竹輪は竹輪で蒲鉾は蒲鉾、徳島県の竹ちくわ

懐かしいだけじゃなく歴史的にも重要な「竹ちくわ」


ウナギの旅を続けているとき、ボクの出身県である徳島県小松島の「竹ちくわ」を送って頂いたのはタイムリーだった。この「竹ちくわ」と関西に多い焼き蒲鉾はウナギ料理の歴史を考える上で非常に重要なのだ。
徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町貞光)に生まれたので、生まれて初めての都会は徳島市だった。面白いもので、徳島県でももっと西の池田町(現三好市)の老人に聞くと最初の都会は高松だったという。
ことの真意はともかく、池田町で食べられていた竹輪など練り製品は「えびちくわ」だったり、普通の穴の開いた竹輪など香川県観音寺あたりのもの。
これが徳島本線の池田と徳島の中間地点のボクの町では、どちらかというと小松島市・徳島市・鳴門市で作った「竹ちくわ」、「かつ」、「長天」になる。
同じ県の練り製品を考えてもこれだけの違いがある。水産物など食べ物を考えるとき、ぜったいにやってはいけないのが県単位で区切ることだ。
家族と一緒に徳島市内にでて、丸新デパートとかつぼみやとかを連れ歩かれて、我慢に我慢を重ねる代わりに買ってもらったのがプラモデルや本だった。それと帰りに必ずねだるのが徳島駅売店の「竹ちくわ」だ。
黄緑色の包み紙を持つのはボクの役割だったと思う。この「竹ちくわ」と冷凍ミカン、機関車の煤がボクの徳島本線の最初の想い出だ。
横道にそれるが、子供の頃、機関車とディーゼルカーは知っていたけど高知に行って初めて電車に乗ったとき、都会だと感じたものだ。家族のいる東京に行くときの、大阪から東京までの電車では走り回るほど興奮した。電車に都会を感じるのは国内広といえども徳島県人と沖縄県人だけだったと思う。沖縄県にはすでに電車が走っているので、追い越された感が非常に強い。
小学校に上がる前後から、「竹ちくわ」はボクの好物だった。たぶんかなり高かったのではないか? だから徳島駅で買うお土産だった。あまりに好きなのでボクだけが2本、3本食べていたっけなー。
さて、なぜ竹輪は竹輪なのか? それは細い竹を切り、竹を適当な長さに切る。乾燥させない生の竹に魚肉(最初は主に淡水魚)を握りつけて、直火で焼く。古代には竹についた状態が完成形だったと思う。これが後に焼き上がったら竹から外すようになる。竹につけて焼き、切ると断面が輪なので、竹輪だ。
徳島の「竹ちくわ」は焼いて抜かないままだ。たぶんこの国広しといえども、こんな原始的な姿を残した竹輪はないだろう。
ちなみに蒲鉾の語源を同じように棒状のものに握りつけて焼く。この形が蒲の穂に似ているから、蒲鉾だとしているが、大間違いだと思っている。これは別項で述べたい。
徳島の竹輪はやや甘めである。足(弾力といっても間違いではない)はある方だと思うが、その足が強すぎないのがいい。
「竹ちくわ」を食べると、Homeward Bound ♪
徳島県の山崎さんには感謝の致しようがない。


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