活けガンゾウはやたらに素晴らしい

活魚槽のガンゾウビラメに目が行ってしまう


9月14日の神奈川県、小田原魚市場の活魚槽にガンゾウビラメが泳いでいた。たぶん岩とか福浦(ともに真鶴町)の定置で揚がったものだろう。
ガンゾウビラメは比較的暖かい海域の砂地などにいる魚で、一般的な知名度はゼロといってもいいが、流通上は至って普通の食用魚だ。
地方名が非常に多い。これはヒラメよりも水揚げ後の鮮度落ちが早く、水揚げ地で消費される比率が高いためである。
小型底曳きなどでまとまってとれる魚だが、少ないながら定置網でも揚がる。底曳き網ものがこの魚の価値を決定しているので安いが、実は定置ものの活魚は上物なのである。これなど第二のヌマガレイ(まったく売れない魚だったのが活魚で売れるようになった)となる可能性だってある。
活魚なのにそんなに高くないのは、とれる量が少ないためだ。最近、未利用魚のことで盛んに入合(何種類かの魚で1つの荷にする)を作れなどというが、意外に難しいのは水揚げされた全魚種の価値をちゃんとわかっていないと入合が作れない点にある。入合、入合と言っている人間でこの基本のキがわかっていない人が多すぎる。
このぽつんと2、3枚程度のガンゾウビラメなど漁師さんや仲卸さんすら一定の評価を持つに至っていないのだ。当然、活け締めにして入合に入れるなんて発想は湧かない。
小田原の恵まれているところは、多様な水産物の産地であり、集積地であり、また巨大な商圏を持っていることである。だから売れない魚はほとんどない。この200g〜300gで大小ありの活魚にもちゃんと値がついていた。
これをいつもながらにさんの水産さんに競り落としてもらい、活け締めにしていただく。

見た目は腹の刺身が美しい


これを9月14日に帰宅後すぐに裏表を食べ比べ、翌日にも裏表食べ比べてみた。本種に関しては当日の方が断然美味しかった。ヒラメ・カレイ類は本来うま味とか脂の量は少なく、食感がいちばん重要なのである。
冬のガンゾウビラメが底曳き網ものでも、翌日に食べてもうまいのは、脂がのり、うま味を多く体にため込んでいるためだ。9月の個体はむしろ食感を楽しみながら、うま味や微かな脂の存在を楽しむべきだろう。

背の刺身は見た目は悪いが味は上々


この豊かな食感の刺身がやたらにうまいのは、口に入れたときの感触も味だからだろう。
米の糖質と一緒になると相乗効果が生まれる。
昼間などの飯の友にしたが、飯をさらう味でもあった。


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