郷土料理

屋久島のウマンコを食べる

タカラガイは非常に貴重だ、は屋久島では通じない

屋久島一湊の磯

関東や日本海などで暮らしていると思いも寄らないが、タカラガイは多産する地域では普通の食用貝のひとつでしかない。
熱帯域では大型のホシダカラなどが食べられていたが、同じタカラガイ科でも食べていい種と食べない種があるなど、調べると奥の深さを感じる。
鹿児島県屋久島一湊では、磯の貝を盛んに採取して食べている。主な獲物はイボアナゴで、これを「磯もん」という。
「磯もん」は非常に多く、食べられる部分が大きく、また味がいいので、他の貝類はあまりとらないというが、古くはウマンコ(ハナマルユキ)もとって食べていたという。同じ場所にいるキイロダカラは食べないことからタカラガイ科でも選択的に採取していたことになる。

干潮時は岩のくぼみなどに隠れている


屋久島の磯を歩くと、ハナマルユキが無数に見つかる。小型のキイロダカラもいることはいるが、なぜか食用として採取することがないという。
沖縄県石垣島では漁具として利用されることから、タカラガイ科でももっとも人との関わりが深い種であるようだ。
ハナマルユキは相模湾の打ち上げ貝でも普通で、生息域は本州房総半島にまで広がっている。ただし本州でも紀伊半島以外で生きている状態で見つけるのは難しく、屋久島などの個体数の多さには圧倒される。

食べ方は塩ゆでか、醤油で煮るか


屋久島で採取した個体は一つかみだけ持ち帰った。基本的に磯で採取した生き物は最小限だけ持ち帰ることとしたい。また採取自体が禁止されている地域もあるので要注意である。この磯の生物を人から遠ざけてしまう傾向は採取する側に多くの原因があるが、採取を禁止する側にも節度が必要である。問題は過剰な採取であり、そのようなことを行うのは、一般旅行客ではなく、言うなれば採取のプロとされる人達である。

貝殻は非常に硬く、ドライバーなどでこじ開けるしかない


屋久島一湊で教わった食べ方は塩ゆでか、もしくは醤油味で煮るというもの。
小型の巻き貝なので、冷たい状態から貝殻を煮汁に入れて、火をつけて7分ほど煮てみた。
そのまま冷めるまで鍋止めにする。
一湊で教わったとおりにドライバーを用意する。

力を入れてドライバーをひねるとぱちっと割れる


ドライバーを口に差し込み、回転させてこじる。
意外なほど硬く、非力な人や子供は苦労するに違いない。
磯でイボアナゴなどの、煮てそのまま食べられる貝があるとき、ハナマルユキをとらないわけはこんなところにある。

貝殻からすると食べられる部分はほんのわずか


こじ開けて出てくるのはほんの小さな軟体でしかない。
割れた貝殻などが混ざるので、煮汁を残して置き、洗いながら食べるといいだろう。
足の部分は淡泊で微かに甘味が感じられるだけだけど、内臓の部分は濃厚なうま味と、風味がある。
いうなれば珍味である。


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