よりによって、
ゴールデンウイークに!
と憤慨する家族を連れて
やってきたのは東京湾湾奥、
京浜運河。
そこで出合ったのは
意外や大量に生き物

2003年5月3日 
東京都品川区
 京浜運河
 貝を研究する会で初めてお会いした青野良平さんから、「京浜運河で採集会があるんですが来ませんか?」と誘われたのは4月下旬のこと。青野さんとはメールで貝の同定や、東京湾移入種の現状など、教えを受けており、その簡単な文中からも、懇切な人柄がにじみ出ていた。
 しかし京浜運河ってどこにあるのだろう。と東京の地図を広げてみると、そこは羽田に向かうモノレールから何度も見ていた場所ではないか。閉め切ったモノレールの窓からはどこか魅力的な水面に思えたものだ。
 待ち合わせは京浜急行の青物横町駅、ゴミゴミしたビルを抜けて、真新しい品川シーサイドのすぐ先にその水面が見える。潮が引いて、運河にポツンと砂浜が浮かんでいる。しかもすでにたくさんの人が潮干狩りの最中である。
 欄干を乗り越えて降りると、子供達はすぐに水辺に走る。思ったよりも水は澄んでおり、臭いもない。と、足元の石を起こすと、サワサワとなにやら出てきた。いきなり出てきたのを手にとると、これがチチュウカイミドリガニだ。よく見るとそこにもここにも、いるいる無数にこのカニがいる。水辺まで来て足元でザクザク鳴るのがコウロエンカワヒバリガイとイガイダマシ。これら総てが海外からの移入種。総べて初めて出合ったものばかり。押っ取り刀で長靴に履き替えるために護岸に手をつくと、ここにもビッシリとついているのがキタアメリカフジツボ。見渡す限り移入種ばかりである。追い討ちをかけるがごとく青野さんが手渡してくれたのがホンビノスガイ、ウスカラシオツガイ。
 日本在来種といえるものは、足元からザクザクでてくるアサリ、シオフキ、サルボウにケフサイソガニなどであるが、移入種がやけに目立つ。とくにコウロエンカワヒバリガイとイガイダマシなどは、この州浜総てを覆ってしまっているかのように思える。



 水辺で子供達が「キャーキャー」大騒ぎしているのは対岸を通るモノレール、そして大波をたてる水上バス。水上バスの小学生達が手をふっている。青野さんがモノレールの行く先を指差して「あそこが天王洲アイルです」と呟く。この水面と対岸のモダンな建築郡のなんという落差。
 妻は来るとすぐにアサリ掘りに専念している。地元の方から「ここのアサリの味は最高」だと教えられたようだ。青野さんや当日御一緒した方達から「PCBのこともあるので食べない方がいい」と言われると途端に水辺から離れてしまった。この州浜にはたくさんのアサリがいる。またそのアサリを掘り持ち帰る人も少なくはないようだ。ぼくには、子供達にここのアサリを食べさせる勇気はない。
 洲でいたのは2時間足らずであろうか? いつか水の臭いが鼻についてきた。気になりだすと、どうにも耐えられぬ臭いである。ここでいられるのはこれぐらいが限度なのだろうか? 青野さんに品川シーサイドまで送ってもらい、ここで手を洗い、今、流行りの飲食店が並ぶ広場で食事をした。周りは京浜運河なんてまったく知らないであろう人々。良く見ると我々もそこに何の違和感もなくいられるのが不思議である。この品川シーサイドのやけにメタリックな近未来的な建物から、あのまだまだきれいとは言い難い京浜運河までは、ほんの5分とかからない。
在来種
(写真上左)ナガヒラムシ、(写真上中)シオフキ、(写真上右)ヒメシラトリ、(写真右)サルボウ、(写真右下)ユビナガホンヤドカリ、(写真下左)ドロメ、(写真下中)ケフサイソガニ、(写真下右)ユビナガスジエビ

移入種
(写真上左)オーストラリア、ニュージーランドからのコウロエンカワヒバリガイ、(写真上右)イガイダマシ、(写真右)地中海から来たチチュウカイミドリガニ、(写真下)東南アジアからきたミドリイガイ、(写真下中)キタアメリカフジツボ、(写真下右)ウスカラシオツガイ
参考にしました
『東京 品川 京浜運河の貝』
『運河のいきもの』
『海の移入生物図鑑』



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