2005年6月17日
福島の旅 02
福島県いわき市
久ノ浜 刺し網
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市場魚貝類図鑑

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ガラガラと台車を運んでいたのは新昇丸のおばさん、大きなバケツには巨大なヒラメ、ババガレイ、マコガレイ、トラフグが入っている
刺し網にはコモンカスベ、ホシエイ、シログチに無数のイボイチョウガニなどがつく。売れるのはヒラメやマコガレイ、ヒラツメガニなどである
05/06.17 福島県いわき市久ノ浜02

 ガラガラっという音がして寝袋をはねのけると、大きなバケツを台車に乗せたおばさんが競り場に消える。そのバケツからはみ出しているのは間違いなく巨大なヒラメに違いない。
 すぐに追いかけていく。おばさんに「これ刺し網でとれたんですか?」と聞くと。「そうだよ。何しにきたの」とあがったばかりの巨大なヒラメを水が流れる競り場のコンクリートに出して見せてくれる。このヒラメがビックリするほどデカイ。ほとんど1メートルはありそうだ。バケツの中にはマコガレイ、ババガレイ、ヒラメに大きなトラフグがいる。
 おばさんが、活けの水槽に入れるのを見ていると、水槽の下にマアナゴが何匹も逃げ出している。「はもだ」とヒラメに暴れられてびしょ濡れになりながら教えてくれる。そう言えば港の水揚げの黒板に「ハモ」とあったが、マアナゴのことだろうか?
 とぼとぼ台車を押して行くおばさんにクルマで着いていく。すると港の南に船だまりがあり、2軒の漁師さんが刺し網から魚を外している。南に入って手前が新昇丸、次が正栄丸。
 新昇丸の網にはウバガイの貝殻がいっぱいついていて、ざっと見て大量のコモンカスベにシログチ、アカシタビラメ、ヒラツメガニなどがとれている。この中で商品価値があるのはヒラツメガニだけであるらしく、他の魚は足下に転がされている。それに明らかにゴミであると思えるものにマヒトデ、何種類かのイチョウガニがいる。
「なにしに来たの(言葉ははっきり聞き取れなくて意訳だと思って欲しい)」
 というのに、
「魚を見に来たんです」
 と答えると、
「今日は少ないんだ。ほっきも出てないし。ウニ漁も今日はダメだな」

 この時期、久ノ浜は沖合の底引き、近海底引き、刺し網、ほっき貝桁網漁、ミズダコのカゴ漁、磯でのウニ、アワビ漁が行われている。今日は残念ながら荒天で、ほっき(ウバガイ)、ウニアワビが出漁できなかったという。

 新昇丸にはほっきの貝殻がいっぱいついていたのに、となりの正栄丸の網にはまったくついていない。こちらではヒラツメガニが大漁。「これはこっちでは『しらがに』だな」と言うおじいさんの足元に大きなエイが転がっている。「なべだ」という真っ黒なエイは、帰宅後調べるとホシエイであることがわかった。
「かすっぺはうまいけど、なべはだめだ」
 と言う、かすっぺはコモンカスベである。そのうち、正栄丸の船がもう一度沖から帰ってきて。またまた立派なヒラメを水揚げする。どうも今日は正栄丸は大漁であるようだ。
 久ノ浜の刺し網は獲物を替えながら年中行われる。7月からはコチやスズキになるという。

 またいわき市周辺で作られるものに焼きうにがある。キタムラサキウニのむき身を、ほっき(ウバガイ)の貝殻につめて蒸し焼きにしたもの。「漁があれば作るよ」と新昇丸のおばさんが笑う。今年のウニの漁期にもういちど来ることができるだろうか。



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