コラム

食べたくなるのは暑さ故、ホッキガイのみそ汁かけ飯


八王子総合卸売協同組合、マル幸水産に北海道鵜川産のウバガイが来ていた。東京では、最近、ホッキガイと呼ぶ人ばかりになったので、ホッキガイとした方がいいのかも。
大きくて黒いほど値が高く、小振りで薄茶色のものは安い。このところ市場に来るたびに貝を買っている。これなどたぶん、貝のタウリンを体が欲しているからだろう。小振りで薄茶色は、値段的にも癒やし系だし、ボクの体にとっても癒やし系だ。
ウバガイ(ホッキガイ)は太平洋側では鹿島灘、日本海側では北海道西沿岸で水揚げがある。旬は難しい。いつもある程度のレベルは超えているし、外れと思えるほどに外れには出合っていない。要するに優等生的な味の二枚貝だ。
ちなみにウバガイ(姥貝)というのは江戸時代天保期、旗本である武蔵石寿が編んだ目八譜にある。たぶん常磐から福島にかけてのいずれかの藩から手に入れて(寄贈かも)、その藩での名をそのまま使ったのだと思う。武蔵石寿が参加していた江戸のカルチャラルな集団、赭鞭会は貝や生物の名を風雅な何かに見立てて名をつけることが多い。にも関わらず、このあまりにも直截的な名をそのままに使ったのは、どうしてだろう。それほど貝殻の見てくれが悪かったのだろうか。

和の日常食のもっとも基本、それが汁かけ飯


さて、今年の夏はきつい。息絶え絶えといってもいいくらいだ。毎年夏になると日常的なみそを赤だしに替えてしまう。体に赤だしの酸味と渋味が夏にきく、気がするのだ。いつもは大阪の赤だしなのだが、今年は、近所のスーパーで見つけた愛知県名古屋市、『イチビキ』のもので我慢する。我慢するなんて失礼な事を書いたが、これとても結構な味であった。
朝ご飯は市場から帰ってからなので、2個、持ち帰っていきなり剥き身にする。
外套・貝柱・消化器などを外し、足は冷蔵庫に眠ってもらう。
主役はまな板に残った諸々のものである。
諸々からていねいに汚れた部分を取り去り、鍋に入れて水を張る。
みそ汁1杯分を作るのに、ホッキガイ2個の足以外がちょうどいい。
火をつけたらあくを引いて赤だしを溶くだけ。
これを戻したご飯にかけて、後はさわさわと。
赤だしの酸っぱ味が感じられ、渋味が感じられ、コハク酸などなどなどのうま味がとても強く感じられるので、これだけで立派なおかずでもあり、汁でもあって、ボクの疲れをやわらげてくれるものでもある。
別にウバガイ(ホッキガイ)とは限らない。
暑さのずんと重い疲れ取るなら、貝の汁に優るものなし♪ とくら。


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