シログチの時季到来!

触っただけで食魔が騒ぐ5月のシログチ


連休明けの市場は不安定極まりない。止め(数日前に到着したもの)や微妙な荷(発泡の箱に入った魚介類などのこと)が多い。そんな不安定な市場で鮮度抜群、見事な高知県産シログチ(体長30.5cm・538g)を大発見した。
まさに奇跡である。
八王子綜合卸売センター、福泉のあんちゃんに聞くと入合(いくつかの魚を混ぜて1箱にしたもの)で来たらしい。
しかも、5月の大振りのシログチの素晴らしさを知っている人は少ない、ので安い。
この時季、上物のシマアジと並んでいたらボクは迷わずシログチに手を出す。味で勝負してシマアジを木っ端みじんに負かす、それほどおいしいからだ。
関東ではイシモチと呼び、不安定ながら長年標準和名であった。これをときに併記されていたシログチに、標準和名を固定したことはとてもいい判断である。イシモチでは系統的に意味を持たない。

血合いがきれいで、脂が身に混ざり込んでいて


最近、市場から帰り着いて、魚の処理と、事務的なことをこなした後の昼飯は市場で買ったばかりの魚を主菜にすることが多い。
夜酒をあまり飲まなくなったせいだろうか、刺身定食的な昼飯がやけにうまい。
当然、主菜は高知県産シログチである。
最近、高知県須崎の荷がとてもいい。この高知での荷の仕立て方の改革をした人はすごいと思う。
高知県産にハズレなしといった感があるので、大いに期待して下ろす。
さて、水洗いして三枚に下ろす。
卵巣はまだ小さく、最旬とは言えないものの、身に張りがあり、脂がある。
片身の前方部分を刺身に、後方部分を焼霜造りにする。

ちょっとやりすぎだけど、それもまたよし


刺身はともかく、焼霜造りはバットなどに皮目を上にして置き、バーナーであぶり、氷水に落とす。
水分をよくきって刺身状にきるだけだ。
刺身は、舌にねっとりと滑らかな身がやたらにいい感じで、うま味がとても豊かである。
刺身で十二分にうまいところを、焼霜に造るのは変化が欲しいためである。
シログチの関東での定番料理は塩焼きだ。定番化したのは身の味わいもあるが、焼いた時の皮の香りがいいためだと思っている。
この焼いた皮の香りを少し、刺身にお裾分けするかのようである。
時季の焼霜造りは屋上屋を架すかのようだが、これもよい。
連休明け、本来、野山が笑い始めているときなのに、大笑いしているのを見ながら、大飯を食らう。


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