焼きすぎてもおいしいホンビノス

東京湾奥の貝漁業を救った貝

ホンビノスガイ

ホンビノスガイは北アメリカ東岸原産の二枚貝で、2001年に流通の場で千葉県船橋産を初めて見た。当時の貝類図鑑にはなく、北海道などにいるビノスガイに似ていると思いながらも買っている。たぶんだが、本種が流通に乗ったのは2000年前後だと思う。
ホンビノスガイにたどりついたのは、翌年のことで、2003年には京浜運河まで採取に行って、運河に堆積した砂地にごろごろといるのにビックリしている。
千葉県立中央博物館の貝類学者、黒住耐二さんは1990年代に東京湾奥で稚貝を採取しており、すぐに成貝も手に入れたと言っているので、アメリカ東岸からの移入時期は1990年代半ばかも知れない。どのように移入してきたのかは不明だが、世界中を見渡すと、何種類かの二枚貝がコスモポリタンになっていて、その多くは船のバラスト水に混ざって生息域を広げたのだとされている。本種も同じだろう。
この新顔の二枚貝が、千葉県船橋市で水揚げされるようになり、日本各地に送られるようになると思っていたのは、船橋市の貝類業者ぐらいだろう。そのときすでに、「白はまぐり」という商品名が出来上がっていたはずなのである。
ちなみに船橋市周辺は江戸前の二枚貝の宝庫だった。トリガイ、バカガイ、ハマグリ、アサリなどだ。船橋市はこれら多産する二枚貝の加工のメッカでもあったのだ。それが今や市内でとれるのはホンビノスのみとなっている。
東京湾は自然の海岸線を破壊しすぎているのだが、そんな海でも生きていけるのがホンビノスだともいえそうである。

熱を通すと硬くなるけどうま味豊か

ホンビノスガイの焼き貝

2001年以来、本種を定期的に買っている。10月の声を聞き、ほぼ2ヶ月振りに、千葉県船橋産を買って来た。
まずはザルなどに入れてざくざくと洗う。
剥き身にして砂を噛んでいたら(最近あまり嚙んでいない)塩水で洗う。
これを片方の貝殻にもどして強火で一気に焼き上げる。
いつもは酒と醤油で味つけするのだが、今回は桃屋の「きざみにんにく」を乗せてみた。
かなりの焼きすぎとなったが、貝らしい風味と甘味が感じられて非常においしい。にんにくの香りとピリ辛も合う。


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