3月半ば、小田原魚市場近くの食堂で朝ご飯

相模湾が赤く染まり、箱根から冷気が下がり来る


神奈川県小田原魚市場、魚市場食堂はとても有名だ。ただ、残念なことに開店時間が遅いので、ほぼ市場人のボクが朝ご飯をとるのは無理だ。
いつも、市場人のための食堂、港のオッカサンのところで、朝ご飯を食べる。
今回は市場人定食(オムレツ)とブリ刺身、フクロフノリのみそ汁だ。
昔は市場人でわいわいと楽しく朝ご飯を食べていたが、最近、みんな忙しくて集えないでいる。
その上、春休みなのか、一般客が朝早くから楽しそうに小上がりを占領しているのである。オッカサン達も忙しくて、おちおち世間話もできない。
小田原魚市場で魚を見るのは重労働だ。だいたい午前4時過ぎに市場に入り、地物をすべて同定し、基本的に全種の撮影をする。同定できないものもあるが、そのようなものは基本的に市場では無価値なので頂いてきたり、先取りしてもらう。持ち帰ってからが非常に大変なのだけど、ここで書いても仕方がない。
ちなみに小田原魚市場場内は吹きさらしで、箱根颪と酒匂川に沿って丹沢から下りてくる冷気で、3月いっぱいは非常に冷える。この沈み込んでくる冷気が体力も気力も奪い尽くす。年のせいかと思ったら若い買受人がそばにきて、「きついっすね」と時候の挨拶代わりにぽつりとつぶやく。
南は真鶴福浦、真鶴岩、江ノ浦、根府川、米神、二宮の地元の定置網があり、平塚、東京湾柴などからも荷(魚自体であり、魚を入れた箱でもある)がやってくる。最後に刺網の水揚げを待って、終了するのが7時前後だ。
市場で右往左往してほぼ3時間、お腹と背中がくっついてクウクウと鳴る。

食堂の普通の朝ご飯だけど、ちょっとだけ違う


オッカサンの店の魅力はおかずがおいしいのはもちろん、ご飯がやけにうまいことだろう。しかも季節の魚などもちょこんとついてきたりする。
小皿のブリの腹身の刺身は、相模湾で揚がったばかりを、即切りつけたものである。
競り場で「今年のブリはまだまだイケるよ」と話したばかりのものが目の前にある幸せは、言葉には出来ない。

フノリのみそ汁は今や貴重なのだ


しかも、この日は小田原周辺で年々採取して競り場に出す人がいなくなってきている、貴重なふのりのみそ汁だった。
伊豆半島にはマフノリとフクロフノリがとれるが、椀の中に浮かんでいるのは後者である。
独特の風味が実に味わい深い。ぷちっとする食感に、そろそろ時季が終わろうとしていることを感じる。
このようなものを御馳走というのだ。
ちなみに最近、ご飯が小盛りすぎるのはなぜだろう。大盛りご飯が懐かしいぞ!


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