タカノハダイ

Scientific Name / Cheilodactylus zonatus Cuvier, 1830

タカノハダイの形態写真

40cm SL 前後になる。側扁し、頭部にかけて背が盛り上がる。尾鰭には明瞭は白い斑文があり、斜めに走る縞模様がある。[成魚]
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40cm SL 前後になる。側扁し、頭部にかけて背が盛り上がる。尾鰭には明瞭は白い斑文があり、斜めに走る縞模様がある。[成魚]40cm SL 前後になる。側扁し、頭部にかけて背が盛り上がる。尾鰭には明瞭は白い斑文があり、斜めに走る縞模様がある。[全長5cm 稚魚]40cm SL 前後になる。側扁し、頭部にかけて背が盛り上がる。尾鰭には明瞭は白い斑文があり、斜めに走る縞模様がある。[成魚]
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★★
      がんばって探せば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★★
      知っていたら達人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★
      地域的、嗜好品的なもの
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区棘鰭上目スズキ系スズキ目スズキ亜目タカノハダイ科タカノハダイ属

    外国名

    学名

    Cheilodactylus zonatus Cuvier, 1830

    漢字・学名由来

    漢字 鷹羽鯛、鷹羽魚・太加乃波(和漢三才図会) Takanohadai
    由来・語源 東京都・神奈川県などの呼び名でもある。斜めに走る縞模様が鷹の羽の斑紋を思わせるため。東京での呼び名。
    たか(鳥へんに周)羽鯛 〈形は小滝に類し、たか(鳥へんに周)の斑のような鱗紋をもつものがある。〉『本朝食鑑』(人見必大 島田勇雄注釈 東洋文庫 平凡社 元禄10年/1697)
    鷹羽魚(たかのはだい) 〈鱗は細かくて鷹の羽に似た文様がある〉『和漢三才図会』
    Cuvier
    バロン・ジョルジュ・レオポルド・クレティアン・フレデリック・ダゴベール・キュヴィエ(Baron Georges Léopold Chrétien Frédéric Dagobert Cuvier 1769-1832)。フランスの分類学者。キュビエとされることが多い。スエーデンのリンネ、フランスのビュフォンの分類体系に解剖学や古生物学などを加味して現在の形の礎を作った巨人のひとり。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。浅い岩礁地帯。
    津軽海峡〜[宮城県気仙沼]〜九州南岸の太平洋沿岸、津軽海峡〜九州南岸の日本海・東シナ海、瀬戸内海、奄美大島、喜界島、徳之島。
    [少ない]伊豆諸島、小笠原諸島、沖縄島。
    台湾、朝鮮半島南岸、香港。

    生態

    甲殻類などをエサとする。

    基本情報

    本州以南の磯の魚の代表的なもの。磯釣り、防波堤釣り(波止釣り)などであがるが、どちらかというと外道である。漁業的にも浅い磯場の刺し網、定置網などでとれるものの、古くは産地周辺で盛んに食べられていたが、近年多くが捨てられている。この磯魚利用が徐々に減少しているのは温暖化が進む中、ゆゆしき問題だと思う。
    産地周辺などでは鮮魚でも見られるし、干ものなどでも売られている。東京都などでも希にスーパーなどで売られているので、新しい流通の形をもっと模索して、おいしさをアピールしてほしいものだ。
    これは夏などに非常に臭みのあるものがあるせい。冬期でも漁獲方法によっては臭みがあるが、漁獲後の処理によっては非常に美味である。
    珍魚度 流通量は少ないものの、普通の食用魚である。安いために入荷が不安定で入手しにくい。
    いそいよ(磯魚) 本種は磯回りにいるので、定置網でも揚がるが主にイセエビ、サザエなどの刺し網でとれることが多い。古くはこの磯魚は産地では重要な食用魚であったが、今、徐々に食べられなくなってきている。

    水産基本情報

    市場での評価 主に寒い時期に入荷してくる。非常に安い。
    漁法 刺し網、定置網
    主な産地 徳島県

    選び方

    帯状の斑文のくっきりしているもの。体色は濃い方が脂がある。

    味わい

    旬は秋から春。
    微かな磯臭さがあり、ときに強い臭みを持つも個体がある。特に晩春から初秋にかけて臭みのあるものが多い。ただし漁やその後の取り扱いによってこの臭味は緩和され、まったく臭みのないものも多くなっている。
    鱗は細かく硬く取りにくい。皮は厚くてしっかりしている。骨はあまり硬くはない。内臓は往々にして臭みがあり、腹膜は黒い。


    身質 血合いがよわくとてもきれい。透明感のある白身だが、脂は皮下に層を作るとともに、筋肉にも均質に混ざり込むので旬の時季には白濁する。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    タカノハダイの料理法・レシピ・食べ方/生食(焼き切り、洗い、刺身)、煮つけ、ソテー(バター焼き)、焼く(魚醬焼きなど)

    タカノハダイの刺身 できれば活魚、活け〆か、鮮度のよいものを選びたい。鮮度が悪いものは臭みがあることがある。身質のよさは魚類中トップクラスだと思っている。血合いがよわく透明感のある白身だ。白濁しているものは脂がのっている。この脂がうま味成分からくる甘味を感じる。非常に美味である。

    タカノハダイのセビチェ 刺身にした残りの尾に近い部分、内臓を抱き込む部分などを集めて置き小さく切る。これを塩・ライム(柑橘類などなんでもいい)・辛い青唐辛子・紫玉ねぎでマリネする。白く締まったら、そのままで、もしくは豆などお腹にたまるものと盛り付ける。

    タカノハダイの煮つけ 漁師さんたちは煮つけで食べると言うが、塩焼きの方が臭みが気にならない。臭みがあるものは、煮ることで臭みが増長するので注意が必要。取り扱いのいい寒い時期のものは煮つけにして、実に美味。冷めると煮こごりが出来る。しょうがや一味唐辛子を臭み消しに。身質の良さは最上級で非常に美味。

    タカノハダイのバター焼き 水洗いして塩コショウして、バター焼き(沖縄の郷土料理。マーガリンでもいい)にしても美味しい。微かな臭みがバター風味で感じられなくなる。写真は丸ごとバターや気にしてみたもの。

    タカノハダイのみそ汁 あらを集めて置き、湯通しする。冷水に落として残った鱗やぬめりを流す。水分をよくきり、水から煮出してみそを溶く。非常にうま味豊かなみそ汁になる。臭みがあるときにはしょうがの搾り汁を。
    タカノハダイの素揚げのみそ汁 熱帯域で魚は素揚げにすることが多い。沖縄県石垣島のウミンチュはこの素揚げをみそ汁にするという。みそ汁を作って素揚げを入れたが、だしを入れていないのに、とても味わい深い。ご飯にも合う。
    タカノハダイの塩焼き 脂ののった秋に作る塩焼きはとても味がいい。適当な大きさに切り、振り塩をして1時間ほど寝かせる。これをじっくりと焼き上げる。脂が豊かなので柔らかく身離れがいい。非常においしい。ただ臭みのある固体は、より臭みが増すので要注意。

    好んで食べる地域・名物料理

    千葉県勝浦市。

    たたき(焼き切り/やきぎり) 三枚に下ろして皮目をあぶり、刺身状に切り、手に塩をまぶして叩く。次ぎに柚子酢をてにつけてたたき、玉ねぎのスライスをのせる。ハス(イシダイ)、コウロ(イシガキダイ)、グレ(メジナ)、ヒラソウダ、カツオなど。宍喰では寒い時季にカツオがとれなくなると作っていたという。[徳島県海部郡海陽町宍喰]

    高知県の焼き切り 三枚に下ろして皮目を直火で焼く。氷水などに落として水気をとり、切る。[高知県室戸市]

    加工品・名産品

    干もの 徳島県南部ではニザダイ、アイゴとともに干ものを作っている。


    たかのはの干もの 徳島県県南で作られているもので、塩味とみりん干しがある。新鮮な内に加工するので身が締まっており、磯の匂いがほのかに感じられて、とても味わい深い。[徳島県海部郡]

    釣り情報

    各地の防波堤や磯などでは手軽な釣りの対象魚である。例えば、オキアミ餌の浮き釣りや、イソメ餌のブッコミでもよく釣れる。ただし「たかっぱ(タカノハダイ)が釣れると本命(メジナやクロダイ)が釣れねー」という千葉でのジンクスもあるが。

    歴史・ことわざ・雑学など

    参考文献・協力

    協力/ぬしま鮮魚(徳島県海部郡海陽町宍喰)
    『図説有用魚類千種 正続』(田中茂穂・阿部宗明 森北出版 1955年、1957年)、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『原色魚類大図鑑』(安倍宗明 北隆館)、『日本産魚名大辞典』(日本魚類学会編 三省堂)、台湾魚類資料庫

    地方名・市場名

    シヨンベタレ ションベタル
    場所三重 備考磯臭いことから「小便たれ」とついた。 参考文献 
    キッキリ
    場所三重県熊野灘 参考文献 
    キツネダイ
    場所京都府丹後、福井県鷹巣 参考文献 
    ギンダウオ
    場所兵庫県神戸 参考文献 
    タカノハ
    場所和歌山県各地、徳島県海部郡美波町伊座利・由岐町・竹ヶ島、高知県安芸郡東洋町 参考聞取、『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、阿波学会研究紀要・由岐町の魚類と淡水エビ類 
    ショガミ
    場所和歌山県太地 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929) 
    タカバ
    場所大阪府堺 参考文献 
    フエフキ
    場所島根県出雲市杵築 参考文献 
    カシダイ
    場所島根県松江市恵曇手結 参考文献 
    トビタイ
    場所新潟県粟島(粟生島) 参考文献 
    アンコウ
    場所有明海 参考文献 
    タカノハダイ
    場所東京、神奈川県三崎、富山県新湊・四方、静岡県浜名湖、三重県志摩、徳島県伊座利・宍喰・竹ヶ島 備考標準和名 参考聞取、文献 
    キシャンコウ
    場所東京都神津島 参考文献 
    ハーガイクレー
    場所沖縄 参考文献 
    トゥルバイー
    場所沖縄県南城市知念漁協 参考『美ら海市場図鑑 知念市場の魚たち』(三浦信男 ぬにふぁ星 2012) 
    シマバチメ
    場所石川県七尾 参考文献 
    ションベンタレ[小便たれ]
    場所磯臭いことから「小便たれ」とついた。 
    ムコナカセ[婿泣]
    場所神奈川県三崎、伊豆 備考出されると婿が泣くほど磯臭いという意味。 参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966)、文献 
    タカッパ
    場所神奈川県小田原市小田原魚市場秋山刺網 
    タカノバ
    場所神奈川県江ノ島 参考文献 
    キジダイ
    場所福井県鷹巣 参考文献 
    キコウリ
    場所福岡県志賀島 参考文献 
    キッコリ
    場所福岡県玄海 参考文献 
    シマダイ
    場所秋田 参考文献 
    キッコ
    場所長崎 参考文献 
    アラ
    場所長崎県長崎市茂木 参考文献 
    キサンチョ キサンショ
    場所静岡県・静浦・沼津 参考『さかな異名抄』(内田恵太郎 朝日新聞社 1966) 
    フトンジマ
    場所静岡県静浦 参考文献 
    オカシカウオ
    場所高知県柏島 参考文献 
    アンドノバン
    場所高知県黒潮町熊野浦 参考文献 
    キコイ シマキコイ
    場所鹿児島 参考文献 
    キッコイ
    場所鹿児島県甑島 
    ムコナカセ[婿泣かせ]
    場所静岡県沼津市 
    ギンタ
    場所高知県室戸市三津[イセエビ漁師] 
    テッキリ[手切り]
    場所三重県尾鷲市 
    キコリ
    場所山口県萩市、福岡県中央市場 備考これは背が張っていて、たくましい男性を感じされるためだと思われる。 
    タカ
    場所三重県尾鷲、徳島県阿南市椿泊『椿泊漁業協同組合』 参考『紀州魚譜』(宇井縫蔵 淀屋書店 1929)、聞取 
    タカノツメ
    場所徳島県海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』 
    ヒダリマキ[左巻き]
    場所徳島県海部郡海陽町『宍喰漁業協同組合』、高知県室戸市三津、宮城県日南市目井津漁港、鹿児島県徳之島 備考徳島県海部郡海陽町では漁師さんは、タカ、タカノハ、町民はヒダリマキ。 参考『奄美群島徳之島から得られたタカノハダイCheilodactylus zonatus(畑晴陵・本村浩之)』 
    シカウオ[鹿魚]
    場所愛媛県宇和郡愛南町深浦、高知県宿毛市田ノ浦すくも湾漁協 備考斑文がシカの仔の文様に似ているため。 
    センチフキ センチブキ[雪隠拭き]
    参考『新釈魚名考』(榮川省造 青銅企画出版) 
  • 主食材として「タカノハダイ」を使用したレシピ一覧

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