アオダイ(青鯛) 掲載種番号 007

 東京の市場では高級魚として知られる。都内・伊豆七島、小笠原からの入荷が多く、正真正銘の「東京の魚」である。どうもこの東京都諸島地域からの魚貝類の流れは、都内でも重要な位置にある(このあたりも今年は詳しく調べてみたい。と言うことで本稿も改訂の繰り返しになるだろう)。
 例えば八王子では戦後から昭和30年代くらいまでは鉄道で魚貝類を運んでいた。だから魚市場も駅に隣接していた。それがトラック輸送にかわり、氷から冷蔵、また冷蔵に完全に移り変わったのが1950年半ば(昭和30年代)以後だと言う。それまでは「イカとマカジキがあれば」済んでいた内陸部八王子の魚屋でも魚貝類の種類がどっと増えたのだ。アオダイが登場してくるのは当然これ以降のことである。それにしてもアオダイが東京に登場してからの歳月は長い。だから今、八王子の現役魚屋の先代にもアオダイはしっかり認知されている。

 またボクの気になって仕方がないことに「東京での白身、赤身の分け方」がある。なんとカンパチやブリなどが東京の白身の代表格なのである。個人的にはヒラメやカサゴは白身だと思うが、アジ科の魚が白身だとはとても思えない。
 知り合いの寿司屋でも「おかしいとは思うけど、東京では刺身の色合いから区別するんだと思う。味わいは関係ない」、また「入った(修業した)店でそうだったからかな」と言われた。この辺のところ関西でも確かめてみたいのだが、東京での白身という観念は変だと思う。そこで私的に刺身の区分をつけると白身ということで「入荷の少なくない一般的な魚」を取り上げるとヒラメ、スズキ、そしてアオダイなどのフエダイ科、マダイなどのタイ科、そしてイサキ科などだと思う。また赤身は明らかにマグロだけをさす言葉である。
 東京に入ってくる魚種の多くは、だから白身だということになる。だから白身魚をうまく扱える料理や魚屋などがもっと増えるといいのだ。
 そしてアオダイなどは、ある意味で地の魚なのだからもっと多用していいだろう。また「おごだい(ヒメダイ)」「尾長(ハマダイ)」、ウメイロなど東京の市場にはフエダイ科の魚が多く見られる。そして高級という認識が定着しているなら食べる側への説明も積極的にやるべきである。

■市場魚貝類図鑑・アオダイのページに
東京のさかな目次へ
↑東京都神津島からきたもの。船便であろうが鮮度はよく、刺身にもなる

基本データ
東京での呼び名/あおだい
暖/東京都内伊豆七島、小笠原。和歌山県、九州各地
旬/夏から秋、初冬
比較的多い/量的には普通だが、入荷頻度は高い。
高価/高値安定。東京では高級魚として一定の評価を得ている。最低でもキロあたり1500円前後、いちばん多い価格帯は2000円前後、ときに3000円を超える
一般的ではない/間違いなく一般家庭などでは使わないもの。スーパーではまず売られていない。料理屋、やや高いが魚屋などで時に扱うもの



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