コラム

11月なのに、12入りサンマの塩焼きに、やっと秋の気配を感じる

16g超えたら大型サンマがリアル

サンマ

10月後半から11月初めの今日まで、3日を置かずサンマの塩焼きを食べている。刺身よりも塩焼きが無性に矢鱈に食いたいから食うというか、サンマの塩焼きは麻薬のようだ、とまでも感じている。
サンマの塩焼きのおいしさはその直球的な味に、ほどよい渋味と、例えばウニの味のような硫黄分(?)からくる玄妙な味わいが加わることだと思う。
そのくせ後口がいいのである。やたらにご飯に合うところも、酒断ちの日には持って来いだ。

2010年くらいまでは200g超えてもそんなに高くはなかった

木樽入りサンマ

2010年代くらいまでサンマは8月も後半になると脂がのっていた。
2001年など200g前後の大サンマが、北海道から大黒サンマとして、三陸から樽入りでやってきていた。
ちなみに2016年くらいまで岩手県宮古市、須藤水産の樽サンマの樽は本物の木の樽で荒縄がかけてあった(写真は2001年)。これがいつの間にか発泡に代わる。「最近、樽は樽でも木じゃなくなったんだな」などと立ち話をしたことがある。この木樽サンマをもう一度食べてみたいものだ。
今はさほど大きくもない、13入り(13尾で2㎏、153前後)、12入り(13尾で2㎏、166g前後)で1尾800円とか1000円を超えてしまうが、昔は10分の1程度の値段で買えた。
さて、1週間に2本程度買い食べているが、やはりサンマは塩焼きがいちばんかな? と考え始めている。2000年前後のエッセイに「都内でサンマの刺身を食べられる店を探す」、的な話が出てくる。要するに、東京でサンマの刺身が普通になるのは、そんなに古い話ではないということだ。ボクが初めて東京でサンマの刺身を食べたのはもっと古く、1990年代のことで、築地場内ではすでにいいものは生、とされていた。サンマの刺身は目新しかったけど、家で人知れず食べるのは塩焼きこそだとは思っていた。
ちなみにサンマの刺身1人前には最低限でも160gで刺身3きれ(高級店は量が少ない)、1尾の4分の1はいる。例えば1尾1000円なら原価250円なので最低でも750円、残るリスクを考えたら1人前1000円だと思う。これが少々お高い店の値段である。
普通の居酒屋などでは15〜17入り(15尾で2㎏、133g前後)で安値で150円〜高値で350円くらいしか仕入れられない。これを、半身使いで500円くらいか。ちなみにサンマは小さいと極端に安くなる。
スーパーなどで100円サンマがあるのは昔、煮干しにしかならなかったサイズだからだ。
刺身は多少ごまかしがきくが、塩焼きはごまかせない。料理店で1尾丸ごとのサンマを13入りサンマ塩焼きにすると高めの店で1尾2000円以上、安い店で小型サンマの塩焼きを食べても500円以上はする。高いと思うが妥当な値段だろう。しかも料るに時間がかかる。

昔からサンマは塩焼きに限るとされていた

サンマの塩焼き

塩焼きなどは魚屋から自分で買って、自分で食うに限る。ちなみに昔、大黒サンマは炎が上がるので自宅で焼くのは難しいくらいに脂がのっていた。今の12入りにそんな気遣いはいらない。やはり脂ののりも往時よりも落ちている気がする。
それでも料理店で食べれば1尾2000円なりの塩焼きを、三日に上げず食う我は、にわか分限者になった気分だ。

大きいとワタも大きい

サンマの内臓

サイズが大きいとわた(内臓)も大きい。
このわただけで酒(日本酒)がやれるほど酒との相性がいい。
棒受け網なので少々鱗が気になるが、それにしてもウマスギだ。


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