ホッキガイと、ワカメと、湯豆腐と

白い色はとても珍しいと思う


八王子総合卸売協同組合、舵丸水産で、青森県産のホッキガイ(ウバガイ)を買った。なぜか? 色が面白かったためだ。ホッキガイは黒くて大きい方が高い。茶系は比較的安くて小さいのである。
そして今回の青森県産は白だった。真っ白ではなく形態学(生物の形や構造などを主に扱う)の世界でよく使う、青灰色というのが当たっていると思う。青灰色で1個350g前後なので立派なホッキガイである。
この色は撮影していないと思っただけでも買うのが、図鑑造りの臣の性なのである。
青森県北浜は、本来は八戸あたりからむつ市までの太平洋側のことだが、ホッキガイ漁では八戸市から三沢市までの海岸線をいうようだ。
前回、このあたりを寺山修司を思い浮かべながら車で走ったことがあるが、なんとなく暗いイメージだった。この白っぽい貝殻を見ている内に、もう一度行きたくなる。

いろいろ集めて作る湯豆腐


さて、この日(2月13日)の夕刻はとても寒かった。PCに向かいながらも身体の凍えを感じるくらいなので、温かい料理が食べたくなる。
この日、四谷の新宿通そばで豆腐屋を発見。まさか、こんなところに豆腐屋がというだけでうれしくなる。当然、その栗原豆腐店で木綿豆腐を買う。ちなみに東京では1980年代くらいまで、「絹ごしなんて邪道だ」という豆腐屋が多かった。鳥越で絹ごしというだけで知らんぷりされたこともある。だから今でも都内で買うのは木綿と決めている。
寒さにふるえながら浮かんできたのは湯豆腐である。ホッキガイと湯豆腐は決して相性はよくないが、昆布だしの中で少しだけ温めた刺身はおいしいのだ。
鍋は中に入れる具が決して調和したり、決して相乗効果を生まなくてもいい、と思っている。
しかも三陸産の生ワカメがある。
しかも、しかも、ちょっといい九条葱もあるのだからお膳立ては揃いすぎるくらい揃っている。

湯豆腐とは時間を楽しむものなのだ


ホッキは剥き身にして泥砂を洗い、足とその他を分ける。
足と水管を開き、汚れなどを包丁でしごく。
これを塩水の中で2、3秒湯がく。
氷水に落として水分を切っておく。
葱を切り、木綿豆腐も奴に切る。
ワカメをざざっと洗って切る。甲殻類アレルギーの方はていねいに洗うべし。
ホッキの刺身はそのままわさび醤油などで食べてもいいし、昆布だしの中で軽く温めて食べても、ちょっとだけだけど味変化しておいしいのである。
ワカメを落として色づいたら、食べ、1月に買ったときよりも硬くなっていることに、春を感じたりする。
栗原豆腐店の豆腐が実にウマシなので幸せな気分になる。
ちなみに湯豆腐は豆腐やその他の具材を食べるのではなく、時間を食べるのだと思っている。久保田万太郎を出すのはハレンチだからやらないけど、深遠な心持ちになる。


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