で貝を拾うというので家族全員をともなっての三浦行である。子供も3人いると、これが騒がしいとかうるさいとかそんな生やさしいことでは表現のしようがない。16号が事故で通行止めになっていた20分ほどはこちらがイライラしている上に、家族のいらだちが相乗して血圧が急騰する。やっと逗子インターを下り、逗葉新道(これが有料の意味がまったくわからない)、やっとやっとご用邸を過ぎる。末娘は「まだ海は見えないの」を連発しながらやっと右手に相模湾が見えてきた。雨はやまない。 三浦に来ると必ず立ち寄るのが長井地域である。ここは三浦の伝統漁、「見突き漁」やサザエやヒラメなどの刺し網、蛸壺漁などが行われていて、古き三浦の面影が残る。 やっと到着したものの雨はまだまだ止みそうにない。しかも海は満ちていて、とても踏み込んでは行けそうにない。仕方なくクルマの中でコンビニ弁当を食べる。駐車している船揚場には長井名物のイカ乗り合いの客も見えず、また漁から帰る船も見えない。クルマの外はむんむんとする高湿度である。 程なくして1隻の小舟が沖合から港に帰ってくる。ぼんやりしていても仕方がないので船揚場をそちらに行ってみる。満潮で潮が動いているためか、汀に様々な生き物が見える。波を避けるように上がってきたタマキビにフナムシがちょっとつついている。ボラの子、イシガニにハゼの仲間。 船揚場のはずれの小屋で刺し網の獲物をはずしているご夫婦が見えた。蕭々と降る雨の中で素晴らしい光景のように見えたのは、夫婦げんかばかりしている我に省みてのことである。「ちょっとはずすのを見せてください」といって小屋にはいると奥さんの方が伸びやかの声で「いいですよ」と言ってくれる。こちらに揚げたばかりの網を入れたカゴがあって、ビニールパイプを通して向こう側で網を引っ張りながら獲物をはずし、絡んだ網をほぐす。その向こうには獲物をはずして絡みをといた網を入れるカゴがある。お二人は網の端と端をひっぱりあっているのだけれど、手前の端を相手の端と入れ替えたり、奥さんが面倒なスベスベマンジュウガニを渡して始末してもらったり、いい呼吸である。 サザエを取る網であるが、いろんな生き物が着いてくる。たくさんのカジメがひっかかり、竿の下に小山になっている。その小山に甲殻類はセミエビ、タマオウギ、カイメンガニ、ショウジンガニ、ノコギリガニ、ヒメセミエビ。魚類はメジナ、ブダイ、オハグロベラ。貝はカキツバタ(カキの仲間)、ヒメヨウラク(アッキガイ科の巻き貝)、ウニレイシが落ちていて、これはいただく。 「これ昔は取れたけどね」と見せてくれたのはバテイラ(しったか)。「この辺ではカジメ玉っていうね。カジメにいっぱいついてる」。「そういえば子供がこの辺で泳いでいるときに、岩に上がってくるのがいてね。ここだと『あがりだま』っていう。これ孫が取ってきてゆでてくれていうね」。この「あがりだま」というのはフタが厚くてサザエのようだということからスガイのようである。 お二人の話は明確でわかりやすい。ご主人が75歳、奥さんが70歳、お名前を聞くと、梶ヶ谷さんといい、これは古くはこの当たりが梶ヶ谷という地名にあったために地域に多い苗字であるという。 「サザエもイセエビも取れなくなったね。家(うち)はね昔、釣り漁をしていて、あちこち渡り(他の地域で漁をする)もしたし、手広くやったたの。それが主人が子供の時にお父さん(梶ヶ谷さんの)がなくなって、土地も船もなくなって、それで一度廃業。それが主人のときにまた始めて」。 奥さんの話を受けて、 「またわしの代で廃業だな」 お子さん達はそれぞれ別の稼業についている。残念ながら全国どこでも、しかも多くの漁家で「このような」状態にある。 取れたサザエは5〜6キロといったところか? 大小混ざっている。そしてこの網のもう一つの獲物が釣りエサ用のオニヤドカリである。この日は少なくて4匹。これは活かして置き業者の人がとりにくるのを待つのだ。 いただいた生き物を入れたバケツに海水を入れに汀に行くと、防波堤の壁でなにやらイワガニが捕まえている。見ると草色のテッポウエビの仲間。このテッポウエビを横取りしてくる。ほんの1時間ほどの長井での道草でたくさんの生き物を見て、そして手に入れました。現地で撮影できて、生きているものは逃がしてやり、死んでしまったものや、撮影できなかったものは持ち帰りました。撮影済みの生き物はなるべく現地で撮影するだけにし、できる限り生き物を殺さないのがぼうずコンニャク流、生き物とのつき合いです。 |
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