2005年6月17日
福島の旅 01
福島県いわき市
久ノ浜港
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市場魚貝類図鑑

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早朝の久ノ浜は人っ子一人見つからない。市場にシートをかけて置かれているのは底引きの獲物
05/06.17 福島県いわき市久ノ浜01

 梅雨に入り、市場へ来る魚貝類も少なくなっている。毎日の市場通いがなんだかマンネリ気味で、気が滅入ってしかたない。そんなときに八王子まで来てくれたのが全国を旅する千葉の海人つづきさん。いろんな話に耽るうちに出てきたのが福島県いわき市の港の話題。つづきさんの話からすると底引き網もあり、漁獲物も多様であるという。考えてみると、近年あまり北には行っていない。
 疲れはピークに達している。しかも体力的な疲れではなく、頭脳の疲労である。そんなときには見知らぬ土地へ行くに限る。そして今の気分からするとやっぱり「北かな」。つづきさんの話から出た「久ノ浜」というのを検索して、港に問い合わせてみる。対応してくれた女性の声が優しい。

 福島県いわき市は福島県の南端、すぐとなりは茨城県北茨城市となる。ただこのいわき市が広い。勿来の関で有名な勿来から小名浜、塩屋崎、四倉ときていちばん北にあるのが久ノ浜である。これが古くは陸前浜街道にあたるのだろうか? 久ノ浜の街はどこか古めかしい。

 港に入船する底引き網は近海のものは毎日、沖に何泊かする船は2〜3日に一度入ってくるのだという。女性事務員の方は続けて「月曜日13日にまとまって入船したので、今度は6月15日だろう」と言う。だが、この日はあいにく仕事である。それに空模様も怪しいではないか。それをのばして17日のまだ深夜という時間に我が家を出る。
 福島県は東北では最南端にあたる。そのもっとも南にあるのが久ノ浜のある、いわき市だ。いわき市には、なんどか訪れているものの、言葉を聞く限り、茨城県に近いイントネーション。また気候的にも茨城県北部と変わらないのではないか。その上、東京都心からの所要時間からしても、今回めざす、いわき市なら3時間とかからない。
 中央自動車道、八王子インターを入ったのが0時45分。高速はガラガラに空いていて、最難関の向島線もなんとか過ぎる。東北道、常磐道など我が国の主要な高速道への分岐点があるにも関わらず、道幅は狭く、まことにイヤなところである。地方にクマしか通らない無駄な高速を造るなら、これを何とかしろよ、国土交通省。これを過ぎるとほっと息がもれるほど。常磐自動車道に入ると、いわき四ツ倉までは2時間半で到着した。
 インターを下りて四ツ倉港の前で感応式の信号にぶつかり、これが国道6号線である。ここから北上、ほんの数分で常磐線久ノ浜駅を左に見る。ここが久ノ浜の街への入り口にあたる。右手に入る道を見つけて、右折、すぐに商店街らしい道筋にでる。瓦葺きの落ち着いた佇まいの町並み。酒屋や工務店の店舗が古めいていい感じである。商店街を北に抜け広い道にあたり、右折して川に、橋を渡ると久ノ浜港に出る。
 港の左右に海に突き出した小山。これに続くように防波堤が左右からのびている。そして沖合にも長い防波堤。防波堤の高さを超えてテトラポットが積み上げているのは、千葉県外房から茨城、福島ともっとも荒々しい外洋からの波から港を守るための同じような光景である。港にはルアーを振る釣り人ふたり。スズキでもねらっているのだろうか? その海面がうねっている。どんより灰色の空が広がり、その下に黒い雲の固まりが海すれすれを流れていく。
 海に平行に細長い久ノ浜港の建物はしんとして人影は北の端にひとりだけ、その岸壁を漁船が沖に出ていく。そこまでとぼとぼ歩いて行くと、競り場にはシートをかぶせた桶が並んでいる。「水揚げは何時くらいですか? これを選別するのはいつですか?」と聞くと「8時にならないと人は来ない(若い人なのに訛りが強い)」という。また今出ていく船は刺し網を上げに出ていくのであるという。
 仕方なくクルマにもどっていると軽自動車が通り過ぎていく。また港の建物まで見に行くと、活けの魚を見に来た模様である。そこにトラックが入ってきて、男性が下りてたので話を聞くと、「競りは8時半、まあ8時くらいにならないと誰も来ないよ。ここは遅いからね。小名浜なら午前3時から4時には水揚げがあり、早朝に競りがある。隣の四ツ倉ではここよりもっと遅くて午後1時に競りがある」と言う。またこのあたりでは久ノ浜がもっとも水揚げが多くて、魚を見るならここがいちばんであるという。
 岸壁からルアーを振るのを見ながらクルマでうとうとと居眠りしながら、ただただ時を待つ。

●久ノ浜では7〜8月は大型船は休漁となり、底引き網は9月から翌6月まで。刺し網は年間を通して魚種を替えながら操業されている。ほっき(ウバガイ)は6月から佳く月までが漁期。磯での潜水漁は5月から9月まででウニ、アワビをとる。



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