昔はいっぱいいたのにな! バテイラ

漁港が大きくなると生き物は消滅する


八王子綜合卸売協同組合、マル幸に愛媛県産の大シッタカが来ていた。愛媛県で磯物というと愛南あたりではないか。流転にもどろうか、と思っているところなので奇遇、である。
殻長55mm・80g前後もある。我がデータベースでは大分県別府市別府駅高架下の魚屋で買ったものに次ぐ大きさである。
バテイラ(シッタカ)は別に大きいからといってうまいわけではない。しかも大きい方が高い。大きい方が歩留まり(可食部分が大きい)がよさそうなのでなんとも言えないが、個人的には殻長40mm以下が好きだ。
さて、ものすごく昔、千葉県外房、勝浦市川津漁港が鄙びた小さな漁港だったときの話だ。下(さげ)いっぱいの潮で魚のアタリが遠のき、居眠りをしていたら、防波堤の下から、「寝とるくらいだったら、ほれこれでもとりなさい」と声がかかった。磯もん、マツバガイとヨメガサラを取りに来た地元のバアチャン達だった。手網を持って下りていくと、ボクの手網を見て「これとりな」と教わったのが、堤防の切れ目にたくさん並んだシッタカである。
独りもんなので10個ほどもとって、海藻についているマツムシやチグサガイ?、タツノオトシゴなどをとって遊んでいたら、帰りしなにシッタカとマツバガイなどをどっさりいただいたものだ。
同外房の千田漁港でクボガイとシッタカをまぜこぜにとっていたら、こっち(シッタカ)がうまいと教えてくれた漁師さんもいた。(注/個人的な意見だが採取はいつも最小限にすべきだと考えている)
1970年代末から1980年代くらいまで、バテイラはおいしいけど売り物にはならない貝だった。ましてやクボガイなどとっても仕方ない貝、でしかなかったのだ。
写真は現在の川津漁港。

サザエより高い


まさかシッタカがサザエ以上の値段をつける時代が来るとは、だれも想像だにしていなかったはずだ。
食べられる磯の巻き貝だけではなく、海藻なども急激に減少しているのは、とりすぎているせいもあるだろうけど、やはり環境破壊や温暖化の影響が強いのだと思う。特に千葉県外房では漁港の作りすぎが指摘されてもいる。今、海辺にはのどかさなどはみじんもなくなり、どことなくぎすぎすした雰囲気が漂っている。

苦みが日本酒に合う


考えてみると久しぶりのシッタカである。食感の心地よい足には貝らしい風味・甘さがあり、わたにはほろ苦さがある。
ド深夜に北も北、北海道根室の酒「北の勝」に、南も南、愛媛県でも南部、愛南あたりのシッタカとはなんとも、おもしろや、ではないか。


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