ツクシトビウオ

Scientific Name / Cheilopogon doederleinii (Steindachner, 1887)

ツクシトビウオの形態写真

30cm前後になる。体は細長くなかほどの太さは一定で頭部と尾鰭附近で低くなる。胸鰭は長く前方から2本(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみ)までが不分枝で、全体に暗色。
ツクシトビウオの生物写真一覧 (クリックで上に拡大表示)
30cm前後になる。体は細長くなかほどの太さは一定で頭部と尾鰭附近で低くなる。胸鰭は長く前方から2本(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみ)までが不分枝で、全体に暗色。30cm前後になる。体は細長くなかほどの太さは一定で頭部と尾鰭附近で低くなる。胸鰭は長く前方から2本(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみ)までが不分枝で、全体に暗色。胸鰭は長く前方から2本(1本目は痕跡的で指の感触でわかるのみ)までが不分枝で、全体に暗色。
    • 珍魚度・珍しさ

      ★★
      少し努力すれば手に入る
    • 魚貝の物知り度

      ★★★
      知っていたら通人級
    • 食べ物としての重要度

      ★★★
      一般的(流通量は普通)
    • 味の評価度

      ★★★
      美味

    分類

    顎口上綱硬骨魚綱条鰭亜綱新鰭区新骨亜区正新骨下区棘鰭上目スメグマモルフ系トウゴロウイワシ亜系ダツ目トビウオ亜目トビウオ科ツクシトビウオ属

    外国名

    学名

    Cheilopogon doederleinii (Steindachner, 1887)

    漢字・学名由来

    漢字 筑紫飛魚 Tsukushitobiuo
    由来・語源 今井貞彦の命名。九州に多いため。
    〈このトビウオは都井岬、天草など九州沿岸にはとくに多いので、まだ日本では他のトビウオ類とはっきり区別されていなかった本種をツクシトビウオと名付けることにした。〉『かごしまの魚譜』(今井貞彦 筑摩書房 1987)
    『魚類大図鑑 南日本の沿岸魚』(益田一、荒賀忠一、吉野哲夫 東海大学出版会 1975/11/25)に写真がなく、Cypselurus heterunus doederleini をツクシトビウオとしている。
    Steindachner
    Franz Steindachner (フランツ・シュタインダハナー/1834-1919)、オーストリア ウイーン生まれ。魚類学・動物学者。
    今井貞彦
    いまい さだひこ(1915〜1984年)。東京帝国大学水産学科卒業、鹿児島大学水産学部で魚類学を教える。『日本近海産トビウオ類生活史の研究』など。

    地方名・市場名

    生息域

    海水魚。
    北海道石狩湾〜九州西岸の日本海・東シナ海、北海道尻臼〜仙台湾の太平洋沿岸、房総半島東岸〜屋久島の太平洋沿岸。
    朝鮮半島南岸、希にピーター大帝湾

    生態

    トビウオ類ではもっとも岸寄りを回遊する。
    産卵期は5月から8月くらいまで(8月初旬の太平洋岩手県産のものに抱卵個体が見られる。

    基本情報

    国内で食用とするトビウオは大型のハマトビウオと、中型のトビウオ、ツクシトビウオ、小型種のホソトビウオの4種類。日本海を北上するもの群れが国内では最大のもので、多くがホソトビウオ、そしてツクシトビウオの2種。季節感が感じられる魚で早春にはハマトビウオが、夏が近づいてくるとツクシトビウオ、ホソトビウオがくる。盛夏になるとトビウオが入荷してくる。日本海ほどではないが太平洋側でも同様である。
    本種は日本海側では晩春に長崎県などでとれはじめ、夏に漁の盛りを迎える。夏の風物詩でもある。
    小さいホソトビウオは鮮魚としてはあまり出回らず、練り製品や煮干し(焼き干し)、干ものなどになる。
    ツクシトビウオはホソトビウオよりも鮮魚として出回ることが多い。また卵巣だけ売られていることもある。生で食べても、総菜などにしてもおいしい。
    珍魚度 一般的な食用語だ。ただトビウオは同定が難しい上に季節ものなので勉強し、時季を考える必要がある。

    水産基本情報

    市場での評価 トビウオ類ではホソトビとともに鮮魚としてもっとも入荷量が多い。春に入荷するハマトビウオに対して夏トビの名がある。値段は安くて安定している。
    漁法 流し刺し網、定置網、巻き網、底曳き網
    主な産地 長崎県、島根県、山口県、千葉県、三重県など

    選び方

    さわってシッカリしているもの。腹が軟らかいものは古い。背は黒く、腹は銀色に輝いているもの。鰓が鮮紅色のもの。

    味わい

    旬は晩春〜夏。産卵回遊して北上してくるものを漁獲していて、漁の盛期と旬が重なる。
    鱗は薄く大きく取れやすい。骨は中骨が硬く、血合い骨はやや硬い。
    透明感のある赤みを帯びた身で血合いが大きい。熱を通すと締まる。

    栄養

    危険性など

    食べ方・料理法・作り方 (基本はオススメ順掲載です)

    ツクシトビウオの料理法・調理法・食べ方/生食(たたき、刺身、なめろう、焼き切り)、煮る(煮つけ、塩ゆで)、揚げる(唐揚げ)、焼く(塩焼き、干もの)、汁(みそ汁)

    ツクシトビウオの皮つきたたき 好みもあると思うが淡泊な味わいなので刺身はいまひとつの味だと思う。しかも味は皮にある。ここでは水洗いして胸鰭・臀鰭を切り取る。三枚に下ろし、血合い骨を抜き、薄切りにして香辛野菜(ねぎ、みょうが、青じそ)と合わせるのがいい。
    これをしょうが醤油で食べる。柑橘類との相性も非常にいい。夏らしいさっぱりした味だ。

    ツクシトビウオのたたき 三枚に下ろし皮を引いて薄切りにして、ミョウガ、青じそ、ネギと合わせて、たたき風にする。好みでにんにくなどを加えてもいい。この細かく叩いて食べるのが、生食としてはいちばんうまいと思う。これをしょうがしょうゆで食べても、塩と柑橘類で食べてもいい。
    ツクシトビウオのみそたたき(なめろう) 手に入れたらまず胸鰭を切り落とし、腹鰭を抜き取る。それから水洗いして三枚に下ろす。腹骨をすき、血合い骨などを抜く。これで皮を引いてもいいし、皮付きのまま細かく切ってもいい。みそ、香辛野菜(ねぎ、玉ねぎ、みょうが、青じそなど)を加えて叩いたもの。
    ツクシトビウオの焼き切り(焼霜造り) 手に入れたらまず胸鰭を切り落とし、腹鰭を抜き取る。それから水洗いして三枚に下ろす。腹骨をすき、血合い骨を抜く。皮目をあぶって冷ます。冷水に落としてもいいし、急速冷凍の場所があればそこで冷やしてもいい。これを刺身状に切る。焼いた香りと皮のうま味がプラスされて非常にウマシ。
    ツクシトビウオの刺身 水洗いして胸鰭の後ろから頭を落とす。腹鰭を抜き三枚に下ろして小骨を抜き、皮を向く。これを刺身状に切る。白身と青魚両方のおいしさが楽しめる。柑橘類、しょうがと好相性だ。
    ツクシトビウオの煮つけ 煮干、焼き干になるくらいだからうま味が豊かである。煮るといいだしが出る。水洗いする。鍋に入る大きさに切り、湯通しして冷水に落として残った鱗やぬめりを流し、水分をよく切る。酒・みりん・しょうゆ味で、今回は初夏に出て来た玉ねぎと一緒に煮上げた。魚だけで煮てもいいが、季節の野菜、ナスや玉ねぎなどと煮るとうまい出しを吸って豪華になる。

    ツクシトビウオのみそ汁 煮干し(ゆで干し)にするくらいだから煮るといいだしが出る。青魚の強い香ばしさを感じさせる味なのでみそととても相性がいい。白子、真子、肝なども放り込んでワイルドに作るとうまい。薬味は青みでもいいし、夏野菜のナスなども合う。
    ツクシトビウオの唐揚げツクシトビウオの唐揚げ それほど骨が硬くなく、鰭が大きいので揚げると香ばしくなる部分が大きい。背割りにして中骨を取り、両方ともに片栗粉をまぶしてじっくりと二度揚げする。皮目に独特の風味があり、身にうま味が感じられて非常にうまい。
    ツクシトビウオの塩焼き 水洗いして二枚に下ろして骨つきのほうに塩をする。トビウオの端的なうまさは皮にあると思うが、じっくり食べてみると血合いが実においしいのである。ほんのりとした酸味があって、その下の身はたんぱくで青魚のうま味を持つ。魚の塩焼きなのにビールにとても合う。
    ツクシトビウオの開き干しツクシトビウオの開き干し 水洗いして背開きにして、塩水につけ込むか、振り塩をして密閉して塩味をつける。これを半日ほど冷蔵庫で干す。適度に身が締まり、うま味と青魚特有の風味が強くなる。ご飯にも合う。

    好んで食べる地域・名物料理



    トビウオの冷や汁 長崎県雲仙市富津の「冷や汁」は、焼いておいしい魚ならなんでもいいという。タチウオ、トビウオ(ホソトビウオ、ツクシトビウオ)などを使うことが多いという。素焼きにする。すり鉢にゴマ、みそ(麦みそ)を入れてする。ほぐして骨を除いた素焼きを加えてする。愛媛県のようにすり鉢に均等にならしてあぶったりはしない。少しずつ水を加える。きゅうり、夏の香辛野菜である青じそ、みょうがなどを加える。これを麦飯にのせて食べる。さらさらと軽く、しかも味わい深い。麦飯の香り、後味のよさで箸が止まらなくなる。佐藤厚さん(長崎県雲仙市)

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    加工品・名産品

    練り製品 島根県「あご野焼き」
    乾物・干物 長崎県「あごだし」。
    あごだし 煮干しにするのはホソトビウオが主だが、ツクシトビウオも使われている。[カネタ 高橋商店 島根県松江市鹿島町]

    あご開き 長崎県五島列島で作られているもの。トビウオの干ものは皮目に独特の風味があり、実にうまいものだが、それをよく引き出す干し加減。塩加減もよく、名品といえそう。[松園水産 長崎間上五島町]
    ほし焼きあご(あご焼き干し) 写真は福岡県福岡市で正月の雑煮のだし用に売られていたもの。主に長崎県でホソトビウオとともに作られて、本種の方が高い。長崎県から山陰、東北日本海側まで同様のものがあるが、これほど丸のままの状体を残したものは長崎ならではだと思う。

    釣り情報

    相模湾などではコマセ釣りなどで、水面で食ってくるのは本種であることが多い。

    歴史・ことわざ・雑学など

    大阪府南河内山村 「八月六日ころまでに、嫁が実家に、そうめんを重箱いっぱいと、とびうおの塩干ものを重箱のふたを逆さにした上にのせて持って行く。これを「盆だて」という。実家では半分を受け取り、残りを返す」。[大阪府南河内山村 トビウオ種不明]
    大阪府南河内山村 お盆には塩干しとびうおの焼いたものと、じゃがいも、焼き麩、湯葉、かんぴょうの煮ものを食べる。[大阪府南河内山村 トビウオ種不明]
    焼く魚 〈比目魚、鰈、鮎並、鰺、鱈、鯡、鮫、生節等は皆煮つけで、焼くのは蒸し鰈、魴鮄、鰯、飛び魚くらいであたが、煮肴は私は嫌いであった〉『幼少時代』(谷崎潤一郎 岩波文庫 初版は文藝春秋社1957)
    東京都 「私ら市場関係者は、取引を簡明にするため、魚体の大小を区別している。成熟魚(大型 かくとび)を角飛、次を中飛(ちゅうとび)、小型は蠅飛(はいとび)」。中飛がツクシトビウオではないかと思われる。『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社)

    関連コラム(歴史)

    記事のサムネイル写真谷崎潤一郎にみる明治の魚食事情 塩焼き編
    谷崎潤一郎は明治19年(1886年)生まれで、成人して文学者となるまで、明治時代の東京を生きた。生まれは下町、日本橋蛎殻町(在の中央区日本橋人形町)で豊かさと貧・・・ 続きを開く

    参考文献・協力

    『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会)、『島根のさかな』(島根県水産試験場 山陰中央新報社)、『干もの塩もの』(石黒正吉 毎日新聞社)、『聞書き 大阪の食事』(農文協)、『南大阪の伝統食』(小林至編著 大阪公立大学協同出版会)、『但馬の美味しいお魚図鑑』(たじまの魚 新商品・新メニューの開発チーム 但馬水産事務所)

    地方名・市場名

    ダシアゴ
    場所九州 参考文献 
    アゴ
    場所長崎県、福岡県、山口県、島根県、鹿児島県種子島 備考ホソトビウオとともに。 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    トッピー
    場所鹿児島県種子島 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    ヘイジロー
    場所鹿児島県種子島 サイズ / 時期幼魚 参考『種子島の釣魚図鑑』(鏑木紘一 たましだ舎 2016年) 
    カクアゴ
    場所兵庫県但馬地方 
    オオメ[大目]
    場所島根県 備考島根県では同時にとれるホソトビウオをコメ(小目)、ツクシトビウオをオオメ(大目)。 
    カクトビ[角飛]
    場所関東の市場 
    ガアタキ トビウオ
    参考文献より。 
  • 主食材として「ツクシトビウオ」を使用したレシピ一覧

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