サツマカサゴは小粒すぎるけどキリリとうまい

実に地味な姿だけどただ者ではない感が漂う

サツマカサゴ

魚好き以前に生き物が好きという人間だからだと思うけが、サツマカサゴを見つけると、少しだけだけど興奮する。放っておけない気がして困る。
珍しい魚ではないが、手に入れたいと思って手に入れられる魚ではない。探す人間の、運の有る無しに左右される魚というところが魅力的だし、ボクのようにマイナーな人間はマイナーなモノが好き、という原則にも合う。

裏を見ると花色木綿

サツマカサゴ

一癖ある人間は嫌いだが一癖のある魚は好き、でもある。たぶん本種は毒を持つ魚だ(毒魚という愚かしい表現はバカな人間しか使わないので気をつけよう)。刺されると、強い痛みがあるが、キズによる痛みなのか、毒による痛みなのかというと微妙だ。痛みが数時間続くので毒がある可能性が高いと考えている。
専門書を読むと、刺毒の抽出と解明は非常に難しいとある。しかもこの国は毒の研究にあまりお金を投入していない。サツマカサゴの毒の研究など永遠に出来ない可能性が高い。現在進行形のハレンチな国会議員を全員削除すれば少しは研究費が捻出できるはずなので、一刻も早く削除すべし。
手の平にのる魚なのに大きく感じるのは体高があり鰭が大きいからだ。表は地味でドンゴロスのようだが、裏地はぱっと華やかな錦という意外性も持ち合わせている。

生で食べてもすごっくウマイがあっけない


ちなみに三枚下ろしにすると片身の長さ8㎝くらいにしかならない。切りつけて、せいぜい6枚とれるかどうかでは、未完成といった感がぬぐえない。そこに、あらでみそ汁を作ってこそサツマカサゴ1尾の料理が完成するのである。
見た目の悪い魚はうまい、なんて言った最初は小島政二郎ではないかと思う。そんなに世の中は単純ではないし、本種をボクは醜いとは思わない。けど、世間では醜いと思われがちな顔をしている。その初対面の感じからして、醜い魚はうまいというへそ曲がり小島政二郎的な法則が当てはまる。
三枚に下ろして、皮を引いたら味も素っ気もないので、皮付きのまま皮の方をあぶる。ちなみにこの魚、面の皮はあまり厚くないし硬くもないが、体幹部(身)のあたりの皮は硬くて厚みがある。湯をかけて皮霜造りにしても皮は柔らかくならないので、あぶるしかない。
氷水に落として、粗熱を取り、水分をきって切るつける。
今回は柚子胡椒、わさび醤油でかわりばんこに食べた。
柚子胡椒の方がいい。
皮の食感と、身のこれまたそれなりに強い食感が実に味わい深い。
うま味が矢鱈に豊かなので、教会系のビールに合いそうである。
そこをぐっと我慢して松竹梅の燗酒5勺をやったがこれだってよい。
さて、焼霜造り(あぶり)はメインではない。むしろ脇役なのだ。

骨と棘だらけでうますぎるだしが出る


主役はみそ汁である。
湯通しして残った鱗やぬめりを流し、水から煮出してみそを溶くだけなのに、味のある一碗になる。
最近、この酒の残り味を洗い流す一碗こそに、魚料理の神髄あり、だと思っている。
競り落としていただいた『さんの水産』さんに感謝!


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