9月のアイゴは産卵後なのに非常にうまい

至って普通の扱いの、野締めアイゴを選ぶ


たぶんアイゴは画像があるだけで数百個体は味見している。
2016年11月、愛知県一色で非常に雑な状態で置かれていたアイゴを買っている。見た目が悪かったので、どれくらい臭うか知りたかったためだ。ところがそんなに臭くはない。それは鈍感だからだろう、と言われそうだけど、もともと魚嫌いな人間なので臭味には敏感なのだ。
2011年10月には徳島県海陽町宍喰竹ヶ島の大型個体を3個体持ち帰っている。これはイセエビの刺網で揚がったものであったこと、宍喰から我が家まで車で11時間かかり、しかも水揚げの翌日に下ろしたので臭った。
ここ3、4年、気になると小田原魚市場で廃棄されているアイゴを持ち帰って、様々な方法で下ろしては食べている。たぶん数十個体に上ると思うけど一度も臭くない。
別に宍喰のアイゴが臭いわけではない。定置網の個体に臭味はないのだ。磯もんと呼ばれている刺網でとれたものが臭い。要するにアイゴの臭味は漁法にもよるし、水揚げ後の処理にもよるのだ。
それなのに最近の未利用魚をあれこれ報道しているバカなマスコミは、臭い臭いと言いすぎている。たぶん未利用魚に取り組んでいる人間の中にも様々な状態のアイゴをさほど食べていない、未熟な人間がいるのだ、と思っている。だからちゃんと報道されないのだ。
9月14日、神奈川県小田原市、小田原魚市場二宮定置でアイゴを3個体いただいてきた。野締めである。お隣の江の安、日渉丸のものは活け締めで金色に発色しているので、臭い臭くないのの次元ではなく、超高級魚であるメイチダイ並にうまいに決まっているので比較対象にならない。普通の扱いのアイゴ、しかも産卵後1ヶ月くらいの野締めのアイゴが欲しかったのだ。
紀州の魚類学者で民俗学者の宇井縫蔵は八九月のがいちばんうまいというが、小田原のアイゴは夏に産卵するので9月の個体は痩せている。このあたり和歌山県のアイゴも比較のためにまた拾いに行きたいものである。

塩とライム、ホットチリの爽やかトリオで食べる


さて、今回のアイゴは水揚げが5時前後、帰宅してあれこれやって午後2時に水洗いする。今回はお腹がぺたんこで生殖巣はない。これをペーパータオルにくるんで保存する。
夕方に、三枚に下ろして薄く切りつける。水揚げ後14時間後である。
塩とライムと熱帯でもらってきた数年前のホットチリで食べる。
思った以上に身に食感(弾力)があり、うま味豊かで、しかも後味に脂の気配がする。アイゴの味の魅力は食感にあり、やたらにライムが合う。。
ちなみに日渉丸のワタルさんは「痩せてっからどうかな?」というが、アイゴは体に膨らみがなくても身に張りがあり、うま味は落ちていない。
翌日の夕方も刺身で食べる。水揚げ後、38時間後である。少しだけ食感は悪くなっているものの、うま味は増しているではないか。
アイゴが熱帯域で広く食べられているのは、この味のよさからである。例えば1980年代、小田原で「メイチダイは臭いから捨てろ」と言われたことがある。確かにメイチダイの野締めはとても食べられたものではない。でも活けや活け締めは今や超高級魚なのだ。
アイゴも超高級魚を目指すべきだと考えている。


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