石川県金沢港から来たブリうまし 01

一瞬で買い気が巻き起こる、この姿


八王子総合卸売協同組合、舵丸水産の店頭に見事なブリが、どでーんと置かれていた。どこの? かなと思ってクマゴロウに聞いてみると「金沢じゃねーか」という。金沢と言えば神奈川県の金沢八景もあるけれど、普通は石川県の金沢である。
パーチを探すと、確かに金沢ではああったが、「金沢港」となっている。石川県の漁港としては七尾、輪島で揚がる魚が多く、金沢港からの荷はあまり見かけない。ひょっとしたら輪島漁港、七尾漁港が使えないので金沢港に回ってきているのではないか、と考えた。
とすると、きっと金沢市中央卸売市場にも大量にブリが並んでいそうである。意外に知られていないと思うが、石川県金沢市中央卸売市場は日本海側の水産物のターミナルなのだ。国内でももっとも重要な市場のひとつなのである。
ボクは実に平凡な、無力な人間なので震災時に取り立てて何かやる、なんて出来ないが、例えば、東北のときには福島をはじめ、東北の水産物をなるべく買いたいと思い。今回も石川・富山両県のものを買いたいと思っている。そんなときの見事なブリなので、旅の前という悪条件ながら、少々悩んだ末に買ってみた。
あまりにも上物だったので、買わせていただいたといった方がいいかも知れぬ。
ちょっと、横道にそれる。
ブリは西日本の年取魚である。年取魚は大晦から正月に食べるご馳走のことだ。今では新暦で行われる正月だが、本来は旧暦である。
旧暦の正月は2024年は2月10日なので、今まさに旧暦の師走にあたる。ブリが年取魚になったわけは、この旧暦の師走に大量に揚がったからである。富山県だけではなく、日本海ではこの時期に取れたブリを、浜でせっせと塩をし、やがて山間部へと送る。
岐阜県、長野県、岡山県などの山間部でブリ市が開かれるのは旧暦の大晦日前、新暦の月過ぎなのである。
ボクの個人的な意見ではあるが、食べ物で考えると、正月は旧暦の方がいい。正月や節は旧暦でやるべきである。

内臓を包む部分の皮膜で見る脂と鮮度


帰宅して冷蔵庫に入れるために3等分しながら味見したら、今季最高のブリであった。
店頭で触っただけで、その脂ののり具合がわかる。この内臓を包み込む皮膜のようなものはいったいなんだろう? 腹腔膜ではないかと思うが、2分の1、4分の1買いするときの鮮度や脂ののりの目安になる。

3切れも食べると、胃袋が重くなるほど


4分の1なので、あれこれ料理する予定だが、まずは皮を引くだけで刺身になる。
お昼は頭部に近い部分を刺身にする。
これぞ石川ブリ刺身定食である。
やや薄めの3切れだけだ。脂がノリスギなので味は濃厚である。口溶け感から来る、甘味があり。後からブリらしいどっしりしたうま味がくる。
このとろっとした舌触りに、ご飯が合う。
ただし、ボクの年齢では3切れがやっと、といった感じだ。

尾の部分にも脂がくまなく行き渡っている

ブリの刺身

夜は尾の部分を刺身に切り、大量の柚子をふって食べる。
尾といえど脂ののり具合は通常では考えられぬくらいにすごい。
柚子で洗うことで、味が軽くなる。
今回は石川ブリに、大きな、うれしい衝撃を受けた。


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