味わい

宮城県産活マコうまいねー

食指が動かない姿だけど、下ろしたらすごい


カレイ類の撮影は難しい。焦げ茶色でどこにもピントを合わせやすい部分がない。面白いのはカレイ類すべてが生時からこの醤油で煮つけたような色だということだ。我が家に来たカレイ科で醤油色でなかったのはシモフリガレイという北にいる種のみ。まあ裏を返せば白いので救いがあるが、サメガレイなんて裏側だって死んだミミズのような色をしている。
なかでももっとも地味なのがマコガレイだ。どこから見てもうまそうには思えない。これが夏になると万超え当たり前の超高級魚に大変身するなんて、お釈迦様でもわかるまい。
さて、関東に入荷してくる個体を見る限り、産卵期は12月くらいから3月くらいだと思う。4月、5月になっても真子を抱えているのもあるが、産卵期の遅い北海道産ではないかと思っている。
4月には上物がやってくるようになり、5月下旬くらいから値を上げるのは、産卵期を前に脂がのるのではなく、エサを盛んに食べる時季に脂を持つからだ。6月、7月にはマコがないと商売にならないという仲卸も少なくない。
この魚のやっかいな点は活魚でなければならないということに尽きる。死んだら半値でも売れない。有名な大分県の城下ガレイが関東に来ないで九州周辺で消費されるのも、活魚でしか売れないからだ。
昨年夏、豊洲市場の水槽の中の肉厚かつ、1㎏をかなり上まわった個体を見つけて。店の前を行きつ戻りつして、迷いに迷っていたら後から来たすし屋にさらっと持って行かれたことが思い出される。夏のマコは買う気で行かないと買いの瞬発力が生まれない魚でもある。
最近、手許不如意なので、時季外れを狙うことにしている。

ちょっとだけ変わった下ろし方をするのは自宅用だから


さて、12月なのに生温い日、八王子総合卸売協同組合、舵丸水産に宮城県産の活ジメが来ていた。仲卸(一般客も大歓迎だ)である舵丸水産ではなく、大卸である川崎北部市場で締めたものだ。
明らかに真子を抱えているものの、身に張りがある。しかも師走のマコは安いのである。
まな板に乗せると、まだ生活反応があるものの、刺身でいけるか、不安になるくらい卵巣が膨らんでいる。
水洗いして背と腹を脊椎骨の部分で二等分する。

12月なのに時季だと思えるほどの味


腹の部分は水分をよくきり、立て塩にする。
背の裏側を刺身に、表を昆布締めにする。
机に向かうのが4時間刻みなので逢魔が時に刺身をおかずにご飯を食べたら、昆布締めにしたことを後悔するほどの味だった。
うま味豊かだし、ちゃんと脂が感じられたのである。
マコの脂というのは舌にまとわりつくような感じだが、決して強い口溶け感は感じられない。それなのに脂が乗っていると感じるのはヒトだけにしかない、曖昧味覚センサーゆえだと思う。
深夜に酒の肴にした昆布締めもおいしかったし、丸1日干した片身もおいしかったけど、12月の宮城県産活マコは刺身に限るかも。

マコガレイの昆布締めはちょいとつまむ肴に最適


身色のよくない背の表側は昆布締めにした。
5枚に下ろして振り塩をしないで、皮付きのまま日高昆布に包んで1半日以上寝かせる。
食べる直前に皮を引いて刺身状に切る。
醤油は不要。柑橘類とわさびだけで食べる。
昆布のうま味が加わっても、マコのうま味が浮き上がってくる。

真半分に截断して真子周りを干ものにする


産卵期の個体の腹部は刺身にするには薄すぎる。
だいたい真子だけが取り残されて淋しい感じになる。
これを立て塩に15分、強く干し上げたいので1日以上風にさらす。
じっくり焼き上げると、皮目の風味と真子のほこほことした甘味と身の強いうま味で、幸せな気分になれる。
できればビールが欲しいところだが、ぐっと我慢して凍頂烏龍茶。


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